社説
第2次安倍内閣/国民と蜜月を築いてこそ
総選挙には大勝した。だが、3年前の下野と5年前の政権投げ出しを思えば、雪辱はむしろこれから。党にとっても、個人にとっても、二重の意味でリベンジの船出となる。 自民党の安倍晋三総裁がきのう首相に選出され、第2次安倍内閣を発足させた。 衆院選公約で掲げた「デフレ脱却と日本経済再生」が最優先の政策テーマとなる。 成長重視を唱える「アベノミクス」を市場が好感。経済界とは早くも「ハネムーン(蜜月)」の関係を築いた。 だが、それが中長期的に民生の向上という形で還元されない限り、期待は尻すぼみに終わるだろう。東日本大震災の被災地では、とりわけ生活再建が喫緊の課題であることを新政権は肝に銘じてほしい。 総裁選で争ったライバルを閣内に取り込み、首相経験者を重要ポストで遇した。側近を官房長官や経済再生相に起用し、「安倍カラー」を打ち出しやすい布陣にした。 政策遂行能力を高めるため、政権の要所にベテランや政策通を配置。一方で、党三役に初めて女性2人を登用したのは「新生自民党」を印象づけるとともに、来年夏の参院選に向けて挙党態勢を構築する狙いがある。 首相は憲法改正をライフワークとしている。ただ、参院では改憲に必要な3分の2以上の議席数に遠く及ばず、政権が安定軌道に乗るまでは「安全運転に徹する」としている。 当面は景気や雇用など、国民の関心が高い政策課題に傾注することでポイントを稼ぎ、参院選に臨む考えだ。 大規模経済対策として10兆円規模の2012年度補正予算を組むことで連立相手の公明党と合意している。老朽インフラの改修や防災に重点を置いた公共事業中心の編成となる予定。 公共事業費の自治体負担のほとんどを国が肩代わりする臨時交付金の創設も検討されているが、国債の増発は避けられず、財政再建が遅れる恐れもある。 首相のブレーンで、内閣官房参与に就く浜田宏一エール大名誉教授が戒めているように「大盤振る舞い」は危険な賭けだ。 東北からは根本匠元首相補佐官(衆院福島2区)が復興相に、小野寺五典元外務副大臣(衆院宮城6区)が防衛相、森雅子元副幹事長(参院福島選挙区)が少子化担当相として、それぞれ初入閣した。 復興は遅々として進まず、被災者の疲労の色は濃い。復興庁の運営の在り方を含めて、再検討する時期にきている。 緊張が続く東アジア情勢。安倍首相は集団的自衛権行使を禁じる憲法解釈の見直しに前向きだが、慎重論も根強い。 出生率が頭打ち傾向を見せる中、女性が産み育てる環境をどう整備するのか。家族の多様化が進む中、実効性ある子育て支援策は待ったなしだ。 いずれも、今後のわが国の針路を左右する重要課題を担うポストだ。被災地選出の議員として、存在感を発揮してほしい。
2012年12月27日木曜日
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