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【発明の名称】 |
炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造方法及びその製造装置 |
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【氏名】周 偉能 【氏名】山中 栄輝 【氏名】池田 薫 【氏名】二階堂 光信 |
【課題】マトリックス材料の含浸工程や薄い成形体の積層工程が不要な簡単な方法により、所定の厚みに一体的に形成できて層間剥離が無く、優れた品質を有する炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体を安価に提供する。
【解決手段】炭素繊維と粉状のマトリックス材料とを気流と共にベンチュリ管1から解繊混合室10内に吹き出し、炭素繊維を解繊してマトリックス材料と混合させ、この解繊混合物を含む気流を集綿室20に導いて、網状の集綿板21上に解繊混合物を堆積させた後、得られた解繊混合物の集合体Aをホットプレスすることにより繊維成形体を得る。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭素繊維と粉状のマトリックス材料とを気流と共にベンチュリ管から室内に吹き出して解繊混合し、この解繊混合物を含む気流から解繊混合物の集合体を網状の集綿板上に堆積させた後、得られた解繊混合物の集合体をホットプレスして緻密化することを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造方法。 【請求項2】 集綿板上の解繊混合物の集合体の厚みがほぼ一定になるように、集綿板に対する解繊混合物を含む気流の供給位置を順次移動させるか、又は解繊混合物を含む気流に撹拌気体を吹き付けて撹拌することを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造方法。 【請求項3】 集綿板近傍がほぼ一定圧力となるように、解繊混合物を含む気流を吸引しながら集綿板上に解繊混合物を堆積させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造方法。 【請求項4】 ベンチュリ管と、ベンチュリ管の一端側に設けた炭素繊維及び粉状のマトリックス材料を含む原料の投入口と、ベンチュリ管の一端側に設けたベンチュリ管への気体供給ノズルと、ベンチュリ管の他端に設けた解繊混合室と、解繊混合物の輸送管により解繊混合室の他端に連通された集綿室と、集綿室内の他端側に軸方向に直角に設けた網状の集綿板とを備えることを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造装置。 【請求項5】 解繊混合物の輸送管の集綿室への入口が集綿板に対して平行方向に移動可能に設けてあることを特徴とする、請求項4に記載の炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造装置。 【請求項6】 集綿室の一端側に、複数の撹拌気体の供給口を備えることを特徴とする、請求項4に記載の炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造装置。 【請求項7】 集綿室の他端が吸引口をなし、集綿室内の集綿板よりも他端側に吸引力調整板を配置することを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)の製造に用いられる繊維成形体、即ち炭化及び黒鉛化前のC/Cコンポジットの前駆体である繊維成形体の製造方法及びその製造装置に関する。 【0002】 【従来の技術】C/Cコンポジットは、機械特性、耐熱性、摩擦摺動特性などに優れているため、原子炉用炉材や高温炉棚板などの耐熱性の要求される部材の他、航空機などのブレーキ摺動部のディスクやパッドへの実用化が進められている。 【0003】従来、C/Cコンポジットは、主に以下のような湿式含浸法により製造されている。即ち、湿式含浸法では、ピッチや熱硬化性樹脂などのマトリックス材料を溶剤に溶解させ、これを炭素繊維の織物や不織布などからなる成形体に含浸させた後、得られた繊維成形体を800〜1200℃に加熱してマトリックス材料を炭化させ、更に2000〜2200℃で黒鉛化してC/Cコンポジットを製造している。 【0004】しかし、上記の湿式含浸法では薄い繊維成形体しか製造できないので、C/Cコンポジットに要求される所定の厚みを得るためには、多数枚の繊維成形体を積層してから炭化する必要があった。