福島第1第2原発事故を予見していた吉井英勝・日本共産党衆院議員

 

原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書と答弁書

 

2006年5月12日(金)午前9時開議 衆議院内閣委員会会議録

 

2011年4月6日、原発事故集中審議 吉井議員質問 −保安院長「認識甘く深く反省」 経産相「(「想定外」は)使うべきでない」

 

  

 

吉井議員の国会質問に非科学的答弁で答えてきた規制官庁と大臣たちは、何も知らずに「原発安全神話」を信じて突き進んだ。東電福島原発事故は、人災。東電と癒着した政権政党と政治家、それらによりそう(御用)学者、そして彼らと結託した(ズブズブの)(吉井議員の質問を無視した)大手マスメディアよる国家的人災。

 

京都大学工学部原子核工学科卒の吉井議員のメッセージ

 

今回の災害は、地震・大津波・原発事故の三重災害ですが、その中の原発事故は人災です。この事態は早くから私が国会で繰り返し追及してきたことです。しかし、自民・公明政権も、民主・国民新党・社民連立政権も、具体的に、科学的に質問しても「日本の原発は大丈夫」だと繰り返すばかりで、全くまともに対策を取ろうとしてきませんでした。その結果、今回の福島第1原発の炉心溶融事故、水素爆発、水蒸気爆発、そして旧ソ連のチェルノブイリ原発事故のようになる前に、原発を冷却することができるかどうかという事態になりました。

 津波には、押し波(高波)と引き波があります。押し波の時には、原発の機器冷却系のポンプとそれを動かすディーゼル発電機や蓄電池の配線などが海水に浸かって破損します。引き波の時は、この冷却水を取る取水口の位置は海水面の4〜6メートル低い所ですが、それよりも低くなって沖合まで陸地に変わることがあります。そうなると、もはやポンプを回しても冷却水が入ってこないということになります。今回、押し波の海水中に沈んでディーゼル発電機が破損しました。

 

吉井議員の国会質問

 

2006年3月1日付『しんぶん赤旗』=「原発8割 冷却不能も」「津波引き波5メートル取水できず 炉心溶融の恐れ」

 

衆院予算委員会第7分科会の質問。吉井氏は大津波と原発事故についてとりあげた。

今回の大津波は福島第1原発の非常用電源を破壊し、炉心の冷却機能を奪ったが、この5年前に吉井氏は、津波の“押し波”とともに、“引き波”の影響が大きいと、チリ地震(1960年)の事例をもとに質問した。

 「(押し波が高ければ)水没に近い状態で原発の機械室の機能が損なわれ」「(引き波が大きければ)原発の冷却機能が失われる」と、吉井氏は深刻な影響について、押し波・引き波、ともに想定せよと迫った。

 津波が東北地方を直撃したチリ地震による“引き波”は三陸海岸で約25分も続き、原発のある宮城県女川町で海水面が推定6メートル低下した記録があると質問で明らかにした吉井氏。「東北電力女川原発の1号機、東電福島第1の1、2、3、4、5号機、この6基では、基準水面から4メートル深さまで下がると冷却水を取水することができない事態が起こりえるのではないか」とただした。

 原子力安全・保安院は、非常用ポンプ吸い込み水位を下回る海面低下で取水困難になる原子炉は、4メートル低下で28基、5メートル低下で43基もあることを答弁で明らかにした

 今回、福島第1原発の原子炉は地震で緊急停止しましたが、送電鉄塔経由でくる外部からの電源が得られなくなった上に、原子炉に付属して置かれた内部電源である非常用ディーゼル発電機が津波で破壊されて、海水を取り込むポンプを動かせなくなり、原子炉の温度が核燃料の崩壊熱で異常に上がり、原子炉建屋が水素爆発で吹っ飛ぶ事態まで引き起こした。

 津波による炉心冷却機能喪失の危険、水素爆発の事態を予見していた吉井氏。

「崩壊熱が除去できなければ、炉心溶融であるとか水蒸気爆発であるとか水素爆発であるとか、要するに、どんな場合にもチェルノブイリ(原発事故)に近いことを想定して対策をきちんととらなければいけない」と政府を追及

 

“安全設計”と保安院強弁

“大地震・大津波被害と原発”“電源喪失と炉心溶融”“放射性物質と広域被害”。今回の事故で注目されているキーワード。吉井氏はこれらをとりあげ、最悪の事態を想定して政府に対応を求めた。

105年5月26日の衆院経済産業委員会での質問では過去の事例も示し、巨大地震で原発の外部電源や非常用の内部電源が切断されるため、炉心を水で冷やす機能が働かなくなり、最悪の事態を想定せよと迫った。

 「内外の例から見ると、やはり最悪の事態を想定しなきゃならない。(炉心内の)自然崩壊熱が除去できなくなる。それは炉心溶融にも至りえる大変深刻な事態を考えておかなきゃならない」と、炉心溶融などが起きたときの放射性物質の放出量、その影響・被害調査の実施を提案した。

