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特集社説2012年12月28日(金)

上関原発訴訟 建設中止へ国策監視続けたい

 中国電力が山口県上関町で新設を目指す上関原発計画をめぐり、反対派住民が1号機の炉心予定地を含む山林の入会権確認を求めた訴訟の差し戻し審判決で、山口地裁は請求を棄却した。
 住民敗訴とはいえ、あくまで原発そのものの安全性にかかる司法判断ではない。原発推進に弾みがつくものではないことを確認しておきたい。
 現実に、中国電力の海面埋め立て工事は東日本大震災後の2011年3月から中断している。大震災に伴う東京電力福島第1原発の事故で、安全神話が崩壊した以上、原発の新増設が許されない情勢に変わりはないのだ。
 判決は「薪の採取は、神社が管理保全する土地で黙認されていたにすぎない」と、入会権を否定した。だが、裁判所が実質審理に踏み込み結論を導いた点は評価したい。一審では訴えの資格さえないと門前払いされていたからだ。
 福島の事故後、最高裁の原発訴訟に関する研究会では、それまでの反省から安全性をより本格的に審査しようという改革論が相次いだ。こうした流れを下級審で確実なものにしたい。原発にかかわる訴訟は住民の命に直結する。安全性に対する住民の不安を出来る限り取り上げ、あらゆる角度から審理するのは司法の果たすべき責任だと心得る。
 中電は09年、上関原発の敷地造成と海面埋め立て工事に着手。国の原子炉設置許可が出ないまま10月に埋め立て免許の期限を迎えた。延長申請の結論は年明けに持ち越される見通しだが、山本繁太郎知事は認めない方針だ。当然の措置として歓迎できよう。
 問題は安倍晋三首相が民主党政権の新増設禁止方針の見直しに言及している点だ。前民主党政権は新増設が計画されている全国12基のうち、着工前の上関原発を含む9基の建設は認めない方針だった。だが、原発ゼロに消極的な自民党への政権交代による政策転換の可能性が指摘されていた。結果は案の定である。
 早期原発ゼロを目指す公明党との連立政権合意では「可能な限り原発依存度を減らす」とした。だが、いつまでにどこまで減らすかは10年待たなければ具体化しないのだ。なし崩し的な建設計画の始動を許してはならない。
 原子力規制委員会はすでに2カ所の原発敷地内に活断層があると判断し、再稼働にストップをかけている。廃炉にするなら費用負担について国との協議が必要との声も業界側から出始めた。むろん危険性を見過ごして設置を許可してきた国の責任は免れない。
 結局、国民は危険にさらされたうえに、後始末の費用まで負担させられる。このことを十分認識し、新政権の政策運営を厳しく監視していかなければなるまい。

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