即ち、上記方法で得られる繊維成形体の厚みは通常0.3〜0.8mm程度に過ぎないため、例えば10mmの厚みのC/Cコンポジットを得るためには、この薄い繊維成形体を数十枚以上積層しなければならなかった。 【0005】このため、製造工程が極めて繁雑になり、コストの上昇を招くうえ、繊維成形体中のマトリックス材料を炭化する際に層間剥離を生じやすいという欠点があった。この層間剥離を抑えるために、更に有機繊維を添加混合するなどの工夫がなされているが、十分な効果が得られないばかりか、製造工程が更に複雑になり、且つ更なるコストの上昇をもたらす結果となっていた。 【0006】また、湿式含浸法においては、熱硬化性樹脂などのマトリックス材料を溶剤に溶かして用いるため、溶剤に溶解しやすい炭化収率の低い樹脂しか使用できなかった。そのため、含浸後の繊維成形体の炭化及び黒鉛化の際に、樹脂からのガス発生量が多くなり、繊維成形体あるいはC/Cコンポジットが破損又は破壊されやすいという欠点があった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】このように、従来の湿式含浸法による炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造方法においては、所定の厚みを得るために多数枚の成形体を積層する必要があるため、工程が繁雑で長時間を要し、製品がコスト高となるうえ、得られた繊維成形体を後に炭化及び黒鉛化する際に層間が剥離したり、発生するガスによって破損又は破壊が生じる等の欠点があった。 【0008】本発明は、このような従来の事情に鑑み、簡単な乾式法により、後から積層する必要のない厚い繊維成形体を容易に得ることができ、従って積層に起因する層間剥離を無くし、且つ炭化後にピッチ含浸しやすく、高密度のC/Cコンポジットが容易に得られる、全体に均一で優れた品質を有する炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体を製造する方法、及びそのための製造装置を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明が提供する炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造方法は、炭素繊維と粉状のマトリックス材料とを気流と共にベンチュリ管から室内に吹き出して解繊混合し、この解繊混合物を含む気流から解繊混合物を網状の集綿板上に堆積させた後、得られた解繊混合物の集合体をホットプレスして緻密化することを特徴とするものである。 【0010】この炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造方法においては、集綿板上の解繊混合物の集合体の厚みがほぼ一定になるように、集綿板に対する解繊混合物を含む気流の供給位置を順次移動させるか、又は解繊混合物を含む気流に撹拌気体を吹き付けて撹拌することが好ましい。また、集綿板近傍がほぼ一定圧力となるように、解繊混合物を含む気流を吸引しながら、集綿板上に解繊混合物を堆積させることが好ましい。 【0011】本発明が提供する炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造装置は、ベンチュリ管と、ベンチュリ管の一端側に設けた炭素繊維及び粉状のマトリックス材料を含む原料の投入口と、ベンチュリ管の一端側に設けたベンチュリ管への気体供給ノズルと、ベンチュリ管の他端に設けた解繊混合室と、解繊混合物の輸送管により解繊混合室の他端に連通された集綿室と、集綿室内の他端側に軸方向に直角に設けた網状の集綿板とを備えることを特徴とする。 【0012】この炭素繊維強化炭素複合材料用の繊維成形体の製造装置では、解繊混合物の輸送管の集綿室への入口が集綿板に対して平行方向に移動可能に設けるか、又は集綿室の一端側に複数の撹拌気体の供給口を備えることが好ましい。また、集綿室の他端が吸引口をなし、集綿室内の集綿板よりも他端側に吸引力調整板を配置することにより、集綿板近傍をほぼ一定圧力とすることができる。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明の炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)用の繊維成形体の製造方法においては、炭素繊維と粉状のマトリックス材料とを、気流と共にベンチュリ管から室内に高速で吹き出すことにより、炭素繊維を解繊すると同時にマトリックス材料と混合させる。