共同原盤契約書
レコード会社名 (以下、甲といいます)と 原盤制作者名 (以下、乙といいます)は、乙に所属するアーティスト、 アーティスト名 (以下、アーティストといいます)の原盤制作に関し、次の通り契約を締結します。
第1条(用語の解釈)
1.この契約において使用される用語については、それぞれ次の通り定義します。
@実演:歌唱、演奏、口演、朗詠、その他一切の芸能的な行為をいいます。
Aレコード:あらゆる速度、大きさ、タイプのコンパクト・ディスク(CD)、アナログ・ディスク・レコード、音楽テープ、デジタル・オーディオ・テープ(DAT)、その他現在実用化されており、または将来新たに開発されて実用化されるようになる一切の形式、構造、素材の録音物をいいます。
Bビデオ:あらゆる速度、大きさ、タイプのビデオ・カセット、ビデオ・ディスク、DVD、その他現在実用化されており、または将来新たに開発されて実用化されるようになる一切の形式、構造、素材の録画物をいいます。
C音楽配信:自動公衆送信装置(これと同様の効果を生じさせるあらゆるタイプの装置および配信設備を含みます)を用いて音声、影像、文字、その他の情報を公衆に送信することをいい、衛星設備を利用した音楽配信を含みます。
Dレコーディング:レコード、ビデオまたは音楽配信を目的として、アーティストの実演を原盤に固定することをいいます。
E原盤:アーティストの実演、伴奏効果音、背景音等を収録した磁性テープ、その他将来開発され得る一切の固定媒体で、レコードまたはビデオの複製・頒布あるいは音楽配信に適すると甲が認めたものをいいます。
F本件原盤:本契約に基づいて制作された、アーティストの実演をレコーディングした原盤をいいます。
G特販用レコード:レコードクラブ、通信販売、訪問販売、機器添付用、出版物添付用レコードのことをいいます。
2.その他の用語の解釈については、著作権法(昭和45年法律第48号)の規定に従うものとします。
第2条(目的)
1. 甲乙は、本契約期間中、アーティストによる実演を独占的に収録して、本件原盤を継続的に共同で制作するものとします。
2. 甲は、本件原盤をレコード、ビデオ、音楽配信その他の目的に独占的に利用するものとします。
第3条(権利の帰属)
1. 本件原盤に係るすべての権利(所有権、レコード製作者の有する一切の権利、アーティストの実演に 係る一切の権利を含む)は甲乙の共有とします。なお、甲乙の権利の持分比率は1/2ずつとします。
2. 乙は甲に対し、乙が保有する本件原盤に係るすべての権利(所有権、レコード製作者の著作隣接権、アーティストの実演に係る著作隣接権を含む)を地域、期間、範囲の何等制限なく独占的に譲渡します。
3. 甲は前二項により、本件原盤の全部または一部を独占的に利用してレコード、ビデオその他を複製し、これに適宜の商標を付して、国内・国外を問わず、自由に頒布し、または音楽配信することができるものとします。
4. レコード、ビデオおよび音楽配信の種類、価格、発売日、販売方法その他一切の事項については、甲乙が協議の上、決定するものとします。ただし、レコードおよびビデオの数量については、甲乙が協議の上、甲が決定するものとします。
5. 甲が第三者に対して、本件原盤の全部もしくは一部を譲渡または使用許諾する場合、甲は乙から事前に書面による承諾を得るものとします。
第4条(原盤制作)
本件原盤の制作について、企画立案、著作物の選定、伴奏実演家の指定、収録の日時・場所その他一切の事項については、甲乙が協議して取り決めるものとします。
第5条(原盤制作費)
1. 本件原盤の制作に関する諸費用(アーティスト以外の演奏・歌唱者の演奏料、スタジオ使用料、ミキ サー料、編曲料、テープ編集料、写譜代、テープ代等一切の費用をいいます)は甲乙が各1/2を負担します。
2. 乙が負担すべき原盤制作費を甲が立替払いを行った場合、甲はその負担分を乙に請求し、乙は請求書の受領日の翌月末日までに甲に支払うものとします。
第6条(原盤印税)
1. 甲は乙に対し、第3条第2項に基づく本件原盤に係る権利の譲受の対価として、本件原盤の著作隣接権存続期間中(ビデオの場合は著作権存続期間中)、本件原盤を使用して複製・頒布されたレコードについて、下記により算出された原盤印税を支払うものとします。
(税抜小売価格−容器代) × 印税率
2. 容器代は税抜小売価格の10%とします。
3. 原盤印税の計算対象数量は、甲の営業所出荷数量の90%とします。ただし、特販用レコードについては、甲の納入数量の95%とします。
4. レコードに本件原盤とそれ以外の原盤を併用した場合の印税は、かかるレコードに収録されている原盤数により比例按分されるものとします。
5. ビデオの条件は、アーティストの音(歌唱)および影像を同時に収録する場合の条件とし、本件原盤をBGM音源として使用するビデオについては、第1項に規定する印税率の1/2とします。
6. 共演者の印税、プロデューサー印税、その他本件原盤の制作に関わった者に対する印税がある場合は、その負担について甲乙が別途協議の上、決定します。
7. サンプル盤、寄贈用等、販売促進のために使用され、甲が収入を得ないレコードまたはビデオについては、印税支払いの対象外とします。
8. 音楽配信に係る原盤印税については、甲乙が別途協議して取り決めるものとします。
第7条(アーティスト印税)
1. 甲は乙に対し、本件原盤に収録されているアーティストの実演に係る権利の譲受の対価として、本件原盤の著作隣接権存続期間中(ビデオの場合は著作権存続期間中)、本件原盤を使用して複製・頒布されたレコードについて、下記により算出されたアーティスト印税を支払うものとします。