 政府答弁は「そういったことはあり得ないだろうというぐらいまでの安全設計をしている」「論理的に考え得る、そういうもの」(寺坂信昭・原子力安全・保安院長)。「想定外」で、現実にはあり得ない頭の中の話という姿勢であった。

 福島第1原発事故で原子力安全・保安院は1号機で「炉心溶融が進んでいる可能性がある」(11年3月12日)と初めて現実問題と認めた。原子炉中心部が異常な過熱で破損され、放射性物質の大量放出につながる炉心溶融とみられる重大事態は、2号機、3号機でも…

 この危機を東日本大震災10カ月前にとりあげた吉井氏は、「頭の体操ではない」と政府を叱りながら“安全神話”に縛られた原発行政の転換を訴えたのであるす。

 

 

2011年3月20日、吉井議員の【緊急メッセージ】=地震・大津波と炉心溶融にいたる原発事故は何度も警告してきた

  

3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖大震災)によって、命を奪われた方々に哀悼の意を表します。家族を失い、自らも被災者となって厳しい生活を送られているすべての皆さんに、心からお見舞い申し上げます。

 今回の災害は、地震・大津波・原発事故の三重災害ですが、その中の原発事故は人災です。この事態は早くから私が国会で繰り返し追及してきたことです。しかし、自民・公明政権も、民主・国民新党・社民連立政権も、具体的に、科学的に質問しても「日本の原発は大丈夫」だと繰り返すばかりで、全くまともに対策を取ろうとしてきませんでした。その結果、今回の福島第一原発の炉心溶融事故、水素爆発、水蒸気爆発、そして旧ソ連のチェルノブイリ原発事故のようになる前に、原発を冷却することができるかどうかという事態になりました。

 最近のものに絞って、特徴的な問題を整理して紹介します。国会で追及した際の会議録も、クリックすれば見られるようにしていますので、お読みになってください。

 

≪津波被害と原発≫

 津波には、押し波(高波)と引き波があります。押し波の時には、原発の機器冷却系のポンプとそれを動かすディーゼル発電機や蓄電池の配線などが海水に浸かって破損します。引き波の時は、この冷却水を取る取水口の位置は海水面の4〜6メートル低い所ですが、それよりも低くなって沖合まで陸地に変わることがあります。そうなると、もはやポンプを回しても冷却水が入ってこないということになります。今回、押し波の海水中に沈んでディーゼル発電機が破損しました。

 

≪老朽化原発の安全性実証試験機破棄≫

 

 全くひどい話ですが、原発を造る際の地震を起こす試験台(起振台)を使った試験はあるものの、何十年も運転してきた原発について、損傷の進んだ各部について起振台を使った実証データは全くありません。それどころか、一度運転した原発の機器については放射能を帯びていますから、それを起振台に乗せて実証データを採ると、その後は起振台をもつ施設全体を放射線管理区域にしなければなりません。

そこで、兵庫県にE−ディフェンス(実大三次元震動破壊実験施設)と呼ばれる新しい起振台を新設しました。ここでは放射化した原発機器の実験はできません。ところがE−ディフェンスを造った機会に、国は「行政改革だ」と称して香川県の多度津にあったこれまでの起振台を、造船会社が跡地を倉庫にするため廉価で売却(もともと300億円で造った施設を約3億円で売却)してしまったのです。このようなことをせず、多度津の起振台を老朽化原発のデータをとる装置として残しておけば、これから福島第一原発をはじめ全国の古くなった装置を交換するたびに、どれくらい傷んでいるかを調べる放射線管理区域にした装置として使うことができたのです。

·         〈会議録 2006年5年12日 衆議院内閣委員会〉 =⇒2006年5月12日(金)午前9時開議 衆議院内閣委員会会議録

 

≪電源喪失で炉心溶融≫

 地震・大津波で原発が停止しても、それだけでは安全ではありません。核燃料棒は自然崩壊熱(核燃料は放射線を出しながら別の元素に変わっていく核分裂物質を含んでいるから、その時に熱を大量に出す)によって冷却し続けなかったら、どんどん温度が上がって水蒸気を発生し、原子炉圧力容器の中の圧力が異常に高くなります。蒸気を抜くと放射能が漏れますし、そのままではどんどん蒸発が進み圧力が高くなって液面が下がり、燃料棒が上に出るとますます温度が上がって溶け出すことになります。

 この問題は、私が取り上げた時、寺坂信昭・原子力安全・保安院長が「(ディーゼル発電機も含めて内部電源が喪失されて)外部電源が全部喪失されて冷却機能が失われる」となると「炉心溶融につながるというのは論理的には考え得る」と認めていたことです。しかし、それに対応する対策を政府と東京電力は打ってこなかったのです。その結果、地震・大津波で今回、福島第一原発で想定どおりの事故が発生しました。事故後、菅総理が「想定外のことだった」というのは、まったくの素人の考えです。

