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特集社説2012年12月18日(火)

愛媛の投票行動 自民王国の復権とは言い難い

 民主党の大惨敗で幕が下りた衆院選である。県内では四つの小選挙区を自民党が独占し、比例得票でも第1党に返り咲いた。「自民王国」の地力を示し、政権奪還にかなった格好ではある。
 ところが、前回の政権交代ほどの高揚感がないのはなぜだろう。むしろ勝者が「勝ちすぎ」を憂い、早くも次期衆院選の当落に興味が移ってしまっている感さえある。
 どちらか一方に大きく振れやすい小選挙区比例代表並立制の特性だと言えばそれまでだ。しかし、華々しい結果からは見えにくい有権者心理を見誤れば、必ずしっぺ返しを食らうことになろう。
 とにかく投票率が低すぎるのが問題だ。全国の小選挙区投票率は59・32%と戦後最低を記録した。愛媛も59・56%で、国政選挙とは思えないほどの関心の低さである。
 いわゆる無党派層が政治そのものに愛想をつかしたともとれる。争点が民主党政権の評価に絞られ、候補者らは真正面の政策論争を怠った。特に愛媛は原発立地県であるのに、伊方原発の今後についての論戦は深まらなかった。
 非自民票や民主批判票、脱原発票が多党化によって分散し、漁夫の利の1党が大勝してしまう。雪崩現象が起きたとみるのが自然だ。有権者を消去法的選択へと駆り立ててしまった代償は大きい。
 実際、愛媛の小選挙区で当選した自民党候補の獲得票数は、接戦だった前回を大きく下回っている。政党支持の指標となる比例の県内得票率も自民は前回33・67%から今回31・65%まで落としている。圧倒的な議席差に表れたほど民意が自民党政治への回帰を支持したとは言い難い。
 伝統的な公共事業や補助金を頼りに再分配を進める「自民党システム」が揺らぐ中での選挙に変わりはない。同じ保守でも集権的再分配を嫌う都市政党が善戦した。自助、自立志向の強い日本維新の会が県内得票で比例第2党になった点は注目に値する。
 県関係では維新の2新人が比例復活した。結果として、県内有権者は選挙区で保険をかけながらも、時流には乗っておくという絶妙なバランス感覚を示したともいえる。国政と地域課題の間で板挟みになりがちな国会議員に求められるのも、バランス感覚であるとくぎを刺しておきたい。
 対照的に、愛媛、四国から女性国会議員が姿を消してしまう。実に心もとない。有権者の半数を占める性を代表しないまま、多様な民意は反映されるのか。疑問点が絶えない選挙であった。
 何はともあれ、政権交代可能な政治システムが定着しつつあることは証明された。愛媛の有権者の選択に畏怖の念を。当選者は痛いほど身にしみているはずだ。

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