日韓関係とフランス・アルジェリア関係はよく似ているという話
先週,カンボジアから日本に帰ってきたのだが,日韓関係がえらいことになっていた。
もちろん,日中関係もえらい騒動に見える。だが,尖閣諸島の場合,日本が実効支配している以上,騒動になっても,特に状況が変化することはないだろう。
この問題,政権交代期の中国内部での権力闘争の一環としての面が強く,中国の新指導体制が固まれば,沈静化するだろうと思う。
これに対し,日韓関係。李明博大統領の言動はかなり常軌を逸したもので,それを支持する人々の動きも含めて,どうかしちゃったのかと思うような状況である。
こちらも政権交代が絡んでいるが,尖閣諸島問題に比べると,思慮の浅さを感じる。
日本は同じ土俵に乗らないように気を付けながら,同時に冷静にあらゆる対抗手段を打つべきだろうと思う。
さて,2012年8月20日付の毎日新聞に興味深い記事が出ていた:
「仏アルジェリア関係と日韓関係の類似性」(アルノー・ナンタ,2012年8月20日,毎日新聞)
アルノー・ナンタ(Arnaud Nanta)氏はフランス国立科学研究センターの准教授。
この記事では日韓関係とフランス・アルジェリア関係の類似点が指摘されている:
- 独立前のアルジェリアはフランスの一部とされていた
- アルジェリアはフランスの過去の罪を忘れていないのに対し,フランスは謝罪していない
- アルジェリアとフランスの緊張関係は今も継続中
戦前の韓国(朝鮮)は日本の一部とされていた点(「植民地」ではないという扱い。もちろん異論あり)や,日本統治に関する日韓両国の認識の違いなど,フランス・アルジェリア関係によく似ている。
細部を検討すると,アルジェリア人が兵役でフランス兵となっていたのに対し,朝鮮人は志願者のみが日本兵となっていた点(徴兵制は大戦末期の1944年から開始)など違うところもあるが,基本的に似ている。
あと,この記事に書いてないが,フランスにはアルジェリアからの移民が大勢いて(ジダンはアルジェリア移民二世),日本には韓国(朝鮮)からの移民が大勢いる,ということも類似点として指摘できるだろう。
こうした類似性が見られるところから,フランスのアルジェリアへの対応の仕方を研究すれば,日本の韓国への対応の仕方のヒントが得られるかもしれない。
ただ,気をつけなくてはいけないのは,それぞれの二か国間の国力差かと思う。
2011年のGDP(世界銀行)で比較すると韓国は1.12兆USドルで,日本は5.87兆USドル,その差5.2倍。
アルジェリアのGDPは1900億USドルであるのに対し,フランスのGDPは2.77兆USドルで,その差14.6倍。
今,韓国が随分と日本に対する攻勢を強めている背景には,国力の差が縮小しているということがあると思う。フランスは現時点ではアルジェリアに対し圧倒的に強い立場にあり,必ずしも有効なヒントを得られるわけではないかもしれない。ほかに参考になる国はないものか?
フランス現代史―英雄の時代から保革共存へ (中公新書) 渡辺 啓貴 中央公論社 1998-04 売り上げランキング : 127670 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- ランダムサンプル選挙の可能性(2012.12.07)
- 笠井潔『8・15と3・11―戦後史の死角』を読む(2012.11.27)
- コンゴがえらいことになっとる(2012.11.21)
- 『マンキュー経済学』を読む(2009.04.02)
- 資本主義に徳を求めてはならない:コント=スポンヴィル『資本主義に徳はあるか』(2008.03.18)
コメント
アルジェリアは独立戦争をフランス本国と戦っており、その際非常に多くの犠牲が彼我に出、また双方の間のみならずそれぞれの社会の内部でも深刻な亀裂を生んだという点は指摘されるべきかと思われます。
また近代以前の歴史の差異も無論ありますし、貴兄ご指摘の様々な違いもある
個別の条件を捨象して大づかみに論を立てるにしても毎日新聞の記事はやや杜撰かなと思った次第
投稿: 拾伍谷 | 2012.08.23 00:58