その結果、炭素繊維は通常の集束された状態からモノフィラメントに近い状態まで解繊され、その中に粉状のマトリックス材料が均一に分散される。尚、ここでベンチュリ管とは、管路の途中に流路の断面積が小さい部分を設けた管を意味する。 【0014】この炭素繊維とマトリックス材料とからなる解繊混合物を含む気流は、そのまま網状の集綿板に導かれ、集綿板の上に解繊混合物を十分な厚さに堆積させる。集綿板上に堆積した解繊混合物の集合体は、その後ホットプレスにより緻密化して、繊維成形体とすることができる。従って、得られる繊維成形体は複数枚を積層したものではなく、全体が一体的に形成された1枚の板状であるから、後の炭化及び黒鉛化工程によっても層間剥離を起こすことがない。 【0015】本発明で用いる炭素繊維には特に制限はなく、例えば一般に市販されている汎用の集束(サイジング)した炭素繊維を使用でき、PAN系又はピッチ系のいずれであっても良い。解繊度合いのコントロールを容易にするため、集束のためのザイズ剤の付着量が2.5%以下のものが好ましい。また、炭素繊維の長さは、10mm未満では補強効果が小さく、20cmを越えると繊維相互の絡みが生じ易くなるため、10mm〜20cmの範囲が望ましい。 【0016】また、マトリックス材料としては、炭素マトリックスの前駆体として従来から使用されているピッチ又は熱硬化性樹脂を使用できる。熱硬化性樹脂としては、例えば一般に市販されているフェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましい。マトリックス材料は、気流により炭素繊維と混合するため粉状であることが必要であり、具体的には28〜325タイラーメッシュ(0.589〜0.043mm)程度の粒径のものが望ましい。粒径がこの範囲より大きいとマトリックス材料の偏析が起こりやすく、この範囲より小さいと集綿板のメッシュを通過しやすくなるからである。また、炭化する際のガス発生量を少なくするため、炭化収率が高いものが望ましい。 【0017】次に、本発明を図面に基づいて更に詳しく説明する。図1は本発明のC/Cコンポジット用繊維成形体の製造装置の一具体例である。この装置は、解繊混合室10と集綿室20とを備え、解繊混合室10の一端はベンチュリ管1に接続されている。ベンチュリ管1の一端側には、炭素繊維及び粉状のマトリックス材料を含む原料の投入口2と、ベンチュリ管1への気体供給ノズル3とが設けてある。尚、ベンチュリ管1に供給する解繊用の気体として、通常は空気を用いる。 【0018】集綿室20は、その一端が解繊混合室10の他端と解繊混合物の輸送管11により連通されている。解繊混合室10から気流により輸送管11を通って搬送されてきた解繊混合物は、集綿室20の内部に軸方向に対して直角に配置された網状の集綿板21上に堆積して、解繊混合物の集合体Aとなる。また、解繊混合物を搬送してきた空気などの気体を容易に排出するため、集綿室20の一端に設けた気体出口22から吸引することが好ましい。その場合、集綿板21の近傍がほぼ一定圧力となるように、集綿板21の下流側(一端側)に吸引力調整板23を配置する。 【0019】本発明方法では、炭素繊維と粉状のマトリックス材料とからなる原料を、上記した装置の原料投入口2に供給し、解繊混合室10で炭素繊維を解繊してマトリックス材料と混合した後、集綿室20の集綿板21上に堆積させて解繊混合物の集合体Aを得ることができる。原料となる炭素繊維とマトリックス材料とは必要な比率(通常は重量比で1:1)で供給し、所望に応じてC/Cコンポジットの性能改善に寄与する添加物を加えることができる。かかる添加物としては、例えばブレーキ材料とする場合には、耐摩耗性の向上に寄与するセラミックスや金属の粒子又は繊維などがある。 【0020】原料投入口2に供給された原料は、気体供給ノズル3から供給される高圧の気体によってベンチュリ管1に送り込まれる。ベンチュリ管1を出た原料を含む気流は、高速で大容量の解繊混合室10に入り、急激に膨張しながら解繊混合室10の壁に衝突する。この膨張と衝突により炭素繊維が解繊され、マトリックス材料と混合される。炭素繊維を十分に解繊してマトリックス材料と均一に混合するためには、ベンチュリ管1を通過する気流の速度を十分速く、例えば音速に近い速度にする必要がある。 【0021】その場合、原料の処理能力及び気体の後処理を考えると、具体的にはベンチュリ管1の最も細い部分の直径を10〜50mmとし、そのときの気体供給ノズル(内径=5mm)での圧力を1〜5kg/cm2とすることにより、炭素繊維の十分な解繊とマトリックス材料との均一な混合を達成することが可能である。