わかる?:公立図書館、広がる民間委託 個人情報管理に懸念も
毎日新聞 2012年12月20日 西部朝刊
全国の公立図書館の運営を書籍販売企業などに委託するケースが広がっている。サービス向上と効率的な運営、経費削減などが主な狙いだが、CD・DVDレンタル大手「TSUTAYA」の運営会社に来春から委託する佐賀県武雄市では、同社独自のポイントカードを図書館利用カードにも使う予定で、個人情報保護への懸念も指摘されている。図書館の民間委託の背景や現状を探った。【竹花周、早田利信】
武雄市の市図書館は来年4月から「TSUTAYA」の運営会社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、東京都渋谷区)が初めて図書館の指定管理者を務める。委託に伴う改装工事のため、11月1日から休館中だ。
4月からは年中無休で開館する予定で、館内に大手コーヒーチェーンを出店させるなど新しい試みも関心を呼ぶ。市民アンケート(1120人)では7割強が「期待する」と回答した。
CCCへの指定管理委託費は5年間で計5億5000万円。現在は年間約1億4500万円といい、2割以上の運営費削減となる。自治体にとっては、指定管理者制度を導入する最大の利点がこの費用削減だろう。一方で、懸念材料も指摘されている。
一つは、CCCのポイントカード「Tカード」を図書館利用カードに導入し、本を借りるとポイントがつく点だ。ポイント付与の費用はCCCが負担するが、レンタル情報などTカードに記録された個人情報は、Tカードを利用する複数の企業が共有することになる。これが「貸し出し履歴が企業などに漏れるのではないか」などの指摘や苦言につながり、社団法人・日本図書館協会なども懸念を示した。
市とCCCは、従来の利用カードも残してTカードとの選択制とすることなどで対応することとしたが、9月には日本文芸家協会が「ポイントを付与することは青少年の私欲を刺激する」と問題提起。市は1日当たりの付与ポイントに上限を設けることなどで懸念を払拭(ふっしょく)しようと躍起だ。
一方、委託される企業にとって図書館運営は魅力のようだ。日本図書館協会によると、運営を指定管理者に委ねる図書館は年々増え、11年度は全公立図書館の9・3%に当たる296館で、うち205館を民間企業が運営する。