| 糸井 | どうだろう、うまく話せたかなぁ。 さっきも言ったけど、
 もっと応援したいんですよね、
 ぼくはこれを。
 
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          | 岩田 | ということは、逆にいうと、 なにか、糸井さんのなかで
 言い切れてないような感じがするんですかね。
 
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          | 糸井 | いや、どうなんだろう‥‥。 うーん、そうだなぁ、
 今日、Wii Uの話を聞いているとね、
 やっぱり、ゲームをやる環境をいかに整えていくか、
 ということに力を注いでいると思うんですよ。
 聞けば聞くほど、
 「ゲームで遊ぶためには
 こうなってるといいよね」
 っていうようなことが、そろえてある。
 ということは、その背景にあるのは、
 これでゲームが思いっきりたのしめますよっていう、
 「ゲームそのもののおもしろさ」への
 信頼というか、確信だと思うんです。
 それが究極的にはゲームを遊んだり
 つくったりする原動力だとしたら、
 「ゲームそのものがおもしろい」
 っていう声を発することを、
 いま、誰が、どこが担っているんだろうなと。
 
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          | 岩田 | ああー。 
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          | 糸井 | いま、ゲームを、ちょっとした時間つぶし、 ひまつぶしだと思ってる人って多いと思うんです。
 それはそれでいいんですけど、
 ゲームをすごくおもしろいものとして
 とらえない人ばかりになると、
 ちょっと困るなぁと思うんです。
 だから、かつて淀川長治さんが
 「映画ってほんとにすばらしいですね」って
 最後にかならず言ってたようなことをね。
 
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          | 岩田 | でも、それって、 私たちが自分でつくったものに対しては
 言えないんですよね。
 
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          | 糸井 | そう、そうなんです。 任天堂はいえない。
 
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          | 岩田 | 当然といえば当然ですけど、 いいものをつくって、
 お客さんに言ってもらうしかない。
 その意味では、今回、Wii Uのなかに、
 お客さんが感じたことを表現できる場所と
 仕組みをつくったので、
 自分たちが自画自賛するのではなくて、
 お客さんどうしのあいだで広がっていけば
 それがいちばんうれしいんですけど。
 
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          | 糸井 | でも、ほめるのって、けっこう難しいからね。 
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          | 岩田 | (笑) 
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          | 糸井 | だから、みんなスペックの話をしちゃう。 数字の話だったら、簡単だからね。
 そうじゃなくて、
 自分がたしかに味わったおもしろさを
 それぞれの人が心から伝え合えたら、
 それはもう、すごいことなんだけどね。
 
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          | 宮本 | うん、そうですね。 
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          | 糸井 | あの、昨日のことなんだけど、 ある人から、本を渡されてね、
 これ、どうですか、って言われたんです。
 それは、詩と写真が載ってる薄い本なんですけど、
 「あ、いい!」ってすぐに思ったの。
 なんていうんだろう、いいに決まってるっていうか、
 ただの薄い本に過ぎないのに、
 「あ、いい!」って言えちゃうことはあるんでね。
 宮本さんの言う「共感」みたいなものが、
 こっちに向かってピッカピカ輝いているっていう。
 そういうことが信じられるかどうかっていうのは、
 かつて自分がいい経験をしたかどうかですよね。
 やっぱり、ゲームのおもしろさを
 味わったことがある人は、
 それがつぎのなにかの原点になるわけで。
 ぼくが自分でゲームをつくりたいと思ったのも、
 このおもしろいゲームというものを
 つくる側になりたいと思ったからでさ。
 
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          | 岩田 | 糸井さんはあのとき、 ゲームというものが放つなにかに
 ものすごく共感していたんですよね。
 
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          | 糸井 | うん。憧れてたんですよ。 憧れがほしいんですよね。
 
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          | 宮本 | だから、やっぱり、環境が整ったら、 自分のクリエイティブをやらなあかんなって、
 あらためて言われてる感じがして(笑)。
 それは、そのとおりですよね。
 やっぱり、ハードをつくるときっていうのは、
 全体の環境をつくることが、自分にとって
 大きなクリエイティブなんですよ。
 
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          | 糸井 | うん、それはそうでしょうね。 それはだから、
 ディズニーが遊園地をつくったように。
 
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          | 岩田 | いや、私はね、自分たちがつくったものを、 世界中の人たちがそれ単体で遊んで、
 それで満足してもらうには、
 お客さんがあまりにもいろんなものを
 経験しすぎていると思うんです。
 多くのものを経験すればするほど、
 欲望はどんどんふくらんでいくので、
 それをぜんぶ自分たちで追いかけていたら
 いつまで経っても完成しないんですよ。
 だからこそ、Wii Uでは、
 まず構造としての遊びをつくって、
 いろんな人がそこに自分の遊びを足したり
 シェアしたりできるようにしたんです。
 
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          | 糸井 | なるほど、なるほど。 
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          | 岩田 | それがWii Uというゲーム機の 大きな特長なんです。
 だから、その必然性には自信を持ってますけど、
 その一方で、いま糸井さんがおっしゃったみたいに
 「今度出る○○っていうゲームはすごいよ!」
 みたいなことをわくわくしながら言いたいし、
 そういうものをつくるつもりで
 やってるんですけどね。
 
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          | 糸井 | うん、うん、うん。 だから、そこはもう、一体ですよね。
 
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          | 宮本 | 一体ですね。 
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          | 岩田 | ええ。 
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          | 糸井 | で、整った環境の向こうに、 「やりたいことがある」っていうことが
 見えてくるようになるといいですね。
 
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          | 岩田 | そう思います。 
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          | 糸井 | いや、そのことが確認できただけでも よかったですし、
 Wii Uが向かってる方向はよくわかりました。
 ありがとうございます。
 
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          | 岩田 | こちらこそ、ありがとうございます。 
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          | 糸井 | ゲームについての話を期待している人には、 なんだか、ややこしい話だったんじゃないかなぁ。
 
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          | 一同 | (笑) 
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          | 糸井 | あと、宮本さんが「鷹の爪団」を おもしろがってるのがわかってよかった(笑)。
 
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          | 宮本 | (笑) 
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          | 糸井 | ほかには、なにがおもしろいですか。 
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          | 宮本 | YouTubeですか? 最近、見てるのは日曜大工の動画ですね。
 
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          | 糸井 | 日曜大工(笑)? 
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          | 宮本 | 日曜大工のライブラリーはすごいですよ。 こないだも水道のバルブの交換を
 自分でやったんですけど、
 動画を探したら、すごく細かいのがあって。
 ここは固くくっついてますけど、
 こう引っ張れば抜けます、みたいな。
 みんなが競い合ってつくってます。
 
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          | 一同 | (笑) 
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          | 宮本 | ほかにも、着物の着方とか、 結納の作法とかね、
 あれをリビングで手軽に見るようになれば、
 なかなかすごいことやなと(笑)。
 
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          | 岩田 | Wii Uのプロモーションに来て、 YouTube褒めて帰る宮本さん。
 
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          | 糸井 | ははははは。 | 
        
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          |  | (Wii Uについての鼎談はこれで終了です。 最後までお読みいただき、
 どうもありがとうございました。)
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