「末は博士か、大臣か」―。かつて出世の象徴として、誰もがあこがれたポスト。目まぐるしく代わるせいなのか、大臣の存在感が薄れている▲
おとといの衆院選で、連立与党の現職閣僚8人が枕を並べて討ち死にした。現行憲法下では最多。旧来ほどの神通力はなくても、大臣になれば選挙は左うちわ。放っておいても周りがもり立てる。涙をのむのはそれこそまれ▲
今回、あらがいがたい逆風が民主党に吹き荒れた。比例での復活さえも阻むほど。敗因には個人の資質、力量不足もあろう。しかし、民主党政権がお粗末な閣僚交代劇を繰り返した結果でもある▲
泣くに泣けないのが藤村修官房長官だ。首相の女房役の落選は初めて。苦戦でも「お役目大事」と、地元入りはままならず。公示後にやっとお国入りしたものの、北朝鮮のミサイル発射をめぐる失言などもあり、党に殉じた▲
一方、圧勝の自民党。前回逆風、今回順風の威力をもろに受けた。それだけにリスク回避の嗅覚がさえる。「順送り人事では政権は持たない」。安倍晋三総裁は新内閣の布陣を実務型とする構え。政権基盤の安定化を目指す▲
勝者は冗舌、敗者は寡黙。「私の不徳の致すところ」は敗戦の決まり文句。「敗軍の将、兵を語らず」は潔い。でも、「将」はやはり自らの戦い方の反省を語らなければ、再挑戦への準備は始まらない。