 

≪電源喪失でも大丈夫とした原子力安全委員長≫

 この問題は、すでに2006年にも国会質問で取り上げていたことです。この時、原発の安全に一番責任を持たなければならない専門の鈴木篤之・原子力安全委員長(元・東大工学部原子力工学科教授)は、「さらに耐震設計を基本的に厳しくしていきたい」「そういう基準をさらに超えるような大変大きな地震が来たときには、事業者(東京電力)に、まずそういうことが起こらないことを数字で確認するか何らかの方法で確認してください、そういう方針で考えている」と答弁しました。

 原発の安全を東京電力が設置申請してくる「数字」に期待するという姿勢でした。いま福島原発の現実を前にして、この国会答弁について、鈴木元原子力安全委員長はどのように自らの責任を考えているのでしょうか。

 

 

≪メルトダウンを起こさせない≫

 自民党政権、自・公政権だけでなく、民主党政権(民主・国民新党・当初は社民も参加)になってからも、「多重防護でしっかり事故を防いでいく、メルトダウンというようなことを起こさせない、このための様々な仕組みをつくっている」と、直嶋正行・経済産業大臣は胸を張って答えました。

 いま、TMI(スリーマイル島原発事故)のように炉心溶融が起こり、圧力容器が溶け出すかどうかという事態を前にして、下請会社の社員や、消防・警察・自衛隊のみなさんが、東京電力の会長や社長に代わって、放射能汚染の危険にさらされながら命がけの放水で、チェルノブイリのような事態は起こさせないと頑張っています。

 

≪原発推進・トップセールスで原発輸出≫

 民主党政権になってから、原発推進政策は自公政権に劣らずすさまじい事態になっています。

そこで私は、このことに関わって、原発を輸出した先で福島原発事故のような事故が起こった時に、偏西風などに乗って放射性物質が日本へ飛んでくる影響はどうなるか、アセスメントをやっているのかと質問しました。これに対し直嶋正行・経済産業大臣は、「輸出する相手国で事故が起こった際の影響については、経済産業省では行っていません。(輸出相手になる)それぞれの国がみずから安全の確保に万全を期することは大前提だ」と答えました。

原発トップセールスに走り、原発メーカーの営業マンになったような仕事は熱心にやっても、国民の安全への思いはほとんど感じられないものでした。

 

≪炉心内の放射性物質の量と影響≫

 炉心溶融が起き最悪の事態にまで発展した時、いくらの放射性物質が炉内にあるかを質問すると、寺坂原子力安全・保安院長は「審査中の例でいえば、・・・・」と答えました。かつて政府が原子力産業会議に委託して原発災害の試算したものによると、現在の原発の約10分の1の電気出力のもので、東海原発を想定して、7シーベルトの放出で、死者720人、放射線障害を受ける人が数1000人、要観察者は百数十万人、年間国家予算の2倍の財政措置が必要になると「報告書」に記載していました。この報告書の試算手法は、有馬朗人・元科学技術庁長官(元東大理学部教授)が「きちっとした科学的な技法でやられており、かなり正確に検討している」と答弁したことと、試算に参画した原子力産業会議の故・森一久氏も「今でも方法論は役に立つ」と答弁したことを示して、私は全国の原発ごとに被害予測をせよと迫りました。しかし、直嶋経済産業大臣も寺坂保安院長も「多重防護の考えでやっている」「設計、運転管理、点検等充実を図って安全確保に努めている」とか先のように「メルトダウンは起こさない仕組み」などと言うだけで、真剣な取り組みをしようとしませんでした。

 

 

≪原発から撤退してどのようなエネルギーを考えるか≫

 電力の3分の1が原発依存となっている現実を見ながら、安全なエネルギーへの転換を図ることが必要です。それには、「地産地消」「地域分散」型のエネルギーシステムの構築が必要になります。そしてそれは、それぞれの実情に合わせて変わってくるものです。また、それが地域の農業、林業から中小の商工業と結びついて発展することが重要です。同時に、広く日本の経済と社会のあり方を、省資源・低エネルギー型の構造に転換していくことも大事な課題です。

 私はそのことを『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』(新日本出版社、2010年10月)という著書の中で明らかにしました。

これは、これまで原発に関わって行った数多い国会質問の集大成のようなものです。全体のダイジェスト版のようにお読みいただけると幸いです。


 

10年3月1日配信『しんぶん赤旗』=チリ地震が警鐘 原発冷却水確保できぬ恐れ 対策求める地元住民

 

 チリ地震による津波が押し寄せた原発立地地域では28日、住民の不安が高まりました。原子炉を冷却する海水が取水できなくなるなど、重大事故につながる恐れがあるからです。日本共産党は、原発の津波対策の不備を早くから指摘してきましたが、いまだに改善されておらず、今回の津波が警鐘となっています。

