円高を利用し、企業はグローバル化を
2012年09月24日
1ドル70円台の「円高」が続いている。対ユーロでも1ユーロ100円前後。当面、円安に反転する気配はない。日本経済は2011年のマイナス成長から景気回復局面に入ってはいるが、12年の成長率はせいぜい2%、決して力強く復活しているという感じではない。
ではなぜ円高が続き近い将来に円安に転ずることがないのか。要するに円高というよりもユーロ安、ドル安なのだ。
ヨーロッパ危機はギリシャ危機からスペイン、イタリアに波及しつつある。一時的なユーロ買戻しがあったが、トレンドとしてはユーロの下落が続くと考えるべきなのだろう。今のところヨーロッパ危機の出口は見えない。
第2次世界大戦後、ドイツとフランスが手を組んでヨーロッパ統合を進め、1998年には欧州中央銀行(ECB)が設立され、99年には共通通貨ユーロが創設された。現在、欧州連合(EU)27ヵ国、ユーロ使用国17ヵ国にのぼっている。しかしアメリカの金融危機、ギリシャの財政危機などを契機にヨーロッパの統合は逆回転をしだした感がある。
当面、ギリシャのユーロ離脱もドイツの離反もないだろうが、次第に統合が崩れていく可能性が高い。理想的な姿は財政まで統合したヨーロッパ合衆国の創設だが、なかなかそこまでは進んでいかないだろう。ドイツ国民やドイツ議会がギリシャなどを合衆国の一部として抱えていくことに同意するとは思えないからだ。とすれば、抜本的な対策はとられないまま、次第にユーロが下がっていく状況が続いてくのだろう。
かたやアメリカ。このところ住宅、雇用などで良好な指標が続いていて、アメリカ経済の力強い回復を期待する人々も少なくない。しかし、筆者は今の回復が持続可能だとは思っていない。
というのは、 ・・・・・続きを読む
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- 榊原英資(さかきばら・えいすけ)
1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。
WEBRONZA編集部
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