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【経済】

延命策 尽きる中小 延長金融円滑化法、3月末で終了

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 貸し付け条件の変更に努めることを金融機関に義務付けた「中小企業金融円滑化法」が来年三月末で終了する。「融資の引き揚げなど金融機関が手のひらを返せば中小企業の倒産・廃業が続出する」。商工団体などからは影響を懸念する声が上がる。国の政策変更に振り回された中小企業が厳しい立場に追い込まれている。 (編集委員・鈴木俊朗)

 「三年後には五十万社ぐらいの中小・零細企業が消えてなくなる」−。東京都内のNPO法人が豊島区で開いたセミナー。経営者らを前に講師は「既に金融機関は救うべき企業と見捨てる企業の選別に入っている。融資条件は厳しくなる」などと奮起を促した。

 受講者の一人で、都内で理化学機器などを扱う商社を営む六十代の男性は、借入金の返済条件の緩和を三つの金融機関に申請。いずれも一年間は金利分だけ返済することを認められた。だが、その最終期限も来年九月に迫る。「期限後、金融機関はどう出てくるか不安」と打ち明けた。

 金融庁によると、円滑化法に基づき中小企業が貸し付け条件の変更を受けたのは、今年九月末時点の累計で約三百四十四万件。返済猶予額は約九十六兆円に上る。円滑化法は二度の期限延長で倒産防止に効果があった半面、競争力のない企業まで延命させたとの指摘もある。

 こうした中、貸し付け条件変更後の倒産が今年後半から増えている。帝国データバンクによると制度利用後の倒産は二〇〇九年十二月から今年十一月末までで五百七十八件。今年は昨年(百九十四件)の二倍以上になる可能性が高いという。

 中塚一宏金融担当相は先月、「期限切れ後も金融機関に条件変更に応じるよう促す」と金融業界に企業の資金支援に積極的に取り組むよう要請した。

 ただ、東京商工会議所が六月、円滑化法終了後の対応に関し、会員の金融機関に行ったアンケート(百五十九店舗が回答。複数回答可)では、約44%が「代位弁済の請求(保証協会に一括返済を請求)」、約37%が「金利の引き上げ」を挙げた。中小企業が置かれた「現実」は厳しい。

 墨田区で印刷会社を四十年以上営む七十代の男性は最盛期に月三百万円あった売り上げが一時、十五万円に激減。借金は円滑化法で金利分のみになり一億一千万円から三千万円に減ったが、それでも「もう金利さえ払えない」。金融機関に柔軟な対応を訴える。

<中小企業金融円滑化法(返済猶予法)> 2008年9月のリーマン・ショックなどによる資金繰り悪化を受け、09年12月に施行。中小企業や住宅ローンの借り手から返済猶予などを要請された場合、金融機関に貸し付け条件の変更に応じるよう努力義務を課した。当初は11年3月末までの時限立法だったが、経済環境が改善せず、適用の期限が2回延長された。

 

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