村田英雄さん、北島三郎を育てた　西川幸男さん死去

　村田英雄さんや北島三郎（７６）をスターに育て上げた老舗芸能プロダクション「新栄プロダクション」の西川幸男（にしかわ・ゆきお）会長が２６日午前５時２分、間質性肺炎のため都内の病院で亡くなった。８７歳。千葉県出身。２９日に身内だけで密葬し、来年に本葬を執り行う。喪主は同社社長で歌手の長男、山田太郎（本名・西川賢）。

　関係者によると、西川さんは風邪のような症状が改善しなかったため、１７日に検査入院。肺炎であることが判明し、点滴治療を続けてきたが、病魔には勝てず帰らぬ人となった。

　西川さんは少年時代にラジオから流れてくる浪曲に魅了され、木村友衛に弟子入り。浪曲師として活動したが、同時に師匠のマネジャーとしての才能を開花させていった。やがて興行師として独立することを決意し、芸能プロダクション「西川興行社」を設立した。

　しばらくは苦労の日々が続いたが、１９４９年に転機が訪れた。西川さんのもとに次の内容の手紙が届いた。「東京へ上がりたい。しかしわたしには相談する相手がいない。そこであなたに聞く。イエスかノーか。はっきりした返事がほしい」。送り主は浪曲師の酒井雲坊。後に歌謡界の大スターとなる村田英雄さんだった。

　西川さんは酒井を九州から単身上京させ、「村田英雄」に改名。浪曲から歌謡界へ転身させた。５８年に、西川興行社も社名を「新栄プロダクション」に改め、新たなスタートを切った。

　すると６１年１１月、村田さんの「王将」がミリオンセラーとなり、翌年に第４回日本レコード大賞特別賞を受賞。その後も、西川さんは北島三郎、新川二朗、大月みやこ、仁支川峰子（当時は西川峰子）、小松みどり、藤圭子、二宮ゆき子らを芸能界に送り出した。自身の息子にも「山田太郎」の芸名を与えてデビューさせた。８５年に西川さんは新栄プロダクションの会長となり、山田が社長に就任した。

　山田の母にあたる最初の妻と離婚後、６５年に所属タレントの五月みどり（７３）と再婚したが６年後に離婚。その息子にプロゴルファーの西川哲（４４）がいる。また、北海道に北島三郎と競走馬を育てる「北西牧場」（現ウエスタンファーム）を共同設立。「ウエスタン」の冠号で知られる馬主でもあった。

　五月みどりは、本紙の電話取材に「早朝に息子から訃報が入り、昼ごろに（故人と）会ってきました。あんなに静かな彼の顔は初めてで、顔をなぜて『お疲れ様』と声をかけてきた。お見舞いにいけなかったのが残念です。３日前には意識があったというのに…」と声を震わせた。

　離婚後も「息子がいたので別れてからも、よく会っていた。息子は桃ちゃん（離婚した女優の菊池桃子）を連れて、よくパパの所に遊びに行っていたし、彼も２人を応援していました」という。

　わずか６年で、西川会長との結婚生活にピリオドを打った五月。「私が２２、２３歳のころかしら。彼は村田英雄さんのマネジャーとして社長として、業界のやり手でしたからね。おとこ気のあるところにひかれて一緒になったけど、当時の芸能界を引っ張っていた人ですから、それなりに厳しくてついて行けなかった。だから、別れた後の方がいいお付き合いができたと思う」と振り返った。

　「仕事が好きな男っぽい昔の人。本当は自分が歌手になりたかった人だから、この仕事に没頭できたんですね。歌い手にはやさしいけど、社員には厳しくて、彼にしごかれ育てられた社員は独立後に成功した人が多い」と、西川さんの足跡をしのんだ。

　◆北島三郎（７６）の話　西川さんは自分がプロの世界に入って出発するにあたり、最初の道しるべとなっていただいた方です。とてもおとこ気があり、器の大きい方でした。仕事面以外でも、馬主として競走馬を持つようになったのも西川さんの紹介があってのことでした。北島三郎を作ってくれたのが、船村徹先生、星野哲郎先生、そして世に売り出してくれたのが西川さんでした。教えてもらったことを大事に頑張っていきたいと思います。見守ってほしいと思います。

　◆大月みやこ（６６）の話　私、大月みやこの歌の世界をスタートさせて下さり、胸ときめかせて過ごすことができた時間を、情熱を持って作っていただけた恩人です。この後もお力を借りてすばらしい日本の歌謡曲をめざしたく思っていた矢先のことで、とてもとても残念です。まだまだご恩返しができていない自分ですので言葉が見つかりません。