(税抜小売価格−容器代) × 印税率
2. アーティスト印税の算出方法は、前条の規定を適用するものとします。
第8条(第三者使用)
甲が第三者に本件原盤の使用を許諾した場合には、第三者より得た収入の60%相当の金額を乙に支払 うものとします。なお、これにはアーティストへの対価が含まれているものとします。
第9条(支払方法)
甲は、四半期毎(3月、6月、9月、12月各末日締切)に印税の発生額を計算し、各締切後、翌々月末日に印税計算書を乙の指定する住所に送付の上、乙の指定する下記の銀行口座へ支払うものとします。なお、甲は各四半期における支払印税額が金1,000円未満の場合、翌期に繰り越して支払うことができるものとします。
銀行 支店 預金
口座名義 口座番号
第10条(消費税)
甲は、本契約に定める乙に対するすべての支払いに際して、法律に定めるところにより、消費税を加 算するものとします。
第11条(著作権使用料)
本件原盤に収録された音楽著作物の甲の複製に係る著作権使用料は、甲が負担します。
第12条(二次使用料等の配分)
1. 第3条2項にかかわらず、放送および有線放送の二次使用料請求権ならびに貸与権、貸与報酬請求権、私的録音録画補償金請求権あるいは将来新たに実演家またはレコード製作者に付与される報酬請求権等に基づく使用料の配分については、乙またはアーティストが加入している団体の取決めに従うものとします。
2. 乙またはアーティストが加入している団体によって、レコードに収録された実演に対する放送用録音およびインタラクティブ配信にかかる録音権または送信可能化権の集中管理が行われ、かつ、乙またはアーティストが当該団体に権利委任をする場合、これらの使用料の配分については、当該団体の取決めに従うものとします。
第13条(アーティストの肖像等の利用)
甲または甲の指定する者は、その製造または販売するレコード、ビデオ等の添付物(歌詞カード、ジャケット、解説書等)および広告・宣伝のために、アーティストの氏名、芸名、肖像、筆跡、経歴等(以下、名称等といいます)を無償で自由に使用することができるものとします。ただし、甲は名称等の使用の際に、アーティストのイメージを損なうことのないよう十分留意することとします。
第14条(ビデオ用原盤)
1. アーティストの実演が収録されたビデオ用原盤については、本契約の対象とするものとします。
2. 前項にかかわらず、アーティストの実演を収録したプロモーション・ビデオについては、甲の責任と負担において甲が製作するものとします。ただし、その内容、予算および収入の配分については、甲乙が事前に協議して取り決めるものとします。
3. アーティストの実演を収録したビデオ(ライブビデオを含む)の発売、頒布に関する経済的条件に関しては、甲乙が別途協議して取り決めるものとします。
第15条(保証)
1. 甲乙は、本契約を締結するに必要かつ十分な権利、権限および能力を有し、本契約に関していかなる第三者からも異議がなされないことを互いに保証します。
2. 乙は甲に対し、乙がアーティストの実演に関する著作権法上の一切の権利(著作隣接権、二次使用料請求権、貸与報酬請求権、私的録音録画補償金請求権を含みます)を有し、本契約を適法に締結する完全な権限を有することを保証します。
第16条(契約期間)
1. 本契約の有効期間は、本契約の締結日から最初のレコードの発売日まで、および当該発売日以降2年間とします。
2. 本契約の期間満了の3ヶ月前までに、甲または乙のいずれかが相手方に対して文書による本契約の終了・変更等の意思表示をしない限り、本契約は同一条件にて1年間自動的に更新し、その後も同様とします。
第17条(契約地域)
本契約の適用地域は全世界とします。
第18条(契約終了後の取扱い)
1. 本契約終了後3年間は、乙はアーティストに本契約に基づいて実演した著作物と同一の著作物について、甲以外の第三者が行うレコードまたはビデオの複製、頒布を目的としたレコーディングのための実演をさせないものとします。
2. 本契約の終了は、甲および乙が本契約期間中に本契約に基づいて取得した一切の権利には何らの影響を及ぼさないものとします。
3. 前項にかかわらず、乙は甲に対して、甲によって本契約期間中に利用されなかった本件原盤について、乙が当該原盤に係る印税受領債権を放棄することを条件として、当該原盤の制作費のうち、乙の負担分の償還を請求することができるものとします。
第19条(権利譲渡)
甲乙は本契約に基づいて取得した権利あるいは契約上の地位の全部または一部を相手方の書面による承諾なしに第三者に譲渡または質入することができないものとします。
第20条(契約違反)
甲乙のいずれかが本契約に違反した場合、他方当事者は相当の期間を定めて催告のうえ、それでもなお当該違反が是正されない場合には、本契約を解除することができます。また違反者は、他方当事者に対しその損害の一切を賠償する義務を負うものとします。
第21条(裁判管轄)
本契約に関する一切の訴訟については、東京地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とすることに合意します。
第22条(信義則)
甲乙は、本契約に定められた各条項を、信義をもって誠実に履行し、本契約に定めなき事項および本契約の各条項の解釈に疑義が生じたときは、法令の定めによるほか、誠意をもって協議し、その解決にあたるものとします。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名捺印の上各1通を保有します。
年 月 日
甲
乙