HOMEコラム|特集|連載社説
アクリートくらぶガイドアクリートくらぶログイン
子規の一日一句愛媛の天気Yahoo!

特集社説2012年12月29日(土)

「未来の党」分裂 理念への期待裏切る背信行為

 「家風が違う」「協議離婚だ」―。衆院選直前のあわただしい「駆け込み婚」は、大方の予想通りうまく行かず、落胆すべき決着を迎えた。
 日本未来の党が、結党からわずか1カ月で分裂した。
 嘉田由紀子滋賀県知事を看板に据え、脱原発の旗印のもと、小沢一郎元民主党代表ら「国民の生活が第一」の議員が合流。第三極として衆院選を戦ったが、惨敗するや、たちまちたもとを分かった。ろくに政治活動もせず空中分解とは、有権者への背信行為に等しく失望を禁じ得ない。
 結局、党名を「生活の党」と改め、所属議員17人中15人が残る。嘉田氏は「未来」の名称を引き継ぐものの、阿部知子衆院議員と共に離党。いわば、トップが看板だけ持って追い出される形となった。
 小沢氏側にとって未来は、完全に選挙目当て、使い捨ての隠れみのだったことが露呈した。まさに「ひさしを貸して母屋を取られる」を地でいく展開。政治不信をまた深める愚行がいつまで続くのか、目を覆いたくなる。
 「脱原発」という方向性を支持し、票を投じた多くの人々の期待を裏切った罪は、重い。未来は衆院選で、選挙区299万票、比例代表342万票を獲得した。全体から見れば少なしといえども多く重たい数字に、政治家は真摯(しんし)に応える責務があるだろう。
 「選挙目当て」はまた「交付金目当て」でもある。
 年末決着を急いだ理由が、算定基準日が元日である政党交付金にあることは明らか。未来の来年分交付金は8億6500万円(共同通信試算)だが、嘉田氏側は政党要件を満たさず、交付金はすべて小沢氏側に渡る。嘉田氏の理念に期待した有権者から見れば合法とはいえ納得し難い。
 それでも、旧「生活」としては議席を大きく減らした。脱原発の世論の高まりは確かにありながら、未来が十分に受け皿になれなかったのは、イメージ頼みの選挙戦略の安直さが鋭く見透かされた結果でもある。理念は単なる飾りで、内実は「選挙互助会」ではないのか―政党政治や第三極勢力全体への疑念、批判を行動で拭えない限り、政治の信頼回復は難しい。
 未来だけでなく、衆院選で非民主・非自民の受け皿を目指した第三極勢力は、自民党の大勝によって、逆に今後、ますます役割の重要性を増したと言っても過言ではない。
 日本維新の会、未来、みんなの党の3党で比例代表は2千万票を超え、自民単独を上回った。既成政党に不満を抱える層は決して少なくない。今回の騒動を教訓とし、多様な意見をくみ上げ、政策や理念ごとに連携し、政権へのチェック機能を厳しく果たす―そんな重責を担っていることを忘れないでもらいたい。

ロード中 関連記事を取得中...
   
Copyright(c) The Ehime Shimbun Co.,Ltd. All rights reserved.
掲載している記事、写真などを許可なく転載、複製などに利用することはできません。
プライバシーポリシー著作権・リンク
愛媛新聞社のウェブサイトについてのご意見は、氏名・連絡先を明記のうえ、愛媛新聞社へ。