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 「3メートルくらいの津波がくると予想されているが、リアス式海岸なので津波は増幅するかもしれない。原発で何が起こるかわからず、無事に過ごせればいいとハラハラしている」

 女川原発(東北電力)がある宮城県女川町。日本共産党の高野博町議は、避難所を回って住民の要望を聞いて自宅に戻った午後2時すぎ、本紙の電話取材に答えました。

引き波の脅威

 女川原発1号機は、津波(引き波)によって水位が4メートル低下すると、原子炉の冷却に必要な水を海から直接取水できない構造です。貯水槽に一定量が貯水されているとはいえ、原子炉の冷却ができなければ、炉心溶融のような重大事故につながる恐れがあります。

 「1960年のチリ地震津波では6メートルほど海面が下がり、町史には海底が見えたと記録されている。津波の押し引きが繰り返されて、海底の砂や漂流物が取水口に入ったら、冷却水を取るポンプが本当に動くかどうか…」と高野町議。

 「原発の安全性を求める福島県連絡会」の代表で、福島第2原発(東京電力)から5キロの距離に住む早川篤雄(とくお)さんは、津波が到来する前の正午すぎ、「福島第1、第2原発に、連絡会のメンバーが心配して電話をしたけれども応答がない。防災無線でも原発については何も言っていない。どうなっているのか…」と不安をもらしました。

 経済産業省原子力安全・保安院では今回、原発での津波への備えとして、各原発で野外作業を停止することなど確認したとしていますが、原子炉停止などは必要ないという見解です。

改善ないまま

 原発の津波対策をめぐっては、2006年に日本共産党の吉井英勝衆院議員が国会質問で不備を指摘しています。5メートルの津波(引き波)によって、日本の原発の約8割にあたる43基の原発で、冷却水が海から取水できなくなることを明らかにしました。また、原発ごとに想定されている引き波でも、12原発が、取水不能になるうえ貯水槽もないことがわかっています。(図)

 二階俊博経産相(当時)は吉井議員に対策を約束しましたが、保安院によると、4年たった現時点でも改善はされていません。

 原発問題住民運動全国連絡センターの伊東達也筆頭代表委員は「1960年の津波のときにはまだ原発はなく、それ以来、本格的な大きな津波に襲われたことはない。今回の経験にたって、電力会社は、防災対策の現状を住民に説明し、対策をきちんとするべきだ」と指摘します。

 高野町議は訴えます。「津波対策は、原発の盲点になっているように思う。国の安全審査で漂流物や砂の影響を試験するなど、真剣にやってほしい。大丈夫、大丈夫ということですまされない」

冷却水喪失なら炉心溶融の危険

 吉井議員の話 2007年の新潟県中越沖地震では、地震の揺れそのものによって柏崎刈羽原発が被害を受けた。津波でも、海面が上がると冷却ポンプが水没する危険があり、海面が下がると冷却水喪失の恐れがある。これらは、原子炉の崩壊熱による炉心溶融を懸念させる事態だ。今後も、地震の揺れや津波への対策を前進させるために、国会でも取り組みたい。

 

(図)

 

[総力検証]世界を震撼させたレベル5「原発大パニック」御用メディアが絶対に報じない 東京電力の「大罪」 - 週刊文春 2011年3月31日号(3月24日発売)

 

世界を震撼させた「原発大パニック」は、紛れもない人災だった。福島第1原発2号機は、昨年6月にも電源喪失で水位低下を起こしたのに警告は無視。甘過ぎる原子炉プラント設計。我先にと現場から逃げ出した社員、肝心の社長は雲隠れ。東京電力の「大罪」を問う。

 

■予想しない水素爆発、真水に執着・・・・お粗末な危機意識

福島県郡山市――。「私が県知事の時代だけでも、原発の下請け業者から30数通の内部告発が寄せられました」

静かに振り返るのは、佐藤栄佐久・前福島県知事だ。郡山市の自宅を訪ねると、石の塀が全て崩れ落ち、庭が丸見えになっている。本や食器が散乱した部屋を避け、記者を離れの仏間に通すと、佐藤氏は溜め息をつくように語り始めた。

「私が政府や東京電力とつばぜり合いをしてきたから言うのではありません。今回の原発事故は、間違いなく人災です。私は自信を持ってそう言える――」

一方、東京・内幸町(うちさいわいちょう)の東京電力2階、総合対策本部。中央の円卓に座るのは、海江田万里経済産業相と、清水正孝東京電力社長。大型モニターには、福島第1原発での緊迫する作業状況が映し出される。部屋には原子力安全・保安院、自衛隊など100人以上が出入りする。地震発生から1週間後、その清水社長が行方不明になったという噂が流れた。「自殺したと言い出す議員もいた」(民主党関係者)

