「景気が大事だと言っても、“引きこもり”など、いまの社会に生きづらさを感じている人たちの問題は、自民党政治が続けてきたような旧来型の価値観がベースだとしたら、解決できないと思っている。だから“取り戻そう”という言葉を聞くと、げんなりします。
憲法改正も、9条の問題より、基本的人権の生存権が脅かされるほうが怖い。日本は元々、生存権を企業に依存しすぎてきたせいで、こういう生活障害が大量に生まれてきたと思っています。9条ばかり騒がれますが、ドサクサ紛れにコソッと生存権が脅かされそうな流れになっていて、何か気持ち悪いんです」
これまで長年、自民党政権のつくってきた日本のシステムの結果が、時代の流れとともに、歪みや格差を助長して、生きづらさを感じる人たちを数多く輩出してきた面は否めない。
そんな人たちにとっては、2009年の政権交代で世の中が変わると期待していたら、その後の体たらくによって、民主党への幻滅が広がってしまったのだ。
かといって、自民党総裁の「取り戻す」というフレーズは、かつての自分の状況とオーバーラップして、「悪夢のささやきのように響いた」と話す人もいる。民主党に幻滅を感じる一方で、自民党時代に戻したくない人たちの票が、2党以外の各党に分散してしまったようなのだ。
「引きこもり問題を解消するには、国が国民の生活を保障して、富める人から貧しい人に利益の再配分をする、そして、あらゆる層の国民に公平なセーフティネットをつくるべきだと思うんです。しかし、それができない今は結局、経済力のある個人の家庭のなかで引きこもり当事者を抱え、家庭内で利益の再配分が行われてしまっている。本来、国は彼らが自立できるように雇用などのセーフティネットを充実しなければならないのに、経済力のある家庭に依存している。そういう国が、(引きこもりを抱える)家庭を問題視すること自体、責任転嫁だと思うんです」(前出の男性)