日本経済が停滞から脱し、再び成長軌道に乗るには、エネルギーの安定確保がきわめて重要だ。安倍政権は原子力発電所の安全性の確認を急ぎ、電力の供給不安を解消するエネルギー戦略を早く示してほしい。
自民党は衆院選で「すべての原発で再稼働の可否を3年以内に判断する」「(原発の比率など)電源構成は10年以内に決める」と公約した。茂木敏充経済産業相は民主党政権が「2030年代に原発ゼロをめざす」としたエネルギー戦略を見直す考えも明言した。
再稼働の手続き示せ
大半の原発が止まったままでは電力供給は綱渡りを強いられ、生産活動や国民生活への悪影響は大きい。天然ガスなどの輸入が膨らんで電気料金が上がり、貿易赤字が常態化して所得や雇用の減少にもつながりかねない。
太陽光などの自然エネルギーを最大限増やすのは大事だが、原発に代わり主役になれるかは未知数だ。安全性を確かめた原発を再稼働させて電力不安を拭い、自然エネルギーの実力を見定めてから改めて中長期の政策を決める。そうした考え方は現実的といえる。
安倍政権はそれを具体的な政策として、エネルギー基本計画などで早く示す必要がある。
原発の再稼働ではまず政府が再稼働の必要性を示し、手続きやルールを明確に決めるべきだ。
再稼働の可否を技術面から判断する安全基準は、原子力規制委員会が来年夏までに作ることになっている。同委は6つの原発で敷地内の断層も調べ、日本原子力発電敦賀原発(福井県)と東北電力東通原発(青森県)では「活断層の疑いが強い」と判定した。
規制委は福島第1原発事故を教訓に、省庁から独立した組織として発足した。科学的知見に基づき安全性を公正・厳格にチェックすることは、事故で失った原子力安全行政への信頼を取り戻すのに欠かせない。政府が規制委の専門的判断を尊重するのは当然だ。
ただ規制委だけに責任を押しつけてはならない。同委が安全と判断した原発では、政府が前に出て、地元の理解と協力を得られるよう全力を挙げるべきだ。
規制委が安全性に疑義を呈した原発は、電力会社が補強工事をして同委が再審査するか、廃炉か、どちらかしかない。それを決めるには政府と電力会社、地元自治体による協議の場が要る。原発を国策で立地してきた以上、廃炉にするなら国による地元支援や電力会社への補償が検討課題になる。
原発敷地内にたまった使用済み核燃料の保管場所選びや、放射能の高い廃棄物の最終処分地選びも待ったなしである。再処理を柱とした核燃料サイクルをこれまで通り「国策民営」で進めるのか。新政権は真剣に考えるべきだ。
福島第1原発事故で汚染された地域の除染や廃炉も着実に進めなければならない。その費用は数兆円規模に膨らむ見通しだが、国と東京電力のどちらが負担するかはっきりしない。国が原子力損害賠償支援機構を通じて東電を支えるいまの枠組みでは、東電再建の見通しが立たない。事故の被害者への賠償や除染が滞らないよう、枠組みの見直しが避けられない。
自然エネルギーや省エネについては、導入を加速するだけでなく、新産業や雇用の創出につなげる成長戦略として示してほしい。
新エネを成長のテコに
自然エネルギーによる電気を電力会社が高値で買い取る制度が始まり、導入に弾みがつきつつある。情報技術を使って電力消費を減らす次世代電力網も実用段階に入った。これらの機器の製造や省エネを助言するビジネスなど、新産業が育てば成長のテコになる。
電力不足の解消には火力発電を増やす必要があるが、それでは地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出が増えてしまう。国際社会が直面する課題に日本だけ背を向けることはできない。将来の電源構成は、温暖化防止の目標とあわせて議論する必要がある。
電力市場の改革も後戻りさせてはならない。多様な企業の参入を促し、消費者が電力会社を選べる仕組みづくりは、電気料金の上昇を抑え、安定供給のため欠かせない。電力の小売りを全面自由化する法案を国会で早く成立させ、改革を推し進めたい。
自民党は公明党との連立合意で「可能な限り原発依存度を減らす」と盛る一方、新増設の可否などは曖昧にした。来年夏の参院選を意識して課題を先送りするようでは困る。原発に正面から向き合い、エネルギー不安を克服する道筋を示さなければならない。
茂木敏充、エネルギー、東京電力、原発、原子力発電所、電力供給、日本原子力発電、東北電力
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