また、炭素繊維の解繊度合は、供給する気体の圧力と、炭素繊維のサイズ剤付着量とによって、コントロールすることができる。 【0022】解繊混合室10で得られた解繊混合物(解繊された炭素繊維と粉状のマトリックス材料からなる)は、気流に搬送されて輸送管11を通り、集綿室20に入って集綿板21上に堆積する。このとき、解繊混合物を搬送する気体の排出と、解繊混合物の集綿板21への堆積定着を促進させるために、集綿室20内をやや負圧になるように吸引することが好ましい。また、集綿板21のメッシュサイズは、粉状のマトリックス材料が漏失しないように、基本的には使用するマトリックス材料の平均粒径と同じか又はそれ以下とする。 【0023】集綿板21上に堆積する解繊混合物の厚みを均一にするため、図2に示すように、解繊混合物の輸送管11が集綿室20に開口する入口の位置を集綿板21に対して平行方向に移動できるようにし、時間経過と共に入口の位置を順次移動させることが好ましい。また、図3に示すように、集綿室20の一端側に撹拌気体の供給口24を複数箇所設け、異なる2以上の方向から空気などの撹拌気体を解繊混合物を含む気流に吹きつけて乱流を発生させることによっても、集綿板21上に堆積する解繊混合物の厚みを均一化することができる。この撹拌気体の供給圧力は、解繊混合物を含む気流の流速や集綿室20の直径などにもよるが、通常は0.2〜2.0kg/cm2程度とすることが好ましい。 【0024】更に、集綿板21上に堆積する解繊混合物の集合体の厚みを均一にしやすくするため、集綿室20の直径に対する高さの比を1以上とすることが望ましい。また、集綿室20の入口における輸送管11の直径は、集綿室20の半径に対して1/1〜1/5の範囲が好ましい。集綿室20の半径に対する輸送管11の直径の比が1/1を越えると、輸送管11内の気流の速度が遅くなるため解繊混合物が輸送管11内に滞留したり、輸送管11の入口の位置を移動しても均一な集合体を得ることが難しくなる。また、この比が1/5未満では、集綿室20に入る気流の速度が速すぎるため、炭素繊維とマトリックス材料の集合体が再飛散したり、撹拌気体を吹き付けても均一な乱流が作れず、やはり均一な集合体を得ることが難しくなる。 【0025】集綿室20内を吸引する場合、集綿板21の各部分について均一な吸引力を得るため、前記したごとく集綿板21の下流側に吸引力調整板23を設置することが好ましい。吸引力調整板23は、図1に示すように集綿板21よりも目開きの小さい網状のものでも良いが、図2に示すように、集綿室20の半径にほぼ等しい程度の直径を有する円板状調整板23aを、網に載せて集綿室20の中心軸上に配置することが好ましい。また、図3に示すように、集綿室20の半径にほぼ等しい程度の直径を有する円錐状調整板23bを用いることもできる。 【0026】集綿板21上に堆積した炭素繊維とマトリックス材料とからなる解繊混合物の集合体Aは、所定の厚みに達した後、集綿室20から取り出し、ホットプレスにより必要な密度まで圧縮することによって、緻密化したC/Cコンポジットの繊維成形体が得られる。このようにして、C/Cコンポジットとして必要な厚み、例えば10mm程度以上の厚みを有し、10cm2□の重量のバラツキが10%以下の繊維成形体を容易に得ることができる。 【0027】この繊維成形体は、従来の湿式含浸法のように薄い成形体を積層したものではなく、全体が一体的に形成されているので、後の炭化工程や黒鉛化工程において層間剥離を起こすことがない。しかも、ベンチュリ管を用いた高速気流で炭素繊維を解繊するため、炭素繊維の折れや損傷が少なく、且つ炭素繊維とマトリックス材料とを均一に混合して堆積させることができるので、高強度であって、成分分布及び品質が均一な繊維成形体が得られる。また、薄い成形体の積層工程やマトリックス材料の含浸工程が不要であるため、製造工程が極めて簡単であり、コストを大幅に低減させることができる。 【0028】 【実施例】 実施例1市販の収束された長さ25mm、直径7μmの炭素繊維と、マトリックス材料として市販のフェノール樹脂(比重1.25、粒度100タイラーメッシュ)とを、重量比で1:1となるように予め配合して、繊維成形体の原料とした。 【0029】一方、C/Cコンポジット用の繊維成形体の製造装置として、図1の装置を使用した。こ装置において、気体供給ノズル3の内径は5mm、ベンチュリ管1の最小直径は30mmであった。また、解繊混合室10は、円筒状部分の直径が470mm及び長さが500mm、ベンチュリ管1の出口から円筒状部分までの長さが500mmであった。