- BLOGOS編集部のひとこと
- 宮崎学さんの新作「橋下徹現象と部落差別」年末年始に読みたい一冊です。
橋下徹現象と部落差別
宮崎 学 小林 健治
テレビが伝えない“被差別部落問題”の真実 4/4
2012年12月30日 07:30
差別地域の地名が伏せられたワケ
佐々野:それではユーザーのみなさんからの質問をご紹介していきたいと思います。
大谷:北海道の47歳男性から。「私は東北で育ち、北海道で暮らしている者ですが、部落差別の問題は20歳を過ぎてから本を読んで初めて知りました。2つ質問があるのですが、1つ目は、部落差別が西日本においてより顕著で、北日本では見られない、少なくとも残っていない理由はなんでしょうか?2つ目は、同和教育というのは有効なんでしょうか?」こういう質問なんですけど。
宮崎:被差別部落の問題は、東北6県の中にはあるとされていました。しかしながら、東北6県の被差別部落は顕在化していないものだと言われていたわけです。
上限はどの辺かというと、福島とか新潟とかあの辺りがそうだろうと言われていました。だから、北海道と沖縄には部落差別の問題はないんですよ。これは同和地区指定の話をしているわけですけどね。兵庫、大阪、奈良、福岡の西日本と言われるところが、やりあったところ。東北の6県はあるとされているんですが、顕在化していない。
あとは、教育の問題ですけども。人と意識を変えるのに、どうしたらいいかということで考えると、日本人もそうなんですけど、戦前の軍服主義教育というのがありますよね。アメリカに占領されたあとの進駐軍教育というのもあります。
教育するというのが、一番手っ取り早い人の意識を変える方法かもしれない。各社会主義国でも、全部教育で人の意識を変えようとした。これは人工的に人の意識を変えるものなので、僕はあまり好きじゃないんですけども、これ以外の方法を見い出し得てないんですよ。
問題は地域社会とか、家庭の中でこういう話ができるとかいう環境があればいいんですけど、今はほとんどないわけですから、学校教育に頼らざるを得なかったという実情があります。人のマインドコントロールをしようという話ですから。
ただ日本という国は戦前・戦後とマインドコントロールの教育をしてきたところなんですよ。だから、それまでも否定するのであれば、この同和教育に対する否定という理屈は成り立ちうるんだろうと思います。
けれども、戦前の教育がよかったとか、戦後の民主主義教育がよかったという思想が、この同和教育がダメだというようなことは間違いなんじゃないのかなと思いますけどね。
大谷:次の質問なんですけど、岐阜県の女性から。「私は30代後半ですが、大学時代、塾でアルバイトをしている友人が見せてくれた、地理科・公民科のテキストには、ごく普通に近隣の部落の地名が書かれていました。いつ頃から地名が伏せられるようになったのでしょうか?
また、誰が誰に地名を伏せるよう求めているのでしょうか?今回の橋下さんの問題でも、地名を特定するような聞き方をしたことも、謝罪の理由として挙げられていたかと思うんですけど、いかがでしょうか?
宮崎:1965年に同和対策審議会が行われて以降、“地名を特定して、どうだこうだと言うのはやめよう”というような方向に動いていったわけですね。それが法制化するわけですよ。1980年代中頃から伏せられるようになったと思います。
特定の地名を出して、そこが被差別部落だと言ったら、今もそこに住んでいる人達はそういうような人達だとなり、次の差別につながっていく可能性があるわけですね。まして、都市型の被差別部落というのは、ほとんど流動化していて、全然違う新しい住人が住んでいたりしたら、また新たな差別を生んでしまうということがあって、この問題に関しては、ナーバスに行きましょうということになっています。
佐々野:番組が始まる前に、須田さんがおっしゃっていましたけど、新大阪の駅にはいまだに張り紙があるそうですね。
須田:新大阪駅のトイレには、「差別的な落書きはやめましょう」という標語が掲示してあるんですよ。とはいっても、東京の人はそういったものを恐らく見たことがないと思うんですよ。
つまり、それだけそういった差別が色濃くあったということだろうし、逆に言えば、反差別という点に関しても、差別とどう向き合っていこうという意識は関西のほうが大きくあったのではないかなと私は思います。
そしてもう1つ。地名をそのまま残していくということになると、差別の拡大再生産になるのではないかということなんですね。だから、先ほどの職業差別の中で、例えば、町名番地まで書かないようにしましょうと言っても、隠していることに対して、企業側は調べたくなる。
だから、書いてはこないんだけど、興信所を使って、「どこが本籍地なのか?」それを調べて、被差別部落にあたるのかどうなのか、チェックするなんていう企業がまだまだあるんですよ。
宮崎:今回の「週刊朝日」の記事の取材も、本籍地が絡んでいると思うんですよね。
須田:橋下さんの住民票とかを全部取っているんじゃないのかと。
宮崎:全部とってます!
