天然資源が乏しいといわれる我が国だが、世界有数の森林大国ということはあまり知られていない。日本列島の約7割が森林であり、国土に占めるその割合は世界2位というデータもある。一方、木材の自給率は2割代に低迷している。
菅直人首相は豊富な資源となり得る森林・林業を成長戦略のひとつに掲げて、てこ入れを行う構えだ。折しも2011年は国連の定める「国際森林年」。日本の再生策として森林と林業に注目が集まる。
国土地理院や林野庁の資料によると、日本の国土面積は3779万ヘクタールのうち森林面積は2512万ヘクタールで、国土の森林率は66%に上る。国連食料農業機関(FAO)のデータでは、日本の森林率はフィンランドに続いて世界第2位。3位はスウェーデン、4位韓国、森林大国のイメージがあるロシアは47・9%と5位となっている。
さらに、毎年森林は増え続けている。日本の木の蓄積量は、95年の約35億立方メートルから02年には約40億立方メートルに増加し、07年には約44億立方メートルとなった。平均すると毎年約7900万立方メートル増え続けていることになる。これに対して、国内の木材需要は約6475万立方メートル(09年)だから、理論上は国内自給率100%を達成してもまだ成長を続けることになる。
この背景には、戦後植林した人工林が増え続けていることがある。山間部に出かけると、スギ、ヒノキといった針葉樹林ばかりの人工林をよく見かける。 「森林・林業白書」(09年)によると、66年の「天然林」は1724万ヘクタール、「人工林」は793万ヘクタールだった。それが07年になると、天然林は1475万ヘクタールと減少したのに対し、人工林は1035万ヘクタールと大幅に増加した。1000万ヘクタールを越え、約30%も増えている。
これは、敗戦直後や高度経済成長時代の木材不足に対応するために植林した木々が成長したことを示す。つまり、苗から育てた樹木がいよいよ「刈り入れ」の時期に入ったということだ。だが、増えているということを裏返せば、「木を切っていない」「有効に利用していない」ということにもつながる。刈り入れ時にも関わらず伐採できていないことが日本の森林林業の課題なのだ。
では、なぜ伐採しないのか。1960年前後から高度経済成長期にかけて、国内の木材需要を賄うために木材輸入の自由化が始まり、64年には全面自由化となった。安価で安定的に供給できる外国産材が輸入され、輸入量は年を追うごとに増加した。
一方、国内の林業の現場では、専用の林道の未整備などで機械化が遅れ、大規模集約化と生産性の向上が進まなかった。高齢化や従事者の減少も拍車をかけた。
国や地方自治体も有効な手だてを打てないままに推移し、長期にわたる低迷が決定的となった。国産材の価格は80年をピークに落ち続けた。林野庁の調査では、08年のスギ丸太の価格は、1立方メートル当たり1万2200円だが、運搬費などの経費を引くと、粗収入は80年のわずか2割程度1000~4000円台まで落ち込んだ。
また、林業経営者の08年度の収益は178万4000円で、経費を差し引くとわずか10万3000円を残すのみとなる。生活ができるレベルではない。
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