自民党の安倍晋三総裁が5年ぶりに首相に返り咲き、第2次安倍内閣が船出した。
自民党政権で初の首相再登板である。1年で政権を投げ出した前回のような失敗は許されない。安倍氏は今回の内閣を「危機突破内閣」と命名し、経済再生・デフレ脱却を最優先する考えを示している。先の衆院選で大勝した民意を背景に、安倍自民党の総力を結集してこの難局に臨んでほしい。
参院選重視の姿勢鮮明
安倍首相は組閣に先立つ党役員人事で、来年夏の参院選対策を重視する姿勢を鮮明にした。衆参のねじれ解消が、政権の安定に欠かせないとの判断からだ。人気のある石破茂幹事長を続投させ、選挙実務に通じた河村建夫選挙対策局長を党三役級に格上げした選対委員長に起用した。
目玉は高市早苗政調会長と野田聖子総務会長だ。党三役に女性を2人起用したのは初めて。ともに50歳代前半の若さで、女性票や無党派層を強く意識した人選である。党内をまとめる力量は未知数だが、自民党が変わったという印象を与えたのは確かだろう。
閣僚人事では麻生太郎元首相を副総理兼財務相に起用したのをはじめ要所に親しい議員を配した。政治思想を同じくするタカ派議員の登用も目立つ。一方で、谷垣禎一前総裁や、総裁選で争った石原伸晃、林芳正両氏を入閣させ「挙党態勢」づくりに腐心した。
経済政策の司令塔役の経済再生相には、首相に近い甘利明氏が就いた。社会保障と税の一体改革の担当相も兼務する。甘利氏は商工関係議員の有力者であり、電力業界との関係も深い。電力改革などの規制改革に果敢に切り込めるかが試金石となる。麻生財務相には財政規律への目配りも求めたい。
安倍首相は官邸主導で経済再生に取り組む意向で、経済関係閣僚や官邸メンバーは側近議員で固めた。経済再生で成果をあげられなければ、かつての「お友達内閣」批判が再燃することになろう。
25日に結んだ自民、公明両党の連立政権合意では、大胆な金融緩和でデフレ脱却を図ることや、可能な限り原発依存度を減らす方針を明記した。焦点の環太平洋経済連携協定(TPP)は「国益にかなう最善の道を求める」との表現に落ち着いた。交渉参加に含みを残した表現といえる。
参院選に悪影響を与えるとして、自民党内では農業団体などが反対しているTPP交渉への参加に二の足を踏む声が多い。しかしTPPは成長戦略の柱であり、各国が手を携え、中国に国際ルールを守るよう促していくための枠組みでもある。日本が入れば、中国をにらんだ日米の結束にもつながる。安倍首相は党内を説得して、早く交渉入りを決断すべきだ。
経済再生とともに、外交と安全保障の体制立て直しは安倍内閣の喫緊の課題だ。尖閣諸島では中国による領海への侵入が相次ぎ、最近は領空も侵犯された。
まず民主党の鳩山政権で傷ついた日米同盟を修復し、強めるところから始めなければならない。安倍首相もそうした認識から、最初の訪問先に米国を選ぶ考えだ。
日米同盟が揺らいだきっかけは、米軍普天間基地の移設問題で鳩山政権が迷走したことだった。安倍首相は現行移設案への理解を得られるよう、地元への説明を尽くしてもらいたい。
中韓との関係修復急げ
日米が直面している最大の課題は、台頭する中国にどう向き合うかである。中国軍の増強への対応も含め日米で対中戦略を擦り合わせ、連携できる体制をつくることが肝心だ。
日米と併せて周辺諸国との関係の再構築も待ったなしだ。なかでも急がなければならないのは、日韓関係の修復だ。北朝鮮の暴走を止めるためにも、日米韓の協力が不可欠だからである。
自民党は先の衆院選で「竹島の日」を祝うため、2月22日に政府主催の式典を開くという公約をかかげた。竹島は日本の領土だが、実行すれば、韓国が反発を強めるのは必至だった。安倍首相はこの式典の開催を見送り、特使として額賀福志郎元財務相を韓国に派遣する意向を表明している。現実的な対応と評価できる。
尖閣諸島でぶつかる中国との対立も、放置できない。海上保安庁の拡充など、日本の領土である尖閣諸島を守るための措置は着実に講じていくべきだ。日本から中国を挑発する言動は控え、関係改善の糸口を探るときである。韓国と同様、中国との外交でも現実路線を軸に、対立の負の連鎖に歯止めをかけてほしい。
安倍晋三、麻生太郎、甘利明、高市早苗、石破茂、野田聖子、河村建夫、谷垣禎一、石原伸晃、林芳正、TPP、自民党、額賀福志郎
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