『イルミナシオン』に載る上祐史浩氏へのインタビューの冒頭を公開します

インタビューの冒頭部分を掲載しておきます

 

――――

はるしにゃん こんにちは。はるしにゃんと申します。大学生です。

上祐史浩 ここへはどういうきっかけで来たの?

はるしにゃん 僕は哲学科なのですが、もともと宗教というものに非常に興味を持っていたんですね。オウム真理教というのは単なる一事件ではなく、現代の社会病理だったと思うんですよ。それで元幹部である上祐さんにお話を伺おうと思いまして。

上祐史浩 なるほど。なにか訊きたいことがあればお話しますよ。

はるしにゃん このあいだの坂口恭平さんと上祐さんのニコ生での対談を拝見しました。非常に面白かったです。坂口さんというのもとてもすごいかたなのですが、ネットでの評判を見ますと「上祐さんすごい!」という感じで、上祐さんがかなり圧倒していたと思うんですよ。

上祐史浩 彼というのは長らく躁鬱病を患っていたんだけど、それからよく立ち直ってきた人で、もう少し時間が経ったら、もっと知性が磨かれるんじゃないかな。

はるしにゃん 厳しいですね(笑) たしかに坂口さんというのは論理の人というより感性の人ですよね。

上祐史浩 やっぱり躁鬱から立ち直ってくるという際に、「気持ちで生きてく」っていうのがあったんじゃないかな。対談の最中に「この人、短命型かも」という心配があった。織田信長のように、若い頃に燃焼しつくしちゃって、長く息が続かないのが心配です。彼は、僕の後輩で、早稲田の理工学部なんだけど。

はるしにゃん 上祐さんは早稲田で人工知能の研究をしていらっしゃったんですよね。わりとオウム真理教って理系の信者が多かったと聞きますが。

上祐史浩 そうだね。途中から教祖の方針で科学分野を強くするというのがあったから、そういう人を勧誘していったという経緯があるね。だけど、私のような最初からのメンバーに、理系が多かったかというと、そうでもない。目立った人に、村井秀夫のように理系もいたけど。

はるしにゃん 教祖の方針というのはつまり、ハルマゲドン後の世界をサヴァイヴするために理系的知、テクノロジーが必要になってきたということですよね。

上祐史浩 だから男性はそういうところに惹かれ、女性はまたべつのところに惹かれたんだよね。

はるしにゃん 女性信者はどこに惹かれたんでしょう。僕は社会学者の宮台真司を尊敬しているのですが、彼は『終わりなき日常を生きろ』のなかで八十年代の価値観を二つ紹介しています。つまり、八十年代においてはハルマゲドン後の共同性というサブライムな男の子的価値観、いまで言うセカイ系的なものと、終わりなき日常を生きるという女の子的価値観があった。こう考えた場合、女の子でオウム真理教信者だった人はどのような信仰を持っていたのでしょうか。

上祐史浩 一つは麻原彰晃の「父性」でしょうね。自分の理想の父親みたいな、包み込んでくれる包容力がある、しかも自分を特別にしてくれる存在。父親に満たされないというところは男性も女性もあって、価値観の崩れた社会。

はるしにゃん そうですね。ある種の父親的価値観が崩壊したのが現代社会ですからね。

上祐史浩 そうだね。父権の崩壊によって、オウム真理教というのはいわば大日本帝国のミニチュア版といった形として出てくるんだよね。

はるしにゃん やっぱり戦後民主主義の問題としてそういったものが現れてくるんですよね。

上祐史浩 そうそう。大日本帝国の現代版として最も先鋭化したものがオウム。オルタナティヴがあればいいんだけど、ないからね。日本の暗部を投影したものであると言えると思います。

はるしにゃん エーリッヒ・フロムという社会学者が『自由からの逃走』という本のなかで「権威主義的パーソナリティ」ということを言っていて、人って消極的自由のなかでは生きていけないんですよね。人は自由というものに耐えられず、それがナチスという全体主義への支持を生んだんだと彼は指摘します。そういうものが現代の日本でも現れたというのがオウム真理教の本質であるように思います。

上祐史浩 自分たちは特別なんだという意識は、オウム真理教でもナチスのゲルマン民族至上主義も繋がっているよね。それを妨害している社会やユダヤ人を乗り越えていけば、自分たちの理想郷を作れるという妄想ですね。

はるしにゃん オウム真理教もユダヤ=フリーメーソンの陰謀論を語っていましたもんね。まあオウム真理教陰謀論というのは五島勉の『ノストラダムスの大予言』であるとか、あるいは九十年代の行き詰まった終末感みたいなものから生まれてきたと思うんですよ。

上祐史浩 まあ借りてきたような陰謀論ですね。

 

――――

冒頭だけですが、以上をご覧いただければ、上祐氏と僕がオウム問題について分析的かつ批判的に対処していることがお解りいただけるかと思います。続きに関しましては同人誌を手にとっていただければ幸いです。