党首討論、安倍氏と首相が金融政策で論戦
[東京 30日 ロイター] 来月4日の衆議院選公示を前に30日午後、日本記者クラブで党首討論が行われ、自民党の安倍晋三総裁は、日銀の金融政策をめぐる自身の発言について、首相になったら手段は申し上げないとし、金融政策の手段は日銀が決めていくとの考えを示した。
また、建設国債を買い入れるとの発言の意図について、建設国債の範囲で買いオペを進めることが必要だと説明した。
これに対し野田佳彦首相は、日銀にファイナンスをさせるやり方はおかしいと批判。経済政策に必要なのはばらまきではなく、(成長分野への)種まきだと主張した。
<安倍氏「野党だから手段に言及」>
安倍総裁はデフレ脱却と円高是正に向けた金融政策について「伝統的な緩和でなく、2%のインフレターゲットを設けて、ありとあらゆる手段をとっていく。財政政策も行う」との考えを示した。その上で、建設国債を日銀が買い入れるべきとの発言について、直接引き受けとは言ってない、とあらためて否定。「建設国債といったのは、赤字国債ではないという意味だ。建設国債というと、いきなりコンクリートというイメージがあることを、その時は気づかなかった」と説明した。
さらに「金融緩和ということでは、外債を買っていくこともそうだし、FRB(米連邦準備理事会)のように株式市場に直接影響を及ぼしていくこともやっていくべきだろう」と緩和の具体的手法に言及した。ただ、「私が首相になったら、手段は申し上げない。日銀が手段を決めていく。今、野党の立場だから、たとえばということで手段にも言及している」と明言した。
また安倍総裁は「建設国債でも赤字国債でも国債に色はついてない。マクロ政策として建設国債の範囲の中で買いオペを進めることが必要と申し上げた」と説明した。
<1%のCPI目標は現実的>
一方、野田首相は、デフレ脱却や円高是正についての具体的考え方について「1日も早くデフレから脱却し、日本経済を活性化させないといけない」とし、「日銀と問題意識を強く共有しないといけない。このために共通理解という文書を発出した。これからも日銀と連携しデフレ脱却に取り組む」と述べた。
また、物価上昇率の目標を1%としていることについては「現実的な数字だ。2001年から2010年までマイナス0.3%、90年代は0.8%、80年代のバブルの時も2.1%だった。まずは1%をしっかりとクリアしていく。大事なのはばらまきではなく、種まきだ」と表明。「需給ギャップは現在GDP(国内総生産)比で3%だが、デフレ脱却の視界は着実に開けている」との認識を示した。
また安倍総裁の建設国債買い入れ発言について「日銀に財政ファイナンスさせる発想だと思えて仕方ない。本道ではない」と指摘。「赤字国債も建設国債も借金であり、日銀にファイナンスさせるやり方はおかしい」と批判した。
公明党の山口那津男代表が当面の経済政策について「必要なのは補正予算だ。公明党は10兆円規模の補正を考えているが、どうやって景気下支えを図るか」と質したのに対し、首相は「先月末ときょう、2段階で経済対策を講じたが、まだ必要だ。本格的な未来志向の補正予算を早急に作っていかなければならない」と答えた。
(ロイターニュース 石田仁志:編集 山川薫)
© Thomson Reuters 2012 All rights reserved.