河北春秋

 仙台朝市(青葉区)を通り抜けると、年の瀬を肌で感じる。威勢のいい呼び声が飛び交う中、歳末や正月用に生鮮食料品を買い求める客が、肩を擦れ違わせて行き交う▼通りを眺めていると、震災直後の光景がよみがえってくる。一部の店舗が、なけなしの野菜や冷凍品を放出してくれた。リュックを背負って、長い列の末尾に並んだことを昨日のことのように思い出す

 ▼店舗に挟まれた一角で、地元の大学生3人が津波被害を受けた若林区の農家が作った有機野菜を販売していた。震災復興・地域支援サークル「ReRoots(リルーツ)」が週に一度開くショップ▼サークル名は英語の「再生」「根源」などの造語だ。農地の再生だけでなく、震災という原点を忘れないとの意味が込められているという。朝市が場所の無償提供を申し出て、11月から営業している

 ▼野菜は被災者と一緒に、がれきなどを取り除いた畑で育てたものばかりだ。一人は「味にほれ込んだリピーターもできました。来年はコメができるので、売りたい」と張り切る▼若者たちが地域に根を下ろし、復興に向けて足元を耕していく。消費者への橋渡しを手助けするのは震災で底力を見せた仙台朝市だ。人の輪を養分に再生の根は太く、深く張り出す。

2012年12月28日金曜日

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