無責任なデマだが、こんな噂が流れるほど、普段は軽口を叩く気さくな清水社長が見る影もなく憔悴していたと言う。何故なら、福島第1原発の大パニックの最中(さなか)、東電側は危機意識の薄さから判断ミスを犯していたのだ。

世界有数の電力会社であるはずの東電は、何故世界中を震撼させる危機を回避出来なかったのか――。その理由は「想定外の自然災害」ではない。背景には、原発を推進する国、事業者である東電、チェックするはずの保安院の3者による「原発村の馴れ合い」とも言えるトライアングルがあった。

先ず、判断ミスは、地震発生の初日から始まっていた。東電内に役員達が集まるや、「純水、淡水の注入で何とかならないか」という議論が始まった。東電関係者が話す。

「海水を注入するなど頭になかった。水素爆発も予想していませんでした。電力も非常用ディーゼル発電も駄目になっていましたが、現場に電源車が向かっていた為間に合うだろう、間に合わなくても炉心溶融は起きないと考えたのです」

先ずは電源の復旧というシナリオは、信じられない理由で吹き飛ばされる。「電源車のコードの長さが足りず、繋げなかった。災害用なのに災害時を想定した設計になっていなかったわけです」(社会部記者)

 

【「原発村の論理」にキレた菅】

更に「原発村の論理」が、ただでさえキレやすい菅 直人首相を怒らせた。当初、東電と保安院は、首相官邸に「問題はありません」と報告。しかし、「官邸で原子力安全委員長が、『水素爆発の可能性はあるけれど、問題はありません』と説明したのです。菅首相は『爆発があったら、まずいじゃないか!』と怒り出した。

案の定、翌日、1号機が爆発するのですが、その前に東電としては逡巡(しゅんじゅん、躊躇い)があった。原子炉格納容器の圧力弁を開けて圧力を下げることを考えましたが、弁を開けると放射線が漏れる可能性がある。結局、2日目の午後2時に弁を開けましたが、1時間半後に水素爆発が起きたのです」(前出・東電関係者)

迷っている間に、放射線漏れも爆発も起きて、作業が一層困難になり、全てが裏目に出たのだ。

 

【「社長命」で撤退命令を】

更に3号機〔猛毒プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使用〕も爆発すると、清水社長は完全に弱腰になったと言う。「東京電力は無責任過ぎる」と言う官邸関係者が内幕を明かす。

「3号機〔猛毒プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使用〕が爆発した3月14日の午後9時頃、東電側から海江田経済産業相と枝野幸男官房長官のもとに、『現場から撤退したい』と、突然連絡があった。『国民を見捨てる気か』と押し返し、第1原発の所長に連絡をした。すると、所長は『まだ、やるようがある』と言う。社長と現場で言っていることが違うんです。それでも深夜になって、東電側が今度は『社長命』で撤退命令を出そうという動きになった。そこで、午前4時に菅首相が清水社長を官邸に呼び出したのです」

それから約1時間後、今度は菅首相が東電に乗り込んだ。半ばパフォーマンスじみた行動で東電幹部達を怒鳴りつけ、余りにも遅過ぎる、政府と東電による統合対策本部の立ち上げとなったのである。では、真水の注入が不可能と分かった段階で、何故海水注入の判断をしなかったのか。実は、最初の爆発から4時間半後の12日午後8時まで、東電対策本部の円卓会議で、誰1人「海水の注入」を言い出す幹部はいなかった・・・・。

そもそも、清水社長は「無傷なだけが取り柄」で出世し、菅首相と同様に“棚ぼた”式でトップに就いた人物だ。経営者としては疑問符が付くと言う。

「今の東電は、ミスをしない人間が上に上がる。清水社長は慎重でクリーンだが、増資の失敗で今年6月の株主総会で批判されると言われていた。また、彼以上に問題なのが、周囲にいる“ひらめ社員”達。意見を言うこともなく、官僚以上に官僚的です」(経済部記者)

東電は、柏崎刈羽原発の事故で08年から2年間で計2000億円の赤字を出している。今回の事故で経営危機は確実に訪れる。副社長の1人はオフレコで記者に「(火力発電の)原料価格が上がっているからなあ」と漏らした。事実上の電気料金の値上げ宣言と取れる(東電総務部は「値上げ発言はあり得ません。議論もない」と否定)。

爆発をした1号機は稼動から40年が経ち〔海外では通常30年が廃炉の目安。特に欠陥が指摘されるGEのマークTだけに尚更〕、減価償却を終え、「金の卵を産む鶏」のように利益を生み出す原子炉だった〔その陰で大量の被曝労働者を道具のように使い捨て殺してきた〕。それが、海水を注入すれば、廃炉になる。利益を生み出す装置を失う恐怖が、判断を鈍らせたのではなかったか。

