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再生医療の夢膨らませるノーベル賞受賞

2012/10/9 3:30
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 本命中の本命と目されていた科学者の受賞である。今年のノーベル生理学・医学賞を、あらゆる細胞に成長するiPS細胞を世界で初めてつくった山中伸弥京都大学教授が、英国人の研究者と一緒に受賞することが決まった。

 日本人の生理学・医学賞受賞は1987年の利根川進氏以来、25年ぶり2人目になる。東日本大震災や原子力発電所の事故で国内では科学技術への信頼が揺らいでいるだけに、山中教授の受賞は日本の科学界や国民全体に勇気と元気を与えるものになるだろう。

 iPS細胞は病気や事故で傷んだ臓器などを修復する再生医療の切り札として期待が強い。山中教授は皮膚などの細胞にたった4つの遺伝子を導いてiPS細胞をつくる画期的な方法を開発した。ネズミの実験で成功してからわずか6年後というスピード受賞は、成果がいかに独創的かを物語る。

 いまは根本的な治療法がない脊髄の損傷や心臓病、糖尿病などの難病も、iPS細胞から神経や心筋、臓器を再生すれば治療が大きく前進する。実用化までにはまだ数年かかるとみられるが、成果が一日でも早く臨床応用されるよう期待したい。

 再生医療ではほかにも受精卵を使う方法があるが、生命の芽生えともいえる受精卵を壊すため倫理上の問題が大きい。iPS細胞を使う再生医療はこうした問題を減らせるのも大きな利点だ。

 一方で、心配なこともある。iPS細胞は日本で生まれ、官民挙げて臨床応用を支援してきたが、現在、再生医療でトップを走るのは米国勢とされる。日本ではヒトの細胞を使う研究の規制が欧米より厳しいことが一因だ。

 今回の受賞決定に浮かれるのではなく、安全面や倫理上の問題を克服し、臨床研究に早く取り組める研究指針づくりや、産学官の協力強化を考えるべきだ。

 科学技術全般を見渡しても、このところ中国など新興国が台頭し、日本の基礎科学の水準低下を心配する声も多い。欧米に留学する若者や海外との共同研究が減り、内向き志向も指摘されている。

 山中教授は50歳という若さに加え、神戸大医学部を卒業後、数年ごとに国内外の大学や研究機関を渡り歩いた異色の経歴にも目を引かれる。自ら競争を求めて研究の場を変え、腕を磨いてきた山中氏の姿勢を、若い研究者も見習ってほしい。

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