目立たないが、日常生活や経済活動に欠かせない資源がある。半導体生産や医療機器に使うヘリウムもその一つだ。
世界的な供給不足の影響が、日本でも広がりつつある。政府と関連企業は連携し、供給の安定に努めてほしい。調達先を広げ、代替技術を開発することも必要だ。
ヘリウムは半導体や光ファイバー製造の冷却工程に使う。体の内部を画像化する磁気共鳴画像装置(MRI)や、娯楽用の風船に詰める気体など用途は幅広い。
天然ガスを採掘する際の副産物として取れるが、生産国は数カ国に限られる。日本は国内消費の全量を輸入し、その9割を米国から調達する。
工業化の進展やMRIの普及など新興国の需要が増える一方、最大の産地である米国の生産量が設備トラブルのために落ち込んでいる。今年の夏以降、日本の輸入量は3割減り、遊園地が風船販売を取りやめるなど国内供給に支障が出始めている。
工場の生産停止や、医療の現場でMRIが使えない事態を起こしてはならない。販売企業は優先度の高い分野の供給を確保し、政府は買いだめや売り惜しみが起きないよう監視してほしい。
資源の安定調達の基本は調達先の分散だ。設備の不具合やストライキなど、米国側の事情によるヘリウムの需給逼迫は過去にも起きている。調達先が米国に極端に集中する現状を見直す必要がある。
岩谷産業はカタールでヘリウムの権益を取得し、2013年から輸入する。大陽日酸はロシア産の調達を計画している。こうした取り組みを広げてもらいたい。
産出国が限られ、調達先が特定の国に集中する資源はまだまだある。自動車用の触媒に欠かせないプラチナは輸入の8割を南アフリカに、高性能電池に使うリチウムはチリに9割近くを依存する。
日本経済の弱点はいたるところに潜んでいる。こうした資源を洗い出し、非常時に備える国家戦略が欠かせない。
MRI、ヘリウム、資源、岩谷産業、大陽日酸
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