須田:そこが違法行為なんですよ。だから、宮崎さんはそれを明らかにしない、きちんと検証していない、まだまだ不十分であろうと言っているわけです。
また、もっと言えば、沖縄は差別が相当色濃いと思いますよ。なぜ米軍基地があそこに一極集中しているんだと。それを見ても、我々の気持ちのどこかに“それは、しょうがないだろう“という部分があるんですよ。これも根深い差別だと思いますね。
宮崎:この地域に米軍基地を渡しておけば、俺たちは被害を受けなくて済むという気持ちが、沖縄問題の根底にあると思います。また同様に、原発立地をしていくところも同じような発想なわけですよ。貧乏な地域に金が流れるようにしてやればいいんだという上から目線のやっちゃったもんですからね。差別は形を変えて、部落問題だけじゃなく、色々なところにあるわけですよ。
週刊朝日も橋下さんも間違っていた
宮崎:ちょっと話を戻しますが、橋下さんの最大の間違いは、改革という名の下に、たくさんの失業者を作ったということです。一方で、経済政策のもと、自分のことになると一人解放同盟をやっちゃったというご都合主義がある。だから、週刊朝日も間違っていれば、橋下さんも間違っていたというのが僕の結論なんです。
須田:もっといえば、橋下さんだからできたことじゃなかったんですかと。他の人は、橋下さんと同じようにこういった攻撃から反撃を繰り出すことができるかといえば、これはムリだと思いますよ。
だとすれば、橋下さんがやるべきことは、第二、第三の橋下さんを出さないように、こういった議論をもう1回きちんとやって、それをなくすためにはどうしたらいいのかっていうことを公のところで問題提起すべきだと思いますけどね。
佐々野:今夜は部落問題について色々とお話を伺ってきましたけれども、最後にアンケートをとりたいと思います。質問は「被差別部落問題についてわかりましたか?」
答えは4択になっています。1:よくわかった 2:少しわかった 3:あまり分からなかった 4:全然わからなかった
1時間という時間ではなかなか深いところまで話すのは難しいかと思ったんですが、アンケート結果がでたようです。1:よくわかった=22.9% 2:少しわかった=43.0% 3:あまり分からなかった=20.0% 4:全然わからなかった=14.0%
須田:関心を持ってもらっただけでもよかったんじゃないかなと。
宮崎:メディアがこの問題から逃げる中で、こういったことをやれたということ自体が意味ありますね。
大谷:今日の宮崎さんのお話ですごく印象的だったのが、“見える差別・見えない差別“というところで、確かに海外では人種差別があるんですが、この問題に限らず、思想信条の自由とかっていいますけれども、考え方とか信じている宗教とかで、知らず知らずのうちに、区別ではなく差別みたいなものは、普段どの人の生活の中にもあるんじゃないかなという風に思っていて。こういう機会を設けて、しっかり考える機会を少しでも作ることが大切なのではないかと思います。
佐々野:最後に今夜の感想を宮崎さんお願いします。
宮崎:被差別部落問題というのは、非常に難しい歴史があります。なので、短い時間で語るには本当に限界があるなと思いましてね。ただ、これを契機になんらかの形で関心を持っていただきたいと。どのような意見でもいいから、自分の考えを言えばいい。その意見に対して、自分は責任を取るという態度であれば、決して反差別的だとかいうような理由で批判されることはありませんよ。
それで迷惑を受けられる方々は、私のところに来てください。すべて解決しますよ。堂々と批判されてしかるべきことは、批判されるべきなんですよ。
須田:この問題に限ったことじゃないと思いますけども、“無知は罪“。知らないことは罪なんだという話があるじゃないですか。この問題も私はそうだと思っていて、まず関心を持ってもらって、何が問題だと思うか自分自身と向き合ってみる。この問題に対して、こう考えるということをまず考えてみることが必要なんじゃないかなと思いますけどね。
子供の頃に育った環境によって、その知識量に大きな格差がある「被差別部落問題」。メディアではタブー視されているため、自分から積極的に知ろうと思わなければ、情報はほとんどありません。しかし、須田さんも話していたように、“知らないからいい”というのではなく、被差別部落問題とはなんなのかということを、少しでも理解し、その上で、今なお根深く残る“差別”という問題について自分なりの考えを持つ。この番組がそう考えることのきっかけになればと思います。
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