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投票時間、工夫の差? 繰上げ急増、理由強弁さまざま

2007年06月20日

 年金問題や憲法改正が争点になりそうな参院選で、投票権は本当に保障されているのか――。平成の大合併などを機に全投票所で繰り上げている津、伊賀、志摩市など、12市町の選挙管理委員会は「期日前投票があるから」「一部の投票所だけ繰り上げるのは不公平だ」「開票作業を早める方が重要」などと理由を説明する。一方で、開票時間を遅らせたり、離島からの船をチャーターしたりして、投票時間を極力繰り上げまいと工夫を重ねる選管もある。

 昨年1月の10市町村合併以後、全投票所で午後7時までに繰り上げた津市選管は「遠隔地だけ早く繰り上げるのは、候補者の地盤という観点からも問題。10カ所で期日前投票を午後8時までしており、投票の機会を奪っているとは考えない」。

 明和町は、01年の参院選から町内全域で投票終了を午後6時に繰り上げた。「夜間の投票者が少なく、投票所の立会人の拘束時間が長くなる」と同町選管。当初は「報道では午後8時まで投票といっている。どうなっているのか」と苦情もあったが、今はないとしている。

 投票率アップを目的に、投票時間が午後6時から同8時に繰り下げられたのは、98年6月の改正公選法の施行から。翌月の参院選の繰り上げは県内で14投票所に過ぎなかった。それから9年で35倍になった。

 公選法の改正で00年4月から、投票時間の変更に必要だった都道府県選管の承認がなくなり、届け出制に変わった。その2カ月後の参院補選では、98年参院選の3倍余りの45投票所が繰り上げられ、その後も増え続けている。

 県選管は「郡部を中心に、夜間投票の需要がそれほど多くないと各市町村選管が感じ始め、届け出制になったのを機に徐々に繰り上げているのでは」とみる。

◆離島用にチャーター船/「一票は重い」

 投票時間を繰り上げずに、何とか午後8時まで確保しようと工夫している選管もある。

 離島を四つ抱えながら、神島以外は投票時間を繰り上げない鳥羽市選管は、投票箱を開票所へ運ぶため船を4隻チャーターする。荒波に備え、県の防災ヘリだけでなく、さらに陸上自衛隊中部方面隊(総監部・兵庫県伊丹市)にも、万が一に備えて県を通してヘリを依頼したという。

 投票所が31ある紀北町は、開票所から約30キロ離れた紀伊長島区島原の三戸投票所に限って2時間繰り上げる。有権者は5人。同町は05年10月、旧紀伊長島町と旧海山町が合併、町域が広がった。しかし、開票開始を従来の午後9時から30分遅らせて、ほかは午後8時まで確保した。同町選管は「(投票時間を繰り上げないのは)自然な流れ。一票は重い」と話す。

 伊勢市は05年11月の合併を機に、04年参院選で午後6時までだった二見、小俣、御薗の旧3町村の地域も午後8時に戻した。同市選管は「夜間の投票者が少ない投票所は確かにある。だからといって、投票者を切り捨てるわけにはいかない」と話す。

◆短縮は本末転倒

 小林良彰・慶応大教授(政治学)の話 各政党の主張の差が鮮明ではなくなり、有権者の態度決定も遅くなっている。今回は改憲もテーマにもなっている。戦後60年の大選択をするのに、1〜2時間あせる必要はない。有権者にできるだけ投票の機会を与えるのが選挙の大前提のはずで、開票を早めるために投票時間を短縮するのは本末転倒だ。

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