引退を表明した松井秀喜外野手は、実はなかなか記者泣かせの存在です。こちらが二者択一の質問を用意すると、答えは決まって「両方ですね」か「どちらともいえません」。ヤンキースで活躍した2005〜06年の番記者時代、うまいコメントを引き出せずにしょっちゅう頭を抱えていました。
06年、左手首を骨折してリハビリ中のときのこと。元サッカー日本代表・中田英寿氏の電撃引退を受け、「引退」についての考え方を聞いたことがあります。中田氏のようにパッと引くか、あるいはボロボロになるまで続けるか。答えは「どちらともいえない」といった内容でした。
来シーズン、日本球界へ復帰したらそれなりの数字は残せたでしょう。余力を残したという点ではパッと身を引いた印象を受けます。一方、日本では巨人、米国ではヤンキースと常に頂点の球団での活躍にこだわったスラッガーです。現役最後の3年でエンゼルス、アスレチックス、レイズと渡り歩いた姿からは、身を粉にする執念が伝わってきました。
身体の限界に挑戦しつつも、決断するときは潔く−。6年ほど前に口にした通り、2つの選択肢の中間に答えを出した引き際でした。(報道部・久保木善浩)