社説:視点・みんなの党と維新 「龍馬派」なら合流では
毎日新聞 2012年10月07日 02時30分
いささかうんざりではあるが政界の龍馬好きはなお、健在だ。橋下徹代表の下で衆院選に進出する日本維新の会は政策を坂本龍馬の船中八策になぞらえ「維新八策」と命名した。
一方「龍馬をやっている」を決めぜりふとする渡辺喜美代表が率いるみんなの党がこのところさえない。
維新の会と合流問題がこじれ3国会議員離党の痛手をこうむった。2年前に14%に達した政党支持率は直近の毎日新聞の世論調査で3%に落ち込んだ。
「みんなと維新」は当初、蜜月関係にあった。急進的な改革路線はおおむね共通しており、渡辺氏も維新との連携アピールに余念がなかったものだ。
ところがさまざまな情報が乱れ飛び、合流は暗礁に乗り上げた。橋下氏はツイッターで「渡辺さんのみんなの党へのこだわりが強かった」と説明した。
最近は商売敵(がたき)の気配すら漂った。渡辺氏は維新の会との関係を「よきライバルでよき友」と表現する。双方に言い分はあろうが要するに主導権争いが壁になったということだろう。
維新の会もお尻に火がつき始めている。民主、自民ダブル党首選を経た世論調査で支持率は8%と正式発足前より3ポイント下落、伸びなやんでいる。
自民党にとって安倍晋三総裁の誕生はこと維新対策という観点からはかなり有効だったようだ。維新の会に流れそうだった保守票の回帰が期待でき、しかも安倍氏が目指す改憲の実現へ将来、連携する余地もできた。
近畿以外に支持があまり広がっていない傾向も維新の会には浮かぶ。とりわけ東京はみんなの党の支持6%に対し、維新の会は2%に過ぎない。
構造改革路線で脱官僚型の政策を掲げる「みんなと維新」に決定的な対立点は率直に言って見いだしがたい。橋下氏と早くも内輪もめを演じ始めた国会議員団より、みんなの党の方が相性がいいようにすらみえる。
政策軸をはっきりさせ、幅広く同志を結集する姿勢をみせないと民主、自民に対抗する「第三極」の存在意義を有権者に認めてもらうことは難しい。橋下氏がみんなの党との連携を再度探る姿勢を4日に示し、渡辺氏も歓迎する意向を表明したのは自然な流れだ。だが、通常の選挙協力で補完し合う以上に踏みこむ大胆さも求められる局面ではないか。
龍馬人気が根強いのは薩長同盟を実現させたスケールの大きさゆえだろう。同じ方向のベンチャー企業が垣根を越えられないようで、それで「龍馬」を語れるのだろうか。(論説委員・人羅格)