カシオミニは、発売当時、私の父親が持っていた。それまで大型の計算機を使っていたのだが、個人用として購入できる価格や手のひらサイズが革新的で、とても魅力的だったそうだ。私が生まれる前の製品だが、今見ても、機能、クオリティ、デザイン性など、その完成度の高さに驚かされる。
私自身が電卓を本格的に使うようになったのは大学生から。初めて購入したのは、カシオの関数電卓fx 7000GAだ。fx 7000GAは、関数電卓としても高機能だったが、計算の経過を画面に残すので大変見やすく便利だった。現在私は本格実務電卓の前身モデルJS 20Lを愛用しているが、心地良いキータッチと配色がお気に入りである。
そもそも電卓とは四則演算をする道具だ。今の時代、パソコンや携帯電話でも代用は簡単だが、なぜかデスクには必ずある。パソコンが目の前にありながら電卓がなくならないのは、人間にとって直感的で、信頼できるツールだからだ。私もデータの整理や見積りの計算などパソコンは使う。しかし数字の意味を検討する際には、あれこれと電卓をたたいてみることが多い。とくに書類を見ながら計算するときには必須である。そして電卓を選ぶなら、迷わずカシオだ。これだけは譲れない。使い手に配慮し研ぎ澄まされた仕様は、確実なサポートを約束してくれるからだ。特筆すべきは絶妙なキータッチ。数字が入力されたという適切なフィードバックが指先から返ってくる。さらに1つのキーから指が完全に離れる前に、次のキーが打たれても順番通りに認識する回路は、他メーカーより優れていると思う。これは速打ちの人にとっての要である。
さて、カシオミニの発売から40周年。今後電卓はどのように変わっていくのか。複雑な計算はパソコンですれば良いが、人々にとって、日常の計算のほとんどは四則演算で事足りる。私は電卓が電卓であり続けることこそが大切だと思う。足す、引く、掛ける、割る、をいかに正確にストレスなくこなせるかが肝心なのである。時流を意識したオシャレなデザインも重要だが、安易に流行を採り入れるのではなく、カシオには本当に使い勝手が良いデザインを追求してもらいたい。