社説:安倍政権と経済 「世界の中の日本」自覚を

毎日新聞 2012年12月28日 02時33分

 日本経済は米国、中国に次ぐ3番目の規模を持つ。「転落した」と悲観する向きも国内にはあるが、世界は「3位の経済大国」として注目している。さまざまな影響が国外にも及ぶからだ。安倍政権には、その責任を忘れず主要経済国としての自覚を持った政策を遂行してほしい。

 そこでまず注文しておきたいのは、早期に財政健全化のルールを明示することである。

 安倍晋三首相が目指す「強い経済」は、日本はもちろん、世界にとっても望ましい。しかし、歯止めなき借金による財政出動では、本当の意味の強い経済は実現できまい。

 12年度補正予算について首相は、民主党政権が決めた「年44兆円の新規国債発行枠」にとらわれることなく大型化するよう指示した。株式市場は好感し、公共事業関連銘柄を中心に連日値上がりしているが、借金頼みのバブル経済は早晩、行き詰まる。そうなれば、世界経済にも迷惑をかけることになる。

 財政再建は主要国が合意した共通の目標だ。10年にカナダで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で先進国は、財政赤字の半減目標を掲げた。日本は財政が悪すぎるため、ハードルを下げた独自目標で例外扱いしてもらったが、「44兆円枠」さえ守れないようでは、その達成も困難になろう。

 あからさまな円安誘導も、経済大国として誇れる政策ではない。為替相場は、経済の実態から極端にかけ離れた行き過ぎや乱高下といった場合を除き、市場に委ねるのが国際社会の了解事項だ。首脳や経済閣僚が具体的な相場水準に言及して誘導するようなことはしないものである。

 安倍首相には、円高・ドル安につながる米国の大規模な金融緩和に対抗すべきだとの考えがあるようだ。しかし、効果の限界や弊害が指摘されている他国の政策は本来、追随して対抗するのではなく、第三国と協調して修正を促すべきだろう。

 すでに一部の国から懸念の声が出ているが、通貨安競争に拍車をかけ、途上国や新興国に混乱が及ぶようなことは、責任ある先進国のとるべき行為ではない。中国に人民元の自由化など求めていく上でも不都合だ。

 マネーは地球規模で動いている。積極的な金融緩和と円安政策により、円を借りて海外の高い運用先に投資する流れが活発化する可能性がある。日本経済を強くする投資にお金が向かわず、海外でバブルなどひずみを生むだけかもしれない。

 安倍政権は日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にしたいとも言っている。大胆な規制緩和や透明な制度、構造改革を通じ、この目標にこそ力を入れてほしい。

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