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「引きこもり」するオトナたち
【第133回】 2012年12月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
池上正樹 [ジャーナリスト]

「将来が怖い」と不安がる声が続々
自民党政権誕生に脅える人々の叫び

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 今回の衆議院総選挙の結果を受けて、不安定になっている人たちがいる。

 筆者は、周囲の当事者の様子を見ていて、「炭鉱のカナリアに似ている」と、誰かが引きこもる人たちについて表現していたことをふと思い出した。そんな本人たちが「将来が怖い」などと不安がっているのだ。

「生活保護1割削減」に脅える女性

 自分の特性などから仕事に就けず、生活保護を受給しているという首都圏在住の女性は、「生活保護が1割削減されるという噂がある。また、現金ではなく、フード券などの現物支給になるとの話も出ています。そうなると“フード券使えます”というステッカーが貼ってある店を見つけなければならず、店の人にも(受給者であることを)知られることになる」と、脅える。

 また、いまアルバイトしている、都内在住の元引きこもり当事者の男性は、「最低賃金をなくすという流れになるんじゃないかとも感じられて、恐ろしい」と話す。

 さらに医薬品についても、生活保護受給者には原則的に、価格の安い「ジェネリック(後発医薬品)を使用すべきだ」という提言が、今年11月、政府の行政刷新会議の「事業仕分け」でも示されたばかり。すでに、以前から、厚労省は各自治体に、生活保護受給者への投薬にジェネリックを使用するよう指導していて、この義務付けは自民党政権によって加速するものと思われる。

憲法9条改正問題のドサクサに紛れて
生存権が脅かされるのではないか

 「ここ最近、怖いんです。役所の人が怒るんですよ。うつになりそうです」(当事者自助グループの関係者)

 1年ほど前、「発達障害的な特性から会社を辞めざるを得なかった」という関西に住む30歳代の男性は、いまも失業集で、このところ落ち込んでいるという。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。最新刊は『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。他に『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)など。


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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