経営と安全のどちらを優先するか。冒頭の佐藤栄佐久・前福島県知事は、こんな話を覚えている。

「中部電力の浜岡原発で配管の損傷事故が起きた際、福島の原発にも同じ配管が使われていました。そこで、点検作業をすることになりましたが、保安院はこう指導したのです。『運転計画を勘案して点検計画を行え』。つまり、安全の為の点検を優先するのではなく、運転を行いながら点検を行えということです」

保安院とは、そもそも厳しい検査をする役所ではないのか。京都大学原子炉実験所の小出裕章助教授が言う。

「私は『原子力村』と呼んでいます。電力会社、メーカー、官僚、原子力学会というグループで、原子力に寄りかかることで自分達の利益を守ってきた。この村に入ると、お互いに批判が出来ない。批判への十分な議論も出来ないのです」

 

【昨年2号機が「水位低下」】

実は、昨年の鳩山政権下の国会で、今回の事故を拡大させる電源喪失の可能性を指摘した議員がいる。京都大学の原子核工学科出身の吉井英勝代議士(日本共産党)だ。

「これまで政府は、非常時用のディーゼル発電機を、3系列設置していると言い、それを売りにしていたんです。しかし、スウェーデンでは4系列もの電源を用意していたのに、事故で2系列の電源が止まると、その影響で残りの2つも駄目になった。それで、非常時用の電源が使えなくなった時の対応を質問したんです」

昨年5月、答弁に立った寺坂信昭・原子力安全・保安委員長は、まさしく今回起きている事実を“予告”していた。「非常に小さい確率ながらもそうなると、(核燃料棒の)冷却機能が失われます。長時間にわたると、炉心溶融に繋がることは論理的に考えられる」

この答弁から1カ月も経たないうちに、福島第1原発で質問通りの事故が起きた。いわき市議の佐藤和良氏が話す。

「昨年6月17日に、福島第1原発の2号機が電源を喪失し、水位低下が起こりました。この時、2号機全体が15分間も停電したのです。マスコミの人達にもずっと警鐘を鳴らしたのですが、危険性に気付いて貰えませんでした」

この時は、手動で代替ポンプに切り替え、10数分後に水位は回復した。前出・吉井代議士は、「東電には、危機管理体制があったのか疑問」と言う。

「昨年4月に当時の直嶋正行経済産業相に国会で質問した時も、直嶋さんは『多重防護で事故を防ぎ、メルトダウンはしない仕組みをつくっている』と答弁していました」

 

11年3月29日配信『日刊ゲンダイ』=原発関連団体は「天下り」の巣窟だった

 

福島原発事故の“恐怖”がジワジワ広がっている。25日は、半径20〜30キロの地域で自主避難が促されたほか、経産省原子力安全・保安院が、これまでに17人の作業員が被曝線上限量の100ミリシーベルトを超えたと明らかにした。あらためて原発の危険性を認識せざるを得ないが、これを食い物にしてきたのが霞が関の官僚たち。原発の関連団体は「天下り」の巣窟だったのだ。

 もともと原発は「迷惑」施設だ。自治体も住民も受け入れに「反対」が本音。しかし、国は「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」という「電源三法」をフル活用。交付金やハコモノ補助など、あの手この手で“アメ玉”をしゃぶらせ、自治体や住民を懐柔してきた。

「この原発推進運動を支えてきたのが、天下り団体。例えば、経産省関連の『日本立地センター』は、住民向けのセミナーやクイズ大会、メディアへの広報活動などを展開し、『原発で地域振興』『原発は安全』と刷り込みをしてきた。国の補助金・委託費交付額は09年度実績で年間収入の約半分の5億円。理事長や専務理事など役員は旧通産官僚で、年収は軽く1000万円を超えています」(都内の環境団体関係者)

 驚くことに、こうした原子力関連の「天下り団体」は無数にある。原発地域の振興策などを手掛ける「電源地域振興センター」(東京)、原子力推進を掲げる「日本原子力産業協会」(東京)、原子力の基礎研究を行う「日本原子力研究開発機構」(茨城)、大型混合酸化物(MOX)燃料などを研究する「核物質管理センター」(東京)、原発の安全管理などを行う「原子力安全基盤機構」(東京)、海外のエネルギー事情を研究する「海外電力調査会」(東京)……。数え上げるとキリがないが、共通するのは、理事クラスに旧通産省、科技庁、文科省出身者が名を連ね、年収で1000万〜1500万円も得ていることだ。

 原子力問題などを研究する市民グループ「高木学校」(東京)のメンバーはこう言う。

「原発は産官学一体となった国策です。だから原発の関連団体には、電力会社や電機メーカー、研究者とともに天下り官僚がいる。これはずっと続いてきたことです。国が研究開発、用地確保、住民への広報活動といった一連の活動を全面的にバックアップしてきたため、反対運動もあまり起きず、広がらなかった。そうやって長年、原子力業界は牛耳られてきたのです。その結果が、今回の大事故の背景にもあるのではないでしょうか」

