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新聞社では、11月が近づくくらいから元日紙面のことを考え始めます。私も習い性で、アニメや特撮で何かの節目の年ではないかな?と調べます。元日朝刊の別刷りで、2004年にゴジラ誕生50周年で1ページ、06年にはウルトラマン40周年&仮面ライダー35周年で1ページ、特集企画を任されました。来年は2013年。考えるまでもなく、国産初の30分ものテレビアニメシリーズ「鉄腕アトム」放映から50年です。
10月末、東京のテレビ欄担当のS編集長から電話がかかってきました。
「小原くんに、ちょっとお願いが」
「別刷りですね!」
「うん、そうなんだ」
「アトムですね!」
「話が早いね」
というわけで1ページ引き受けることに。「アトム」は語り尽くされてる気がするので「テレビアニメ半世紀」の方向を提案。「教科書的に歴史をさらってもつまらないので、誰かに角度をつけて面白く50年を語ってもらったらいいと思います」と言って電話を切って、すぐ最高の適任者に思い当たりました。辻真先さんです。
「鉄腕アトム」から「ジャングル大帝」「魔法使いサリー」「サザエさん」「デビルマン」「魔女っ子メグちゃん」「一休さん」「超電磁ロボ コン・バトラーV」「Dr.スランプ アラレちゃん」などを手がけ、そして現在の「名探偵コナン」まで50年アニメを書き続けている脚本家であり、今も新作チェックを欠かさず50年アニメを見続けている80歳の大先達。辻さんにインタビューをお願いしたところ御快諾を得て、S編集長にも報告したところ「いいねえ。あと小原くん、何か年表みたいなものつけられる?」。
「じゃあ50年を代表する50本を選んで、年代順に並べて短い解説でもつけましょう」
50年だから50本、というのはとっさに口をついて出ました。100本では紙面で作品名を追うのが大変そう、かといって10本では少なすぎ。各年代を代表する作品を選びたいので、10年ずつ区切ってその中から10本ずつ選ぶという縛りも設けることに。もちろん選ぶのはワタシです。調べてみると、02年の新年別刷りで後輩記者が100本を選ぶ企画をやっていました。人と同じことをやっちゃあツマラナイ、50本に絞る方が大変だけど面白いはず、とまずはザクザクと粗選りリストを作ってみたら104本になりました。それがコチラ。
■1963〜1972年
【1963】鉄腕アトム
【1965】ジャングル大帝
【1966】魔法使いサリー
【1967】マッハGoGoGo
【1968】ゲゲゲの鬼太郎、巨人の星
【1969】ひみつのアッコちゃん、タイガーマスク、サザエさん
【1970】あしたのジョー
【1971】ルパン三世
【1972】デビルマン、科学忍者隊ガッチャマン、マジンガーZ
■1973〜1982年
【1973】エースをねらえ!
【1974】アルプスの少女ハイジ、魔女っ子メグちゃん、宇宙戦艦ヤマト
【1975】まんが日本昔ばなし、ガンバの冒険、タイムボカン、一休さん
【1976】母をたずねて三千里、超電磁ロボ コン・バトラーV、キャンディ・キャンディ
【1977】ヤッターマン
【1978】未来少年コナン、銀河鉄道999、宝島
【1979】赤毛のアン、ドラえもん、機動戦士ガンダム、ベルサイユのばら
【1980】伝説巨神イデオン
【1981】Dr.スランプ アラレちゃん、じゃりン子チエ、うる星やつら
【1982】超時空要塞マクロス
■1983〜1992年
【1983】未来警察ウラシマン、装甲騎兵ボトムズ、魔法の天使クリィミーマミ、キャプテン翼
【1984】北斗の拳
【1985】タッチ
【1986】ドラゴンボール、聖闘士星矢
【1987】シティーハンター
【1988】キテレツ大百科、それいけ!アンパンマン
【1989】機動警察パトレイバー
【1990】ちびまる子ちゃん、ふしぎの海のナディア
【1991】新世紀GPXサイバーフォーミュラ
【1992】美少女戦士セーラームーン、クレヨンしんちゃん、幽☆幽☆白書
■1993〜2002年
【1993】忍たま乱太郎、SLAM DUNK
【1995】スレイヤーズ、新世紀エヴァンゲリオン
【1996】名探偵コナン
【1997】勇者王ガオガイガー、ポケットモンスター、少女革命ウテナ
【1998】カウボーイビバップ、カードキャプターさくら、おじゃる丸
【1999】おジャ魔女どれみ、ターンAガンダム、ONE PIECE
【2000】遊☆戯☆王デュエルモンスターズ、とっとこハム太郎
【2001】ギャラクシーエンジェル、テニスの王子様
【2002】OVERMANキングゲイナー、攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX、NARUTO、機動戦士ガンダムSEED
■2003〜2012年
【2003】鋼の錬金術師、プラネテス
【2004】ふたりはプリキュア、BLEACH
【2005】AIR、ハチミツとクローバー、交響詩篇エウレカセブン、灼眼のシャナ
【2006】涼宮ハルヒの憂鬱、銀魂、ゼロの使い魔、コードギアス反逆のルルーシュ
【2007】天元突破グレンラガン、電脳コイル、機動戦士ガンダム00
【2008】true tears、マクロスF、ストライクウィッチーズ、イナズマイレブン、とある魔術の禁書目録
【2009】けいおん!
