特集ワイド:反省と奮起、民主の2人インタビュー 菅直人元首相/仙谷由人元官房長官
毎日新聞 2012年12月26日 東京夕刊
関ケ原以西と以東は明白に違うね。西のメディアはここ1年数カ月、阪神タイガースと吉本興業と(橋下)徹ちゃん。これにはなかなか勝てない。関ケ原以東はそれが緩和されていたのではないか。菅さんが小選挙区で落ちたのは、彼の政治手法に対して信頼が薄れたということじゃないですか。野党にいると瞬発力はあるし魅力的ですが、トップリーダーとしての信頼感に疑問符が付いたのでしょう。
−−菅さんは「脱原発解散」を考えていたそうです。
当時僕は官房副長官ですから、可能性はあると感じていました。彼が「エネルギー基本計画で53%を原発でまかない、温室効果ガスを減らそうとしたのは間違ってました。自然環境や人間に対する負荷が少ない脱原発をやるしかない」と総括して、新党を作っていれば見上げたもんだとなったでしょうね。
−−対立し続けた小沢一郎さんをどう見ていますか。
嘉田由紀子滋賀県知事を持ち上げたのは、93年に細川護熙さんを担いだ時とやっぱり同じことするんだな、この人は、と思いました。僕に言わせたら、今さら反原発とは何なんだ、です。だって、自民党政権の中枢にいて電力会社や原発の恩恵をたくさん受けたのではないか。まあ、岩手県には原発はないけど。
−−小沢さんがひのき舞台に立つことはもうないですか。
そう思いますけど。
−−今回のように議席の大きな振幅を避けるには小選挙区制を変えるしかないのか。
選挙制度の問題だけでなく、メディアと有権者の問題がある。自分がどのようにして政策決定に参画するのかを考えないと民主主義は成り立たないのではないか。甘えるなとか言われるけれども、政治家や政党をコストをかけて育てるという意識を持ってほしい。ある種の政治エリートを育成するシステムが必要だ。少なくとも若いときに、法律、経済、歴史哲学をきちんと学んでいない人はトップリーダーにはなるべきではない。その点、90年代以降の日本のトップリーダーは厳しい評価を受けざるを得ない。
−−党再建はどうする?
今後2回の総選挙を経て連立もしくは単独で政権を取ることを目標に、5カ年計画を作るべきだ。政党とは何かを議論して、先進国の例を分析して政策体系を策定する。党組織や地方組織にしっかりした軸を作る。新しい代表にはこれにじっくりチャレンジしてほしい。今の安倍政権は「近欲(ちかよく)」に迎合している。再建民主党は先進国の本当の豊かさは数字で表せる金銭的・経済的価値だけでいいのかを問い直すべきだ。
求められれば僕なりの考え方を言うが、どう関わるかは2、3カ月休養して考えたい。【聞き手・松田喬和】
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