 これだけ多くの団体が税金で原子力を研究しながら、いざという時には役に立たない。甘い汁を吸ってきた官僚OBは、率先して現場で汗を流したらどうか。自衛隊や消防、警察、東電協力会社に尻拭いさせて、知らんぷりは許されない。

 

11年3月31日配信『日刊スポーツ』=「東電とメディアが癒着」会長認める

 

東京電力の勝俣恒久会長(71)が、東日本大震災発生から20日目の30日、ようやく会見し、福島第1原発が深刻な状況に陥っていることを謝罪した。会見では、勝俣会長が地震発生の11日に中国を訪問していたこと、その際、メディア関係者を同行していたとの一部報道に質問が及んだ。勝俣会長は訪問を認め、メディア関係者の渡航費用を東電側が一部負担したことを明らかにした。「全額ということではない」「詳細はよく分からないが、多分多めには出していると思う」などと述べた。同行者の立場は「OB」「勉強会の方々」としたが、「癒着を認めるのか」と突っ込まれる場面もあった

 

11年3月31日配信『朝日新聞』=原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用

 

 東京電力福島第一原子力発電所と同型の原子炉について、米研究機関が1981〜82年、全ての電源が失われた場合のシミュレーションを実施、報告書を米原子力規制委員会(NRC)に提出していたことがわかった。計算で得られた燃料の露出、水素の発生、燃料の溶融などのシナリオは今回の事故の経過とよく似ている。NRCはこれを安全規制に活用したが、日本は送電線などが早期に復旧するなどとして想定しなかった。

 このシミュレーションは、ブラウンズフェリー原発1号機をモデルに、米オークリッジ国立研究所が実施した。出力約110万キロワットで、福島第一原発1〜5号機と同じ米ゼネラル・エレクトリック(GE)の沸騰水型「マークI」炉だ。

 今回の福島第一原発と同様、「外部からの交流電源と非常用ディーゼル発電機が喪失し、非常用バッテリーが作動する」ことを前提とし、バッテリーの持ち時間、緊急時の冷却系統の稼働状況などいくつかの場合に分けて計算した。

 バッテリーが4時間使用可能な場合は、停電開始後5時間で「燃料が露出」、5時間半後に「燃料は485度に達し、水素も発生」、6時間後に「燃料の溶融(メルトダウン)開始」、7時間後に「圧力容器下部が損傷」、8時間半後に「格納容器損傷」という結果が出た。

 6時間使用可能とした同研究所の別の計算では、8時間後に「燃料が露出」、10時間後に「メルトダウン開始」、13時間半後に「格納容器損傷」だった。

 一方、福島第一では、地震発生時に外部電源からの電力供給が失われ、非常用のディーゼル発電機に切り替わったが、津波により約1時間後に発電機が止まり、電源は非常用の直流バッテリーだけに。この時点からシミュレーションの条件とほぼ同じ状態になった。

バッテリーは8時間使用可能で、シミュレーションと違いはあるが、起きた事象の順序はほぼ同じ。また、計算を当てはめれば、福島第一原発の格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。

 GEの関連会社で沸騰水型の維持管理に長年携わってきた原子力コンサルタントの佐藤暁さんは「このシミュレーションは現時点でも十分に有効だ。ただ電力会社でこうした過去の知見が受け継がれているかどうかはわからない」と話す。

 一方、日本では全電源が失われる想定自体、軽視されてきた。

 原子力安全委員会は90年、原発の安全設計審査指針を決定した際、「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又(また)は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」とする考え方を示した。だが現実には、送電線も非常用のディーゼル発電機も地震や津波で使えなくなった。

 原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)は「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解があった。隕石(いんせき)の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、それは無理だ」と話す。

 

11年4月7日配信『朝日新聞』=電源喪失、認識の甘さ陳謝 保安院・安全委トップら

 

 東京電力福島第一原子力発電所で深刻なトラブルを招いた、非常用を含めた電源喪失事故。経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会のトップらが、6日の衆院経済産業委員会で、電源喪失を「想定外」としていた過去の認識について陳謝した。

 この日、これまでに原発問題を国会で追及してきた吉井英勝衆院議員(共産)が質問。原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は昨年5月の同委で、電源喪失は「あり得ないだろうというぐらいまでの安全設計はしている」と発言していたが、この日は「当時の認識について甘さがあったことは深く反省をしている」と述べた。

 これまでの法廷証言などで電源喪失の可能性を否定してきた班目春樹・原子力安全委員長は「事故を深く反省し、二度とこのようなことが起こらないようにしたい」と答えた。

 また、過去に同様の見解を示してきた前原子力安全委員長(現・日本原子力研究開発機構理事長)の鈴木篤之氏も「国民の皆様に大変申し訳ないと思っている。痛恨の極み」。電源喪失の事態に備えてこなかったことは「正しくなかった」とした。

 