【2010】四畳半神話大系
【2011】魔法少女まどか☆マギカ、ダンボール戦機、TIGER & BUNNY、あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
いずれ劣らぬ名作傑作人気作です。ちなみに原則として、シリーズ化されたものは最初の作品を「代表」としてあります(例外あり)。不偏不党のジャーナリズム精神にのっとり公平を期したつもりですが、あくまで「つもり」で、私の趣味趣向も反映されているはず。この時点で「あのアニメが載ってない!」と怒る方もいるでしょうが、ここからが肝心。さあ、このリストから50本、あなたなら何を選びます? というより、何を落とします?
60年代や70年代は「こんな名作にバツをつけるなんて何て恐れ多い」とおののいてしまいます。作品数が増える2000年代以降となると、いったい何を残して何を選べばよいのやら迷路に入り込んだように途方に暮れます。80年代作品には個人的に愛着が薄いなぁ、とも感じました。新たな時代やジャンルやスタイルを切り開いたもの、広範な人気を得たもの、今もシリーズが作られているもの……ウンウンとうなりながら「テレビアニメ50年の50本」を作りました。
粗選り104本と厳選50本を辻さんに見せたところ「ははは、大変だったでしょ。うーむ、セカイ系が少ないかな? 萌(も)えはありますね」「えー、その辺は私の好みかもしれません…」。
私が何を選んだかは、元日の朝刊の、表紙に綾瀬はるかさんが載っている別刷りでお確かめ下さい(←営業)。ある意味、蛮勇をふるった結果の暴挙ですので、文句のつけ甲斐(がい)もたっぷりあります。お正月のお楽しみに、オレ的ワタシ的「50年の50本」を選んで、くらべっこしてみてはいかが?
とはいえこのリストはあくまで脇役。主役の辻さんのお話は、めっぽう面白いです。2時間超のインタビューは至福の時でした。余りに面白いので、紙面に載せきれなかった部分を加えたロングバージョンを朝日新聞デジタルに元日にアップする予定です(←再び営業)。紙面の6〜7倍の8500字くらいありますので、たっぷりお楽しみいただけると思います。
さて、ここで終わると「宣伝だけかよ!」と怒られそうなので、辻さんのお話を一部ご紹介しましょう。
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「萌え」は僕も好きです。「萌え」という言葉がまだ世にない頃から好きでした。だから「名探偵コナン」(1996年)を書く時も、一番好きなキャラクターは灰原哀。(中略)「けいおん!」(2009年)はね、第1話を見て分かりました。これは「女子高生軽音楽部サザエさん」である、と。もっぱら部室でのんびりお茶とおしゃべりを楽しむ女の子たちを、毎週毎週見てれば情も移ろうというものですが、僕はそれほどでもなかったな。
ただ劇場版(2011年公開)には感服した。映画でもいつもと同じ、のんびりしてて、何も起こらないまま見せた。普通なら、メンバーの対立とか、すごいステージで演奏することになったとか、何か持ち込まないと2時間弱の映画はもたない、と思う。でも、そうしないで出来ちゃった。小津安二郎作品の脚本で有名な野田高梧が書いたシナリオ術とか読んだって、ああいうのは書けない。
テレビの方の「けいおん!」は「サザエさん」(1969年)だと言いましたが、僕が「サザエさん」を書く時、NHK時代にやったホームドラマ「バス通り裏」(58年)の経験が生きた。帯ドラマなので放送は毎日ある。お話はどうしよう? 例えば1週間で起承転結をやろうとすると、途中がだれてしまう。
そこで脚本の筒井敬介さんが言ったんです、「オレ、ニコニコ大会にしたよ」。つまり、日常のごく平凡なことを描いて、毎回、特にスジはない。ドラマもない。でも何となくクスクスおかしい。それで客がついた。テレビにはテレビのやり方があるんだ、と気づいた。朝日だったかどこだったか、ある新聞に「いつもメシばっかり食ってるドラマだ」と怒られたけどね。
「サザエさん」を始める時、原作の4コママンガのうち使えそうなものを数えたんです。戦後すぐの七輪バタバタとか、時代がずれてるものは使えませんからね。全部で2千数百本だったかな? 毎週3話のアニメを、すべて4コマのネタだけでつなげて作ると1回の放送で新聞連載3カ月分が消えると分かって、みんな青くなった。
じゃあO・ヘンリーみたいなドラマにしてはどうだろう、とやりかけて、ダメだこりゃ、とても続かない。それでね、なんてことない日常を描く、現代の「けいおん!」になったわけ。それでも最初にやる人間は大変ですよ。前例も手本もないんだから。小津も野田高梧も教えちゃくれない。初めに4コマを入れてそのネタから膨らませていくとか、ダレたところに真ん中にポンと4コマを置くとか。いろいろ手はある。発明したんですね。
そういえばあの時代は、アニメというのはお話も絵もぜんぶ原作者が書いてると思われていて、「長谷川町子さん大変ね」と視聴者の方から声をかけられたことがありますよ。
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いかがでしたでしょうか?
本欄「アニマゲ丼」にとって紙面化されたり書籍化されたりと激動の1年でしたが、今年はこれにてオシマイです。それでは皆様、よいお年を。
1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2012年4月から名古屋報道センター文化グループ担当部長。※ツイッターでもつぶやいています。単行本「1面トップはロボットアニメ 小原篤のアニマゲ丼」(日本評論社)発売中。