アングル:日銀総裁の会談相手が財務相に、関与強化へ政権の意思表示か
[東京 28日 ロイター] 日銀の白川方明総裁が28日に財務省を訪問し、麻生太郎財務・金融担当相と会談した。これまで日銀総裁の政府側交渉相手は首相。これが新政権になって財務相に変わり、日銀トップの声が首相に直接届きにくくなる可能性が出てきた。
市場関係者の間では、政府が日銀に対する関与を強めるという意思表示ではないかとの見方が出ている。
日銀総裁は民主党政権下で鳩山・菅・野田首相とそれぞれ会談してきた。それが今回、白川総裁が会ったのは麻生財務相。同財務相は会談終了後の記者会見で、政府・日銀の政策調整を今後は「(財務相と日銀総裁の)2人でやっていくことになる」と日銀総裁に伝えたことを明らかにした。
安倍政権は、民主党政権下で廃止されていた経済財政諮問会議を復活。同会議は月1回、多いときは月2回開催されたため、今回も同じように開かれれば、今までよりも日銀総裁と首相が合わせる頻度は高くなる。そのため総裁と首相による会談は不要になる、というのが政府側の説明だ。
しかし日銀から見れば、総裁が首相に1対1で要望を進言する場が失われる。首相は財務相を通じて日銀総裁に要望を伝えられるが、日銀側の声は財務相には伝わるものの、首相まで届くとは限らない。
そこに市場関係者は、日銀に対するグリップを強めようとする政権のメッセージを読み取っている。安倍晋三首相は衆院選後、日銀が2%の物価上昇率目標を設定しなければ「日銀法を改正し、アコード(政策協定)を設ける」などと金融緩和の強化を要請しており、「着々と日銀包囲を進めている」(大手証券会社)。
強力な金融緩和を求める安倍政権への期待から、大納会を迎えた日経平均.N225は年初来高値を再び更新し、東日本大震災前の水準を回復した。しかし政府主導の強力な相場形成には、市場参加者からも懐疑的な声が出ている。「日本国債の海外保有比率が徐々に高まってきたのは白川総裁への信認度が極めて高かったため」と、短資会社の関係者は指摘する。日銀に対する安倍新政権の一挙手一投足が今後も注目される。
(ロイターニュース 竹本能文:編集 久保信博)
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