福島県小野町:産廃に線量独自基準…国の半分 業者と協定
毎日新聞 2012年12月28日 02時30分
放射性物質に汚染された廃棄物の最終処分を巡り、福島県小野町が町内の産廃業者と、国の処理基準(1キロ当たり8000ベクレル以下)より厳しい「同4000ベクレル以下」とする独自基準を設ける協定を結んだ。両基準の間の廃棄物は国が処理責任を負わない一方、処分場にも搬入できなくなる。住民の不安解消が狙いだけに他自治体も追随する可能性があり、環境省は「国基準がなし崩しになれば、多くの産廃が行き場を失う」と警戒する。
名称は「産業廃棄物公害等及び放射性物質に関する協定」で、町は今年10月、町内に建設廃材の最終処分場がある業者と締結した。町の抜き打ち検査を業者が認める▽業者が無断で4000ベクレル超の産廃を処分場に持ち込んだ場合、業務停止を求めることができる−−といった内容で、自治体の同様の協定は原発事故後初とみられる。
今年1月施行の放射性物質汚染対処特措法では、8000ベクレル超は国が管理・処理責任を負う。8000ベクレル以下は「通常の産廃」扱いで、法に基づき民間業者が処分する仕組みだ。ただ、自治体に独自基準の設定を禁じておらず、町は「民間任せの処理では行政が放射能(汚染)を監視できない。住民も国基準に不安を抱いている」と協定の狙いを話す。
業者は、98年に倒産したもやし加工会社の施設を買い取り、敷地内にあった処分場の転用を10年、県に申請した。震災後の昨年11月に認可され、規制条例のない町は1年かけて業者と交渉し、協定締結にこぎつけた。
処分場には主に県内の産廃が搬入され、高濃度の放射性物質汚染も懸念される。業者は「除染ゴミや放射性廃棄物を処分するわけではないが、住民の不安解消のため締結に応じた」と話している。【栗田慎一、深津誠】
◇解説 処理進まず、住民不安反映
小野町の協定は、放射性物質に汚染された廃棄物が滞留している福島県の現状が背景にある。大量の廃棄物を間近に見て「違法処分」を懸念し、本来は処理の枠組みが異なる民間処分場への搬入にも、厳しい目を注ぐ民意が自治体を動かした。
特措法は、8000ベクレルの国基準を超す廃棄物を「指定廃棄物」とし、保管先の中間貯蔵施設ができるまで国に管理を義務づけた。しかし建設のめどが立たず、国は無期限で現地保管させている。