富士通
2012年12月28日(金) 東奥日報 ニュース



■ 行商半世紀、28日で店じまい

写真
盛岡市の大通商店街で海産物を売り続け、市民に長年親しまれた行商の木村ゴヨさん(左)=27日午前
−PR−


 南部町から盛岡市へ毎日のように通い、長年にわたって行商を続けてきた木村ゴヨさんが、28日の営業をもって店を閉める。木村さんは1918(大正7)年生まれの94歳。八戸市などの海産物を露店販売して半世紀、飾らない人柄と素朴な南部弁で地域の人たちに親しまれてきた。行商生活の幕引きを前に27日、「いろんな人たちに支えてもらい、ありがたい」と語った。街角での数多くの思い出と支えてくれた人たちへの感謝が、今は胸に残る。

 盛岡市の大通商店街にある家具店脇の外のスペースが、木村さんの仕事場だ。この日も、階段に腰掛け、台にサケやウニ、数の子などを並べていた。

 「今日は何買ってぐ?」「早ぐ買わねぇと無ぐなっちまうよ」

 積極的な“セールストーク”に、多くの客が足を止める。木村さんは指の先が開いた手袋を着け、忙しそうに商品を袋に詰め、おつりを手渡す。震えるほどの厳しい寒さだが、服の中にしのばせたカイロを味方に商売に励んでいた。

 行商に来るのは、真夏と真冬の時期をのぞく期間。朝3時に起きると、盛岡市から来た知り合いの運送業者の車に乗せてもらって同市へ向かい、7時ごろから商売を始める。終わるのは大体、午後3時ごろ。帰りは電車で自宅に着くのは夜−こんな日々を送ってきた。前は本県でも行商していたが、いつからか、交通の便が良い盛岡市が拠点になった。

 大通商店街の周辺にはかつて、他にも行商がいた。しかし時代は流れ、気付けば自分一人に。若い人たちはスーパーマーケットに足を向けるようになった。

 「昔は花を売る人もここら辺にいだよ。前はもっと商品も売れだんだけどねぇ。持ってきた物が売れ残るなんて無がった」と木村さんは昔を懐かしむ。

 来年は95歳になる。年齢的にちょうど良い頃合いということも、引き際を決める一つになった。

 木村さんが引退を決めたことを知り、最近はなじみ客がひっきりなしだ。同市の田中栄子さん(74)は「ここの筋子は、ここら辺の物よりおいしい。30年以上利用させてもらっているので、引退すると寂しくなるね」と名残惜しそう。「明日で終わりなんだって?」「お元気で。またどこかで会えるよね」「風邪、引かないでね」。他の客からも口々に温かい声が送られる。市民との絆が、確かにそこにあった。

 当然のように働いてきた毎日は、28日に一区切りを迎える。「何も寂しぐねぇよ。楽しぐ仕事でぎだし」と木村さん。「これがらはゆっくりすんだ。湯っこさ行ったり、家の掃除したり、仏様さご飯あげたりさ」。優しく笑った。

県外限定!!「東奥日報電子版」
パソコンでその日の東奥日報がまるごと読めます
購読のご案内、申し込みはこちら >>クリック




PR ・第6回全農肉枝肉共励会「最優秀賞」の特上カルビ焼肉用700g
・【47CLUB】全国の地方新聞社厳選の商品をお取り寄せ!
・東奥日報CD縮刷版 購入はこちら

HOME
住まいナビ
三八五流通食品部
青森県神社庁
ビジネス支援チャンネル
47news
 東奥日報
ニュース速報
メール配信サービス
Web広告の申し込み