来夏まで原発再稼働はしない=茂木経産相

 【東京】茂木敏充経済産業相は28日、原子力発電所の再稼働の判断について、原子力規制委員会の新安全基準が決まる来年夏以降になるとの見解を示した。また、民主党政権の政策について、自民党政権が踏襲するとは限らないとの考えを示した。民主党は2040年までに原発ゼロの方針を示していた。

Reuters

都内で行われた反原発デモ(15日)

 ウォール・ストリート・ジャーナルなどとのインタビューに応じた茂木経産相は、来年7月に予定されている新安全基準の制定まで「再稼働はしない」と語った。昨年3月に東京電力の福島原発事故が起きてから原発の安全性が依然として懸念されるなか、国内の原発50基のうち現在稼働しているのは2基のみとなっている。

 ただ、同氏は同時に、経済に悪影響を及ぼすようなエネルギー供給不足を食い止める必要性があると強調し、「(今年9月に発足したばかりの規制委によって)安全性が確認された原発については、規制委員会の判断を尊重して、再稼働を進めていく」と述べた。

 自由民主党が総選挙で圧勝し政権奪取を果したことで明らかになったように、国民の最大の関心事は低迷する経済の再生だ。ただ、専門家らは今回の選挙結果に関して、原発の積極的な開発という自民党の過去の政策が必ずしも支持されたわけではないと指摘する。

 国内最大のエネルギー分野では国内最大のシンクタンク、日本エネルギー経済研究所の小山堅常務理事は福島第1原発危機について、解消にはほど遠い状況だと述べた。周辺地域の住民数万人が避難生活を送る中、原発の復旧作業の進み具合は鈍く、原発の危険性を常に思い起こさせる日々が続いている。原発への信頼を回復させる特効薬はないと、小山氏は語った。

 ただ、原発停止の長期化が日本経済を直撃しているのも確かだ。

 原発が停止して以来、電力消費量がピークとなる夏と冬の間には日常的な電力不足に見舞われるようになった。さらに、原発停止を補う火力発電用に化石燃料の輸入が増加した結果、貿易赤字が慢性化している。

 化石燃料への過度の依存はまた、電力会社の最終損益に打撃を与え、上位4社の2012年度決算では大きな赤字が計上された。

 茂木氏は2040年までに原発をゼロにするという民主党政権の政策について、企業寄りの自民党政権が踏襲するとは限らないとの考えを示した。同氏は既に、原発の新増設を禁じた前政権の方針を撤回したい意向を示している。

 さらにインタビューでは、「民主党政権時代に決められたことは決められたこと。新政権ができたわけでありますから、根底からすべてのことを覆すということではありませんけど、検証が必要な問題については、きちんと検証した上で、今後の進め方を決めたい」と語り、原発の運転期間を40年間に厳格に制限するという前政権の方針も見直していくことを明らかにした。

 その一方で、実現可能な代替エネルギー源が見つかるまで、化石燃料は日本にとって不可欠なエネルギー源になるとの見方を示した。その上で、「アメリカからのシェールガスの輸入はできるだけ進めていきたい。そのための働きかけもしていきたい」と、特に米国からの天然ガス輸入の重要性を強調した。

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