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【滋賀】

「ちはやふる」効果、浸透中 「かるたの大津」発信へ

近江神宮前を走り抜ける「ちはやふる」のラッピング電車=大津市神宮町で

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 競技かるたを題材とした人気漫画「ちはやふる」を大津市の観光振興に役立てようと、キャンペーン実行委員会が発足してから10カ月余り。作中に登場する近江神宮で新春1月5日、小倉百人一首の競技かるた日本一を競う「名人位・クイーン位決定戦」が開かれるのを前に、漫画を生かした「かるたの聖地・大津」の浸透度と、今後の展望を探った。

 キャンペーン実行委は二月、びわ湖大津観光協会の呼びかけで発足。三月に、キャラクターが描かれた看板を近江神宮の鳥居横やJR大津駅構内などに設置した。すでに、ちはやふるの作中に登場する近江神宮やJR大津京駅の周辺では「信者」と呼ばれるファンが訪れる「聖地巡礼」の様子が、インターネットなどで発信されていた。

 七月には、近江神宮で開かれた「全国高校小倉百人一首かるた選手権大会」に合わせ、市内の京阪石山坂本線で、車体や内装を漫画のキャラクターや百人一首の和歌で飾ったラッピング電車を運行した。大会に出場した高校生は過去最高の八百人を数え、競技かるた人気の高まりを感じさせた。

 近江神宮では昨年ごろから遠方の漫画ファンが目立つようになり、四月から始めたコスプレ感覚で楽しめる着物レンタルは若い女性に好評という。九月から始まり一月六日までの複製原画展は会期初日の朝、東京からカップルが訪れるなど、ちはやふる効果は出始めている。禰宜(ねぎ)の岩崎謙治さん(55)は「記念撮影する若い参拝客が増えている。漫画による一過性の人気ではなく、これを入り口に市内の百人一首ゆかりの場所を知ってもらえるとうれしい」と期待を込める。

 県内では、アニメ「けいおん!」の舞台とされる旧豊郷小学校が聖地となり、信者が押し寄せた先例がある。豊郷町商工会の宮川博史さん(43)は、成功の裏には「ファンが何を望んでいるか、交流を持つことが大事」と指摘。町内の飲食店が協力してポスターやグッズを店に置くなどし、ファンが立ち寄る経済効果が生まれた。校舎では「軽音楽甲子園」も企画され、高校生バンドの聖地という新たな地域のブランドもできた。

 実行委は今後、漫画を通じた競技かるたや百人一首への関心度アップと、歌人ゆかりの地が市内に十数カ所ある「かるたの聖地・大津」の発信を目指す。

 アニメ聖地巡礼を研究している京都文教大の岡本健特任講師(観光社会学)は「作品として非常に面白く、地域振興にも生かせると思うが、けいおん!のようにコアなファン層の聖地巡礼とは違った方法が必要になると思う」と話す。けいおん!に登場する架空の校舎とそっくりなため、漫画の舞台と推定認知される豊郷と違い、大津は実在の舞台として作中に登場する。岡本さんは「ちはやふるは地域のかるた文化とも密接にかかわっている」と強みを指摘。その上で「一つのコンテンツで長続きは難しい。漫画をきっかけに違った興味へ広げるなど、長期的な戦略が非常に重要。ファンと地域が一緒に盛り上げることが、今後の課題では」と分析する。

(滝田健司)

 <ちはやふる> 競技かるたに熱中する女子高生を主人公にした漫画で、作者は末次由紀さん。青春の情熱や葛藤を描いた「文化系スポーツ漫画」と評される作風が人気を呼んでいる。講談社の女性向け雑誌「BE・LOVE」で二〇〇七年から連載を始め、二〇〇九年にマンガ大賞を受賞。二〇一一年には日本テレビ系列でアニメ化された。作中には、全国高校かるた選手権大会の舞台となる近江神宮など、大津市内に実在する場所が多く登場する。

 

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