11年4月7日配信『朝日新聞』=電源喪失、認識の甘さ陳謝 保安院・安全委トップら=⇒詳細は

 

東京電力福島第一原子力発電所で深刻なトラブルを招いた、非常用を含めた電源喪失事故。経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会のトップらが、6日の衆院経済産業委員会で、電源喪失を「想定外」としていた過去の認識について陳謝した。この日、これまでに原発問題を国会で追及してきた吉井英勝衆院議員(共産)が質問。原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は10年5月の同委で、電源喪失は「あり得ないだろうというぐらいまでの安全設計はしている」と発言していたが、この日は「当時の認識について甘さがあったことは深く反省をしている」と述べた。これまでの法廷証言などで電源喪失の可能性を否定してきた班目春樹・原子力安全委員長は「事故を深く反省し、二度とこのようなことが起こらないようにしたい」と答えた。また、過去に同様の見解を示してきた前原子力安全委員長(現・日本原子力研究開発機構理事長)の鈴木篤之氏も「国民の皆様に大変申し訳ないと思っている。痛恨の極み」。電源喪失の事態に備えてこなかったことは「正しくなかった」とした(11年4月7日配信『朝日新聞』)。

 

11年4月27日配信『しんぶん赤旗』=衆院予算委 原発事故問題 吉井議員の質問 備えなし 事故後も対策なし 政府と東電による「人災」

 

「あってはならない事故が起こったのは、必要な対策もとらなかったからだ。事故後も直ちに対策をとらなかった人災だ」―。26日の衆院予算委員会で、福島第1原発での事故を取り上げた日本共産党の吉井英勝議員。「安全神話」に立って事故を引き起こした政府と東京電力の責任が浮き彫りになりました。

首相、誤り認める

吉井氏は、2005年から原発の全電源喪失による冷却機能喪失と炉心溶融の危険を再三にわたって国会で指摘していたにもかかわらず、政府は「多重防護でしっかり事故を防いでいく」(10年、直嶋正行経産相)などとしてまったく対策をとってこなかったことを指摘しました。

吉井 これまでの政府答弁や対応は間違っていたと考えるか。

首相 事実として、間違っていたといわざるをえない。

吉井氏が送電鉄塔の倒壊による外部電源喪失の対策をとっていなかったことを指摘すると、原子力安全委員会の班目春樹委員長も「耐震上の注意はしていなかった」と認めました。吉井氏は「『安全神話』にたって事故に備えてこなかったことが事故を引き起こした」と強調しました。

東電まかせの対応

事故後の対応はどうだったのか―。吉井氏の質問に、菅首相は地震発生の3月11日夜には班目委員長に炉心溶融の危機を伝えられ「十分理解していた」と答えました。

吉井 (首相は)原子炉規制法に基づいて東京電力にベント(蒸気排出)と海水注入を命じることができた。なぜ、直ちに危機回避の措置をとらなかったのか。

首相 ベントをすべきだと午前1時30分に経産大臣から指示をだした。

しかし、吉井氏は実際に法律に基づく命令は、ベントについては地震発生から16時間後、海水注入は29時間19分後になったことを指摘。「結局、電源喪失して炉心溶融に至る危険を知らされながら、東電まかせの対応だった」と批判しました。

さらに吉井氏は、東電に放射能の放出状況など全データの提出もさせていないため、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)やERSS(緊急時対策支援システム)が1カ月半にわたって機能していなかったことをあげ、「政府が『全力で収束させる』といっても東電いいなり、国家の機能を果たしていない」と指摘しました。

全被害者に補償を

原発事故による被害は、住民の生活や仕事、子どもの教育をはじめ広範囲に及んでいます。

 吉井氏が全面的補償を求めたのに対し、東電の清水正孝社長は「公正で迅速に対応するが、国の支援も必要」などと答弁。吉井氏は「加害責任を忘れて、税金で面倒を見てくれというのはとんでもない」と批判し、首相にただしました。

 

11年4月30日配信『しんぶん赤旗』=外部電源喪失 地震が原因 吉井議員追及に保安院認める

 

日本共産党の吉井英勝議員は4月27日の衆院経済産業委員会で、地震による受電鉄塔の倒壊で福島第1原発の外部電源が失われ、炉心溶融が引き起こされたと追及しました。経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認めました。

東京電力の清水正孝社長は「事故原因は未曽有の大津波だ」(13日の記者会見)とのべています。吉井氏は、東電が示した資料から、夜の森線の受電鉄塔1基が倒壊して全電源喪失・炉心溶融に至ったことを暴露。「この鉄塔は津波の及んでいない場所にある。この鉄塔が倒壊しなければ、電源を融通しあい全電源喪失に至らなかったはずだ」と指摘しました。

これに対し原子力安全・保安院の寺坂院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認め、全電源喪失の原因が津波にないことを明らかにしました。海江田万里経産相は「外部電力の重要性は改めて指摘するまでもない」と表明しました。