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'12/12/28

ラーメン店が酒提供中止決断



 飲酒運転が招く悲惨な事故は、被害者や遺族だけでなく、周りの人の心にも深い傷を残す。昨年5月、広島市安佐南区で崇徳高2年三浦伊織君=当時(16)=が、酒を飲んだ男が運転する車にはねられ亡くなった事故。「今でも情景が目に浮かぶ。飲酒運転が憎い」。現場そばでラーメン店を営む親子は、酔った客がハンドルを握ることを心配し、酒類の提供をやめた。

 安佐南区大町西1丁目のラーメン店「しまい」。店内には、三浦君の母由美子さん(42)からもらった「STOP!!飲酒運転」のステッカーや、飲酒運転防止を呼び掛けるポスターが張ってある。以前は注文を受けていた生ビールと瓶ビールは事故から約1カ月後、メニューから外した。

 店を切り盛りするのは沖ヒデ子さん(78)と長男の英治さん(59)。あの時、「ドン」という大きな音で店を出て、惨状を目の当たりにした。英治さんは近所の人と協力して伊織君の心臓マッサージをした。「ひどい状態だった。何とか助かってほしかったけど」。無念の思いは消えない。

 事故を起こした男が自分たちの店で酒を飲んだわけではない。ビール提供の中止は売り上げに響く。しかし、事故の後に来店してくれるようになった伊織君の家族と親しくなり、苦しみを目の当たりにして、「この店から飲酒運転者を出さない」と強く誓った。

 常連客から不満を言われることもあり、「苦渋の決断だった」とヒデ子さん。「飲酒運転がなくなり、安心してアルコールを提供できる社会に早くなってほしい。お客さんにも協力を求めていく」と力を込めた。

【写真説明】飲酒運転の根絶を呼び掛けるポスターやステッカーを見るヒデ子さん




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