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2012年10月6日22時41分

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北海道覆う火山灰と泥炭、地盤災害の影

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 泥炭や火山灰に広く覆われる北海道は、震源から離れた場所でも液状化現象が起きる。「過去の例に学び、心の準備や対策を」と専門家は呼びかける。

 地震による地盤災害で代表的なのものが液状化現象だ。

 液状化とは、建物を支えている地盤が、震動を受けて突然ドロドロになってしまう現象を指す。東日本大震災後、千葉県浦安市などではアスファルトの道路に割れ目ができたり、あちらこちらから泥水や砂が噴き出したりといった現象が起き、生活インフラに大きなダメージを与えた。

 粒がそろった砂などの間に、地下水などの水分が多く含まれると起こりやすい。「砂浜の波打ち際をパチャパチャと歩いて、足元が埋まっていく感覚も、局所的な液状化現象」。社団法人地盤工学会の富樫泰治・北海道支部長は説明する。

 道内でも、2003年の十勝沖地震での被害が記憶に新しい。震央から約260キロも離れた札幌市清田区の美しが丘では、住宅が沈下したり、家が傾いたりした。約230キロ離れた北見市端野町では、農地が広い範囲にわたって陥没した。

 また、1993年の釧路沖地震では、釧路川の下流の湿原で堤防が崩壊。十勝川の中〜下流部でも、堤防が長さ600メートルにわたって沈降した。

 なぜ、こうした大きな被害が起きたのか。

 理由は、道内を広く覆う泥炭層と火山灰質土。いずれも軟らかい地盤だ。

 土地を造成してきた開発の歴史も絡む。札幌市清田区の場合、旧沢地形を削ったり盛り土したりして平地に整えていた。調査の結果、盛り土しなかった場所ではほとんど被害が出なかったが、当時の沢沿いで盛り土を施した部分が被害が出た場所とぴったりと重なった。ただ、盛り土をした地域でも、住宅の基盤を地盤の固い部分までくい打ちすることなどで地震に備えることができるという。

 こうした経験も踏まえ、札幌、北見、函館など一部の自治体では、地盤の液状化ハザードマップ(危険予測地図)を作り、ウェブでも公表している。札幌市の場合は「隠れ活断層」が絡む直下型地震をもとに液状化リスクを示している。

 札幌市によると、市内では震度5以上の地震をほとんど経験していない。耐震化が進んでいない古い建物が部分的に残っているところもあり、建物の倒壊を防ぐためのさらなる対策が必要と指摘する声もある。

 また、凍結による地盤の劣化という北海道特有の事情も、深刻に考えられている。夏は30度、冬は零下30度になり、上下差が60度も異なる環境での地盤の環境変化について、各機関で研究が進んでいる。

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