2006年12月28日

自治体警察における国家公務員の概要

自治体警察における国家公務員の概要

元々、日本警察は自治体警察だけではなく国家と自治体の二本立てとなっているが、多かれ少なかれ国家警察が自治体に介入することはある。

これは各自治体警察も完全に自治体警察とは言い切れない為である。

そもそも自治体警察の職員は全員地方公務員(各自治体に雇用されている公務員)というわけではない。

消防の場合は自治体消防に所属する全ての職員は地方公務員である。本来、自治体運営なのだから自治体職員を主体に運営するのは自治体機関の原則である。

しかし警察の場合は自治体警察の職員に国家公務員(国家に直接雇用されている公務員)も含まれている。

この国家公務員はキャリアの警察官ととノンキャリア出身で警視正以上に昇進した警察官である。警察法上「警視正」以上に昇進した警察官は地方公務員として採用された者でも自動的に国家公務員の身分となる為、例えば、神奈川県に採用された神奈川県の警察官(地方公務員)であっても警視正に昇進したとたんに地方公務員の身分は取り消され、国家公務員の身分に移行する。

この為、警視正昇進と同時に地方公務員法の適用外の存在となり、神奈川県の管理に服する必要も無くなるのである。これが全国中の警察において言える。

キャリアの場合は最初から国家公務員採用なので初任階級の警部補の時点で既に国家公務員である。


国家公務員と地方公務員では人事面で大きな差があり、要するに東京都の公務員の場合は東京都知事にその任命権があるが、国家公務員の場合は東京都に雇用されているわけではないので都知事には任命権も罷免権も無い。

警視庁で言えば、警視庁に所属していてもキャリア組とノンキャリであっても警視正上の警察官に対しての一切の人事権を都知事は持っていない。つまり東京の警察機関に勤務していても、所属は国家機関である警察庁ということになる。

形式的には警察庁の職員が警視庁、道府県警に出向して勤務していることになる。例え各自治体警察に常勤していてもあくまで出向者なので出向先の自治体に人事権は無い。


アメリカの警察は自治体主体なので、各自治体警察はそれぞれの自治体の首長の隷下に置かれている。州警ならば州知事、市警ならば市長と各自治体の首長に人事権があり、指揮命令も市長→市警本部長→市警察官という手順で行える。

しかし日本の警察は自治体警察といってもトップには全て国家公務員が立っている。警視総監は無論のこと、警察本部長も警視監、どんなに低い階級の者でも警視長であり、全員警視正以上である。

要するに各自治体警察のトップは全員国家公務員となっている。彼等は国家に雇用される身分であり、各知事の隷属ではない。

この為、警視総監も警察本部長は各自治体のトップである知事ですら勝手に任命したり罷免したりなど出来ない。要するに知事を社長に例えた場合、警視総監や警察本部長は親会社に所属する経営陣といった感じである。特に警視総監は親会社のbQであり日本警察全体で警察庁長官に次ぐ地位に君臨する。

つまり子会社(自治体)の社長に過ぎない知事は国家に雇用された国家公務員を勝手にクビにすることなど出来ない。


日本の知事はアメリカの知事に比べて弱いといわれる由縁はこのようなところにあり、アメリカの各州知事は警察、さらに軍隊(州兵)に対しての指揮権を持つが、日本の都道府県知事は消防に対しての指揮権は持っていても警察と自衛隊に対しての指揮権は一切持っていない。

自衛隊に関しては日本の場合、全て国家機関とされており、自衛隊員の身分は全員、特別職国家公務員である。当然、知事に指揮権や人事権など無い。

日本の知事が自治体警察に直接命令することは越権行為とされており、そもそもトップたちが全員国家公務員なので法律上、知事の管理に服する必要が無いので、知事は警視総監、警察本部長たちを客員として扱うしかない。

またもっと正確に言うと、警視総監、警察本部長だけではなく、警視庁の場合は副総監、部長、参事官、主要課長、方面本部長、大規模警察署長、警察本部の場合は副本部長、部長といった警視正以上の役職者全員に対しても知事に人事権は無い。

特に警視庁は警視正以上が占める役職が多く、警察署長も半数以上が警視正なのでその傾向が強い。

指揮命令も警視総監に対して命令を出せるのは、内閣総理大臣(有事の場合くらい)と、国家公安委員長、警察庁長官くらいである。その他の省庁は大臣であっても警察に介入することは法的に禁止されているので警視総監に命令を下すことは出来ない。

前述通り警視総監は東京都の公務員ではないので「都知事の部下」という立場ではない。よって都知事にも警視総監への命令権は無い。

自治体警察における国家公務員の立場

キャリアは言うに及ばず、ノンキャリアでも警視正以上は国家公務員である。

この警視正という階級は警視の一つ上である。つまり警察組織ではかなり高い地位であるということ。

警察活動の現場においては方面本部長、大規模警察署長といった要職に相当する階級であり、上級指揮官としての命令権がある。

つまり警察活動指揮の主力を担っている階級であり、警察署では間違いなくトップで、警視庁でも参事官や主要課長など何百名もの部下を指揮する立場にある幹部である。

ここで重要なのは、そんな上級指揮官たちが皆国家公務員なのに、各自治体警察が完全に自治体運営と言い切れるのかということである。

結論から言えば、言い切れない。警察活動の主力を担うのは巡査〜警部クラスの現場の警察官だが、実際に警察を運営する地位にいるのは警視正以上の国家公務員なのである。

だからこそ日本の警察は国家警察の形態に限りなく近いのである。

国家警察である警察庁から出向している国家公務員である警察官が舵取りをする以上、各自治体警察といっても最終的には国家警察の意向は無視できない。

警察庁から出向して各自治体警察の要職に就いている警察官(国家公務員)にとっては、各自治体の知事の意向よりも警察庁の意向の方が重視される。

警察庁出向組の警察官(特に最初から国家公務員として採用されたキャリア)たちが各自治体警察に自治体警察を全て運営できる警視総監、警察本部長という立場で出向すると、自分達はあくまで「国家に採用された国家公務員なのだから地方首長に過ぎない知事に隷属する必要は無い」と考えるのが当然である。実際、法的にも隷属する必要は無い。

各自治体は自分達を採用した所ではないので、自治体よりも国家を優先して考えがちとなり、組織の運営を担う幹部たちが消防に比べて国家寄りとなる風潮がある。

ニックネーム ピィポくん at 12:35| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする