[PR] 海外旅行 (cache) 菅原研究室紀要:内閣支持率が新聞ごとに違うのは、新聞の論調によって回答拒否(あるいは迎合回答)が発生するからだ、という説について - livedoor Blog(ブログ)

2010年09月24日

内閣支持率が新聞ごとに違うのは、新聞の論調によって回答拒否(あるいは迎合回答)が発生するからだ、という説について

 『東京人』2010年9月号に寄稿した「世論調査の楽しみ方」という記事でも取り上げましたが、世論調査の内閣支持率について次のような説が出回っていました。

 「朝日新聞の世論調査だと朝日新聞に好意的なアンチ自民党政権の人が多く答えがちなため、朝日の内閣支持率は低くなる。逆に読売新聞や日経新聞は自民党政権に好意的な人が答えがちなため、読売や日経の内閣支持率は高くなる。」

 似たようなバージョンに「回答者がその新聞の論調に合わせて(迎合して)答えるので、朝日では内閣支持率が低く、読売・日経では高くなる」というようなことも言われています。

 この「内閣支持率が新聞ごとに違うのは、新聞の論調によって回答拒否(あるいは迎合回答)が発生するからだ」という説を、記事では紹介と解説(否定)にとどめておりましたが、関心を持たれる方が多いようですので、簡単にここで分析してみましょう。


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分析
 対象となる説は、論調による回答拒否(迎合回答)が、内閣支持率の相違を生み出すという「因果関係」を主張していますが、回答拒否がターゲットとすれば、仮に世論調査の個票データを持っていたとしても、対象者は落ちているので直接の検証は難しいでしょう。

 しかし、たとえばアンチ自民の人が読売新聞の調査から抜け、自民党寄りの人が朝日新聞の調査から抜けているなら、自民党政権と民主党政権とで、内閣支持率は異なる傾向となるはずです。つまり、自民党政権時の調査ではアンチ自民が多い朝日では低く、読売では高くなり、民主党政権では朝日で高く、読売で低くなる、あるいは少なくとも両者の差は縮まるでしょう。

 上の図は、横軸に読売新聞の内閣支持率、縦軸に朝日新聞の内閣支持率をとって散布したものです。調査日が重なっている調査結果だけを採用しています。時間が無いのでデータはgiinsenkyo @ ウィキ掲載のものをそのまま使いました(いつもデータ整理ありがとうございますm(_ _)m)。

 この図では麻生内閣と鳩山内閣のデータを載せていますが、ほとんどの点がy=xの45度線よりも右下に来ています。つまり、読売新聞のほうが内閣支持率が高く出るということです。この傾向は、自民党の麻生内閣でも、民主党の鳩山内閣でも変わりません。どちらの内閣でも、読売新聞の数字のほうが朝日新聞の数字よりも一定程度高くなっているわけです。

 ここから、新聞の論調によって内閣支持率が異なるのだ、という話はデータ的に難しい(成り立たない)ことがわかります。読売新聞が自民党寄り・保守的という理由で朝日新聞よりも内閣支持率が高くなるのだとしたら、民主党の鳩山内閣では朝日新聞の数字に近づく、あるいはより低くなってもよいはずですが、そうはなっていません。調査日が重なるケースが少ないですが、日経と朝日で比較しても同様の結果でした。

 どうして内閣支持率が異なるのかは、質問文・選択肢や調査方法など、多様な理由によります。冒頭に挙げた東京人の記事で日経と朝日を比較しての解説を行っていますので、気になる方はご参照いただければと思います。

 なお、一応述べておきますと、以上の分析は、新聞の論調に応じて回答拒否をする人が全く存在しない、というようなことを述べているわけではありません。あくまで世論調査結果の数字からは抽出不可能であるということ、つまり数字に影響を与えているわけではない、ということになります。

 観測数が少ないので、大量にデータを集めて比較すれば、「違う」という結果も出てくるかもしれません。たとえば、朝日のほうが0.1ポイント読売よりも民主党に甘い、というような結果が将来的に出てきたってよいでしょう。でも、現在流通している説がそんな小さな差をもとにして言われているわけではないということも確かでしょうから、ここではこれ以上の分析はいたしません。


余談
 こういう説は、政治に詳しい、政治通と呼ばれているような人、たとえばメディアや政治家周辺でよく語られていると思います。こういう人は、政治報道をよく読み、新聞の論調に詳しい方々です。何より、東京周辺にいる人たちです。

 一方、日本人の多くは政治報道を熱心に読まないですし、論調の差も大して知覚していないでしょう。主張に大差がないですし、わざわざ比較して読むことも少ないでしょう。だいたい、読売や朝日といった全国紙以外の、ブロック紙、地方紙を読んでいる人も多いわけです。全国紙を色分けして論じる、というのは一部の人の感覚なのではと思います。『世論の曲解』第6章でいう、間違った「世の中イメージ」です。

 だから、仮に「○○新聞の調査は拒否します!」という対応があったとしても、論調を嫌気したことによるものという判断は早計でしょう。新聞を評価する要素は、政治報道だけではないのですから。たとえば、○○新聞のしつこい勧誘に嫌気した結果なのかもしれませんよ、ということです。


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連絡:コメント読みました。間違いは誰にでもあるので、気にすることはないと思います。次はぜひご自身のブログで分析を公開されてはいかがかと思います^^ >今朝コメントされた方へ

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まず「菅原琢」氏についてははてなキーワードをクリックしてください。世論調査の問題などの研究者。 Q: @ke_mushi …熱狂的な朝日の読者は産経の調査に回答しないし、逆も然りで数字の差は出ると思います… @tsuruyama という疑問(予想)に対して。 http://twitter.com/s

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