中国電力が上関町で進める原発建設計画をめぐり、反対派住民の男性(86)が中電に売却された建設予定地の山林の入会権確認を求めた訴訟の差し戻し審の判決が26日、山口地裁であった。山本善彦裁判長は「入会権の成立は認められない」として請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
山林は、中電が上関原発1号機炉心や発電タービン建屋の設置を予定している約10万平方メートルで、2004年に地元神社が中電に売却した。地元住民がこの山林を共同で使用、管理できる入会権が成立するか、山林の所有者が誰かが主な争点だった。
原告側は、地元住民がまきなどを山林に入って採取してきたとして「入会的慣行に基づいて行っており、山林の管理もしてきた」と主張。しかし、山本裁判長は「神社地として管理保全されている中で、まきの採取は黙認されていたにすぎない」と退けた。
原告側の「神社は名義人にすぎず、山林は地元住民が購入した」との主張に対し、山本裁判長は客観的な証拠がないなどとして「神社から買い受けたと認めるのが相当で、入会権が成立する余地はない」とした。
この訴訟では、07年3月に山口地裁岩国支部が訴えを却下。広島高裁は09年6月、所有権移転登記抹消などは棄却、入会権の確認については一審判決を取り消し、山口地裁に審理を差し戻していた。
判決を受けて、被告の中電側は「主張が認められた妥当な判決。地域住民が安心できる発電所を目指す」とコメントした。原告の男性は棄却されたことについて、「信じられない。人間の命は金に換えられない。最後は勝つと信じている」と話し、控訴の意向を示した。 |