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高橋と羽生が振り返る名勝負の裏側。全日本フィギュア男子、激闘の2日間。

Number Web 12月27日(木)11時1分配信

 メンタルの重要性が浮き彫りになった試合だった。

 真駒内で開催されたフィギュアスケートの全日本選手権。男子は12月21日にショートプログラム、22日にフリーが行なわれたが、あらためて、そう感じさせる結果となった。

 グランプリファイナルを制した高橋大輔、2位の羽生結弦、5位の小塚崇彦、6位の町田樹。さらにフランス大会で優勝した無良崇人、昨シーズンの故障から復帰を果たした織田信成ら、一段と層の厚くなったのが男子だ。2013年3月にカナダで行なわれる世界選手権代表選考がかかった大会は、厳しい戦いが予想された。

 その中で、表彰台の真ん中に立ったのは、羽生だった。

 羽生は、ショートプログラムで非公式ながら今シーズンの最高得点となる97.68点を出していた。結果的に、ここで高橋に9点以上の大差をつけたことが勝因となり、285.23点で優勝したが、実はショートは緊張で足が震えるほどだったと言う。その中で、緊張をクリアした理由を聞かれると、こう答えた。

「(ブライアン・)オーサーコーチの言うことを聞いていればなんとかなると、コーチを信じてやりました」

 優勝後にも、こう語った。

「(コーチは)試合に対するペース配分がうまいなと感じています。6分間練習とか公式練習とか、自分のことをすごくコントロールしてくれます」

■圧巻の演技でフリーでは1位をもぎ取った高橋。

 もともと負けず嫌いで、気合いと闘志を前面に出すのが羽生である。ときに、それが災いすることもあっただろう。その部分をコントロールしてくれる存在があったことが、精神面でも好影響をおよぼしている。

 総合2位ではあったものの、圧巻の演技でフリーでは1位だった高橋は、ガッツポーズで、自身がつかんだ手ごたえを表した。

 それだけの演技ができた理由をこう振り返った。

「いつも気持ち、気合いは入っていますが、今シーズンの中でいちばん気合いが入ったと思います。ショートであれだけ点数を離されてしまったので、思い切りやるしかないというのもありましたし。悔しい部分もあったと思いますので……いつも以上に気合いが入っていました」 

 悔しさが、強いモチベーションになったのだ。

■ショートで羽生、フリーで高橋、互いに譲らぬ名勝負!

 演技中は、声援も後押しになったと言う。

「お客さんの気持ちも伝わってきましたし、それに返せるように思い切り自分を出せました。ちょっとテンションが上がりすぎて、後半のコレオステップが早く始まってしまったのが若干残念な部分ではあったんですけど(笑)。気合いが入りすぎてのミスだったので悪くはないかなと思っています」

 ショートでは羽生が1位、フリーでは高橋が1位と、ともに譲らない名勝負を生み出すことになった。

 3位に入ったのは無良だった。

「全日本、また崩れるんじゃないかという不安もあったけれど、払拭できてよかったと思います」

 払拭することができた理由に、グランプリシリーズのフランス大会での優勝をあげた。

「ここまで緊張してもこれだけできるんだ、と自信になりました」

 勝つことで得られたものの大きさを示している。

■「慢心」の織田、「不安」の町田、「怪我」の小塚。

 織田は、ショート5位でフリーを迎えた。

 滑り出しは上々だった。冒頭、4回転トゥループに成功する。だが、トリプルアクセル2つでミスが出た。そして総合4位で大会を終えた。

「4回転はショートでも失敗していて、成功させたいなと思っていたので、決まった瞬間に緩んでしまったかなと。2回のトリプルアクセルは練習でもミスしたことがなかったので、慢心があったと思います。緊張感を維持できなかったというか、これで大丈夫だと思ってしまったというか。体力的にもそうですけど、精神面のトレーニングも大切だと思いました」

 9位に終わった町田は調子が上がらず、不安をたくさん抱えての試合だったと言う。それがそのまま、演技に反映される形となった。

 5位に終わった小塚は様相が異なる。

 大会を前に、右足に怪我を負っていたのである。

 当の本人は、その影響について問われると「一切言いたくありません」と硬く口を閉ざす。佐藤信夫コーチからは「柔道の山下さんは骨折しながら戦った。それに比べたらたいしたことはない」と送り出されたと言うのだが……。

■「悔しい、悔しい、悔しい……」小塚の無念が募る。

 詳細は、「言い訳にはしません」と一切明らかにしなくても、小塚の演技の内容を見れば影響は明らかだった。

「初日のショートは時間が短いのでなんとかなりましたけど、フリーは……」

 無念だったろう。

「とにかく悔しいです」

 何度も、悔しい、と口にした。

 こうして世界選手権代表は、表彰台に上った羽生、高橋、無良に決まった。

 レベルの高い中でしのぎを削り、その中で気持ちも揺さぶられた2日間。代表に選ばれた選手にとって、また一つ、財産となっただろう。代表になれず悔しい思いをした選手たちも、その苦さはきっと糧となりえる。今後へと活かすことができれば、ひとまわり成長できるはずだ。

 シーズンは後半、佳境へと向かう。

 残るシーズン、あるいは来シーズンへと、選手たちはそれぞれに進んでいく。

(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)

最終更新:12月27日(木)11時1分

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