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家族葬メリットと落とし穴

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2012年10月4日 掲載

今や葬儀の3割がこれ…

 親族やごく親しい友人だけで故人をこぢんまりと弔う家族葬が、葬儀の新しい形として注目されている。簡単で費用は安いし、参列者の対応に追われずに済むと評判だが……。

「父親は定年退職から30年。知り合いの多くがすでに亡くなっているし、わが家は転勤が多く、地域とのつながりも薄かった。だから家族とごく親しい友人だけで送るのがいいだろうと」
 この春、90歳の父親を送り出したAさん(60)は、家族葬を選んだ理由をこう説明する。
 通夜と告別式は、葬儀社が用意した「邸宅型」と呼ばれる施設で行った。和室やキッチン、バスルーム、冷蔵庫や洗濯機まで備わり、自宅感覚で貸し切りにできる。参列者は約30人で、食事代を除いた費用は約70万円だった。普通に葬式を出せば、少なくとも150万円はかかったという。
「自宅でひと晩、一緒に過ごせたみたい。誰に気兼ねすることなく、故人に感謝の気持ちをきちんと伝えられた」とはAさん。
 日本消費者協会の平成19年調査によると、葬儀費用の全国平均は231万円だが、読売新聞による今年2、3月の調査では、9割を超える人が「葬式や法要を簡素に行う方が良い」と考え、6割以上が家族中心の葬儀を望んでいる。
 正式な統計こそないものの、通夜や告別式を執り行わず火葬のみを行う「直葬」を含めれば、葬儀の3割が家族葬だといわれる。

<とことん簡略化すれば20万円以下に>

 葬儀業界も、ニーズに応えようと躍起だ。
 前出の「邸宅型」をはじめ、都市型の少人数向け葬儀会場が、あちこちにオープンしている。
 費用の“見える化”が進んだせいで、ホームページでは簡単に見積もりが取れる。「追加料金一切なし」といった「定額プラン」も用意されている。お布施を定額明示している業者もある。簡略化すれば、20万を切るプランもある。
 ただ、家族葬には場合によって、落とし穴もある。葬儀相談員の市川愛氏は、「家族葬も意外に費用がかかる」とこう言う。
「一般葬では、参列者平均で7000円程度の香典がありますし、親族はそれ以上の金額を出しますが、家族葬では一般参列者からの香典収入が見込めません。参列者が100人程度だと、約100万円は費用を香典で賄えますが、家族葬ではその多くが持ち出しになります」

<「実費」が加算されて割高になるケースも多い>

 チラシには〈葬儀一式50万円!〉と明示されていても、それはあくまで祭壇レンタル料と棺の料金、葬儀業者の人件費というケースが圧倒的。施設利用料が2日で20万~30万円、火葬代が15万~20万円、車両代が20万~30万円……。これらは一般葬と同様「実費」として業者が精算を代行し、後から別途加算される。家族葬は参列者が少ないからと1人1万円の豪華な精進料理をすすめる業者もある。
 費用を抑えたくて家族葬を考えているなら、どこに追加料金が派生するかは事前に要確認だ。
 家族葬に呼ばなかった故人の友人や知人への対応も、場合によっては面倒だ。
 故人の遺志で家族葬を選んでも、得意先の関係者から学生時代の後輩まで、思いがけない人が「個別に弔問したい」と自宅を訪ねてくることもある。遺族はそのたびに同じ話を繰り返す羽目になり、疲れてしまう。参列者の対応に追われず、落ち着いた時間が持てるのが家族葬のメリットのはずが、これでは本末転倒だ。
「最近では通夜を家族葬で行い、告別式だけを案内するケースが増えています。葬儀とは別に、ホテルやレストランで開く会費制の〈お別れの会〉を四十九日前後に催す家族も目立ちます」(市川氏=前出)
 いざという時、無駄な出費をしないように、今から、いろいろと知識を仕込んでおくことが大事だ。
~2012年10月4日以前の記事~

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中村静香