「とりあえず、泡で」。てっきりビールだと思いきや、最近はシャンパンやソーダ割りなど「泡もの」で乾杯、という人も多いらしい。ぐっと華やぎ、ぱっと消えゆく泡は、年忘れ気分にもふさわしいような▲
この週末は忘年会ラッシュで、飲食店が一番忙しい書き入れ時、のはず。それが、店主もタクシー運転手も一様に渋い顔。「なんで今、やるかなあ…」。29年ぶりの「年の瀬選挙」のダメージは大きく、街も心なしか自粛モード▲
師走の選挙は5回目だが、戦後24回の衆院解散のうち、11月の解散は3回目。過去2回はいずれも与党が議席を減らした。政治は常に暮らしに深く関わっているが、年の瀬の暮らしの平穏を直接的に揺さぶるやり方は、どうもいとわれるのかもしれない▲
「年忘橙剥いて酒酌まん」正岡子規。忘年会はばか騒ぎより、いつもの顔触れでしみじみ、互いの平穏無事を喜びたい。昨年は東日本大震災で年を忘れる気持ちになれず、今年は政治に水を差される。年末の心休めのひとときを皆が持てる日はまだ先かも▲
ロシア、フランス、米国、中国、そして日本と韓国。世界の多くの国で指導者が交代する「スーパーイヤー」が終わる。これほど変化がありながら、それでも清新さや高揚感は薄い。さて日本は▲
きょう投票日。未来が泡と消えないよう、「とりあえず」ではない1票を。