いじめの報告数、大幅増

 

 

全国緊急調査・文科省発表

 

 文部科学省は22日、滋賀県大津市で中学2年生の男子生徒が自殺した事件を受けて緊急に行ったいじめ調査の結果を公表しました。全国の小・中・高校と特別支援学校を対象に今年8〜9月に調査。小学校で報告されたいじめは、4月からの約半年間で8万8132件にのぼります。この結果をどうみるか、同省のいじめ問題アドバイザー=メモ参照=にも聞きました。

 

イラスト・大塚洋一郎

 

 

小学校、半年で8万8000件

 

 調査は、都道府県ごとに子どもたちにアンケートなどを行い、いじめの件数や内容を調べました。全国の学校で確認されたいじめ(認知件数)は14万4514件。このうち中学校は4万2751件、高校は1万2574件、特別支援学校は597件です。

 

 どんないじめが多いのでしょうか。小学校では「ひやかし、からかい」が65.6%で最も多く、「仲間はずれ、無視」(27.7%)「軽くぶつ」(27.5%)と続きます=イラスト参照。

 

 文部科学省が毎年度行ういじめなどについての「問題行動等調査」でも同じような傾向ですが、今回は数が大きく増えました。2011年度の同調査で小学校のいじめ件数は1年間で約3万3000件。今回の緊急調査の期間は約半年ですが、件数は倍以上あります。

 

見逃さない工夫で?
最多は「ひやかし」など

 

 「小さなことでも見逃さないよう、多くの教育委員会がアンケート内容などを工夫したためだと思われる」と同省担当者。ひやかしなど、いじめの中では軽いものが多いのはこのためだと考えられます。

 

 一方で、命の危険にかかわる重大な事例も小学校で62件ありました。友だちから持ち物をこわされたり暴力を受けたりして、自殺をほのめかす行動をとった男の子の例などが報告されました。同省は、学校や教委と連絡を取るなどして対応します。

 

 犯罪の可能性があるいじめを警察に通報しているかについては、小学校では38.4%が「すべて通報する」と回答。47.1%がとくに重要なものにかぎり通報していることがわかりました。

 

 調査には課題もあります。調査方法が都道府県でちがうため、件数には大きなばらつきがみられました。中・高・特別支援学校をふくめた1000人あたりのいじめの件数は多い順に、鹿児島県(159.5件)、奈良県(43.0件)、宮城県(37.6件)。一方で、福岡県(1.0件)や滋賀県(1.5件)など6県が2人未満でした。

 

 「報告数がそのままいじめの件数、とはいえません。うもれているいじめを見つけるよう調査方法を工夫することも考えたい」と同省担当者は話しています。

 


 

見えないいじめに「気づきの力」を
大阪樟蔭女子大学前学長の森田洋司さん

 

 鹿児島県や奈良県でいじめの認知件数が多かったことについて、評価したいです。いじめ調査は、いじめられた子に寄りそって把握することが大切。子どもたちのサインをていねいに聞いた結果だと思います。
いじめ問題には、1980年代からこれまで、4つの大きな盛り上がりの波がありましたが、「認知件数の多さ」は「関心の高さ」と比例しています。見ようとしなければ見えないのがいじめです。
いじめは、早期発見が大切。ひやかしやからかいといった小さなところから見逃さない努力が必要です。一人の先生が受け止めるのではなく、地域や家庭をまきこんだ「気づきの力」が求められます。

 

子どもの命最優先、小学校で解決を

長女をいじめで亡くしNPO法人           

ジェントルハートプロジェクトを設立した小森美登里さん

 

 今まで先生たちが見て見ぬふりをして、なかったことにしていたものの一部が見えただけ。この件数は真実に近づいてはいるけど、真実ではない。まだまだいじめはかくれています。
犯罪の可能性があるいじめでも警察に通報していない学校がありますが、学校の評価が落ちることをおそれているのでしょう。子どもの命が最優先という意識を持たない先生たちが、子どもを本当に指導できるのでしょうか。
実は小学校にこそいじめの種がたくさんある。小学校でしっかり解決しなければ、中学校で大きないじめに発展します。文科省や学校、教育委員会はいじめの件数を数えて満足するのではなく、根本的にいじめを予防する対策を作ることが大切です。

 

「犯罪」強調と処罰では救われない
「カリヨン子どもセンター」理事長で弁護士の坪井節子さん

 

 非常に多くの認知件数が報告されましたが、いじめが激増した訳ではないでしょう。悲しい事件が起きたことを機に、学校現場がいじめを見過ごさず、事実をかくさず報告するという覚悟を持ったのだと思います。
心配なのは、いじめの犯罪的な側面が強調され過ぎ、警察との連携が前面に押し出されていることです。処罰による禁止や、出席停止では、子どもは救われないです。
必要なのは、一人ひとりの子どもが、その存在を大切にされていると感じることのできる人間関係です。相手の言葉に耳をかたむけあい、一緒に考え、共に生きる関係を築いていく努力こそが、子どもをいじめの加害者にも被害者にもしない道を開くと思います。

 

【いじめ問題アドバイザー】いじめの防止や対応について文部科学省に助言する専門家や遺族ら11人で構成。滋賀県大津市のいじめ自殺問題を受け、同省が9月に配置しました。

 


過去の記事↓

◆安倍新政権で日本はどうなるの(2012年12月23日)

◆ノロウイルス 手洗いで予防(2012年12月17日)

◆笹子トンネルの天井崩落事故の原因は?(2012年12月15日)

◆5年ぶりの授業、「公約」守った(2012年12月5日)

◆衆院選 きょう公示(2012年12月4日)

◆いじめの報告数、大幅増(2012年11月23日)

2012年11月23日付

実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。

 

ページの先頭へ