このように鳩山政権の地球温暖化対策に関する政策は、企業や国民に多大の犠
牲を押しつけようとしており、政府や国会はどのような犠牲を伴う活動をしよう
としているのか、まったく不明である。これでは、諸外国から歓迎されても、国
内への説得は非常に難しいといえよう。そのことに関して財界はどうコメントし
ているのか? 朝日の記事では次のように報じている。
「ただ、省エネが進んだ日本は、この国際市場では一方的な買い手になる可 能性もある。首相演説を受け、経済界は「政府との議論の中で見極めたい」 (日本経団連幹部)として、国から新たな資金負担を求められることへの警 戒を崩さない。途上国への投資促進で日本の省エネ技術が世界に普及する効 果も見込まれるものの、経済界を説得できるかどうかば不透明だ」
鳩山首相が国連演説で公言した地球温暖化政策は、日本の産業界および国民の 協力なくして一歩も進まないだろう。「政府との議論の中で見極めたい」と経済 界は、現段階では控えめにコメントしているが、国内的なコンセンサスどころか 相談すらなく国際社会に公表した鳩山政権に対し、我が国の産業界は怒り心頭が 本心ではないだろうか。我々国民は、政府と産業界との議論をしばらくは注視せ ねばならないだろう。
とはいえ鳩山首相は、我々が選んだ政権与党の党首であり、国民の代表者であ ることに違いはない。その我らの代表者を10年後の2020年に国際社会の笑 い者に晒すことや「オオカミ少年」あるいは大ほら吹き呼ばわりさせることは避 けねばなるまい。
そのためには国家を挙げて英知を結集し、なんとしても2020年までに19 90年比で温室効果ガス25%削減は無理としてもそれに近い数字を達成せねば ならないと考えている。
上で述べた4つの対応策、すなわち@省エネ努力、A自然エネルギーの普及、 B国際排出量取引制度への参入、C電気自動車への切換に加え、原子力発電所の 精力的な建設促進が不可欠であることをまず明言しておこう。
この件に関して我が国に極めて有利な点がある。それは、世界の原子力発電プ ラントの主要なメーカー五社のうち三社までが日本の企業であることだ。このこ とを我々国民、とりわけ政府与党は自信をもって原子力推進政策を進めてもらい たい。
残念なことは、今回国連での鳩山演説の中で、原子力開発に関して我が国がも つ崇高な技術に関する言及がなかったことだ。今や世界は、日本が持つ原子力発 電技術ほど垂涎の技術といっても過言ではない。
今後2020年までに残された期間は10年しかない。原発建設の工事着工ま での準備期間は指数級数的に長年月を要するといわれるが、それを含めて日本国 内に後何基完成させることができるか、フル稼働に急発進させる方策を打ち出さ ねばならない。
諸外国は、原子力発電プラントメーカーがあるなしにかかわらず、安定した電 力供給のためと地球温暖化阻止のため、原発の建設促進に向かおうとしている。 当然ながら、日本のメーカー三社は、海外での活動機械が急増するだろう。
海外で日本企業が原発建設に関与した割合に応じ、排出量取引を通じて日本が 確保できるだろう。我が国からの途上国援助は、単なる資金援助ではなく、途上 国の原発建設費に限定して日本企業を参入させる条件を提示すべきだろう。
「現在の交渉では、先進国側は途上国の温暖化対策を支援するという思いは 共有しているものの、そのために必要だとされる金額の大きさに戸惑ってい る。9月に国連機関が発表した報告書によると、途上国の温暖化支援には年 5千億ドル(45兆5千億円)が必要としている。ただ、先進国が実際に行 っている支援額は、その5%にも満たない210億ドルにとどまっている」
原発1基当たりの建設費は、日本国内の場合、4千億円といわれるから、途上 国の温暖化支援額のうち、ほんの10%でも4兆5千億円だから、これだけでも 毎年11基の原発が建設可能ということになる。
温暖化支援額の一部だけでも原発建設に回すことができれば、二酸化炭素ガス の排出量を大幅に減らすことになるばかりか、その途上国に安定した膨大な電気 を供給して経済を発展させることができる。メリットはその途上国に限ったこと ではなく、その建設に日本企業が参入できれば、我が国の経済に大いに貢献する だろう。つまり、大きな見返りが期待できる有望な投資事業となるのだ。
我が国が持つ省エネ技術を「知的財産権」と主張しても、ビジネスに結びつけ ることは極めて難しい。何故なら、とりわけ途上国にとって省エネ技術は無償提 供すべき技術と考えているからだ。
その点、原発の輸出は、ノウハウを蓄積した企業の絶対数が世界に少ないこと から、容易に進めることが可能だろう。ただし、兵器への転用防止のため、原発 輸出国は、燃料の提供と使用済み燃料の引き取りを責任持って実行せねばならな いことはいうまでもない。
「G研」代表