アフリカゾウ:50年には日本の動物園から消える?
毎日新聞 2012年12月14日 15時02分
野生動物保護の機運の高まりや繁殖の少なさから、日本国内の動物園でアフリカゾウの飼育頭数が減少を続けている。日本動物園水族館協会(日動水)は2050年には国内で見られなくなると試算。危機感を強める関係者は、国内の飼育施設のネットワークを強め、繁殖増加につなげようと懸命だ。
多摩動物公園(東京都日野市)に先月27日、愛媛県立とべ動物園(同県砥部町)から、ブリーディングローン(繁殖のための動物の貸借)で1頭のアフリカゾウが来園した。古里の1文字を取って砥夢(トム)と名付けられた3歳の雄だ。
日動水などによると国内でアフリカゾウの飼育が始まったのは1965年。ピーク時の92年には24施設に計71頭いたが、今年1月末には22施設で計44頭に減少した。最大の理由は繁殖例の少なさ。これまで国内で生まれたのは7頭だけで、特に飼育されている雄が少なく、繁殖が進みにくい。これに加え、絶滅の恐れがある種としてワシントン条約で輸出入が事実上禁止されたこともある。
そこで、期待を集めているのが若い雄の砥夢だ。16日午後には多摩動物公園で盛大な歓迎式が開かれる。
大人の雄ゾウには生理周期があり、飼育係に反抗したり攻撃的な行動を取ったりするため、飼育管理にはハード面も含めたノウハウが必要となる。砥夢は乳母役の雌チーキ(推定36歳)の下で環境に慣れつつあり、永井清・同公園副園長は「砥夢が大人になるまで10年ほどかかるが、経験豊富な雌から社会性などを学ばせ、一人前に育てたい」と話す。
国内のアフリカゾウの血統を管理する「国内血統登録者」の川上茂久さん(群馬サファリパーク園長)によると、繁殖の可能性がある施設は三つあり、雌では多摩生まれのマオ(10歳、盛岡市動物公園に移動中)などがいる。川上さんは「その3施設のペアで個体数を増やす。将来は砥夢とマオのペアリングをはじめ計画的に移動させて繁殖の機会を増やしたい」と話している。【斉藤三奈子】