集綿室20は円筒状であり、内径が600mm及び長さが2000mmであった。 【0030】この集綿室20と解繊混合室10の間は直径150mmの輸送管11で連通され、輸送管11の集綿室20への入口の位置を同一円周上で210箇所に分け、図2に示すように集綿板21に対して平行方向に順次移動できるようにした。また、集綿板21のメッシュサイズは100タイラーメッシュで、有効範囲は直径600mmであった。更に、集綿板21の下流の軸中心には、図2に示すように直径が300mmの円板状調整板23aを配置した。 【0031】上記の装置を用いて、その原料投入口2に上記原料6.8kgを連続的に供給すると共に、気体供給ノズル3の空気の供給圧力を2.4kg/cm2に設定し、集綿室20内を吸引して内部の圧力を−10mmH2Oに保持した。その結果、集綿室20の集綿板21上に、炭素繊維とフェノール樹脂からなる解繊混合物の集合体Aが、約300mmの厚みで堆積した。 【0032】この解繊混合物の集合体Aを集綿室20から取り出し、200℃において300トンの圧力で1時間ホットプレスすることにより、密度が約1.0g/cm3、直径が600mm、厚みが12mmであって、10cm2□の重量を測定したときの重量のバラツキが5〜9%の繊維成形体が得られた。この繊維成形体は、その後の炭化及び黒鉛化によって、層間剥離を全く起こすことなく、良好なC/Cコンポジットを得ることができた。 【0033】実施例2上記実施例1で用いた図2の集綿室の代わりに、図3の集綿室20を用いた。即ち、この装置では、輸送管11が集綿室20の一端中央部に固定され、集綿室20の一端側の3ケ所に内径5mmのノズルを備えた撹拌気体の供給口24が等間隔に設置してある。また、集綿板21の下流の軸中心には、直径が300mmの円錐状調整板23bを配置してある。尚、解繊混合室10、輸送管11、集綿室20等の寸法は、実施例1と同一である。 【0034】この装置を用いて、各撹拌気体の供給口24のノズルから、撹拌気体として空気を0.8kg/cm2の圧力で吹き付け以外は、実施例1と同様にして繊維成形体を製造した。得られた解繊混合物の集合体を実施例1と同様にホットプレスすることにより、実施例1と同様に密度が約1.0g/cm3、直径が600mm、厚みが12mmであって、10cm2□の重量のバラツキが5〜9%の繊維成形体が得られた。この繊維成形体は、その後の炭化及び黒鉛化によって、層間剥離を全く起こすことなく、良好なC/Cコンポジットとすることができた。 【0035】 【発明の効果】本発明によれば、従来の湿式含浸法のように薄い成形体を多数積層する面倒な工程を含まず、高速気流を利用した簡単な乾式法により繊維成形体を一体的に成形できるので、後の炭化工程や黒鉛化工程で層間剥離が全く起こらない、C/Cコンポジット用の健全な繊維成形体を提供することができる。 【0036】また、本発明の繊維成形体は、高速気流により一体的に成形されるので、通常C/Cコンポジットに要求される厚みを容易に達成できると共に、炭素繊維の折れや損傷が少なく、且つ炭素繊維とマトリックス材料とが均一に混合され、従って高強度であって、優れた信頼性を有するものである。 【0037】しかも、本発明の乾式による繊維成形体の製造方法では、極めて短時間で十分な厚みの繊維成形体を製造でき、従来のように面倒な多数の成形体の積層工程やマトリックス材料の含浸工程が不要であるから、繊維成形体及びC/Cコンポジットの製造コストを大幅に低減させることが可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】391029509 【氏名又は名称】イソライト工業株式会社 【識別番号】000004019 【氏名又は名称】株式会社ナブコ
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)7月14日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】山本 正緒
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| 【公開番号】 |
特開平11−29368 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)2月2日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−187926 |
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