パレスチナ:「国家」格上げ 国連総会で決議採択
毎日新聞 2012年11月30日 11時26分(最終更新 11月30日 12時50分)
【ニューヨーク草野和彦】国連総会(加盟193カ国)は29日、パレスチナの国連での資格をこれまでの「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を138カ国の圧倒的賛成多数で採択した。国連の「加盟国」ではなく、投票権はないが、国際社会の7割以上が「国家」と認めたことで、パレスチナ自治政府は独立国家実現への弾みとしたい考えだ。ヨルダン川西岸などパレスチナ自治区は喜びに包まれたが、一方でイスラエルは反発しており、中断したままの和平交渉への影響が懸念される。
賛成は日本やフランス、中国、ロシア、インドなど。イスラエルや米国、カナダ、チェコなど9カ国が反対、ドイツや英国など41カ国は棄権した。
決議は、パレスチナに「国連のオブザーバー国家の地位」を与えることを決定。イスラエルによる占領が始まった67年の第3次中東戦争前の境界線を基本に、独立国家パレスチナとイスラエルの共存を実現する決意を確認した。その上で、和平交渉を再開・加速させることの「喫緊の必要性」を表明した。
アッバス議長は昨年、国家としての国連加盟を申請したが、加盟審査を行う安保理で拒否権を持つ米国が反対し、頓挫した。そのため、安保理を経る必要がなく、総会で投票した国の過半数の賛成で決議案が採択される「オブザーバー国家」を目指した。
パレスチナはこれまでも「オブザーバー機構」ながら、98年の総会決議で、国連総会の一般討論への参加や、中東和平に関する決議案の共同提出などの「特権」が認められてきた。「国家」に格上げされた後も総会における権利関係に変更はない。
一方、「国家」としての地位が認められたことで、国際刑事裁判所(ICC)に加盟し、イスラエルを戦争犯罪で訴えることが理論的には可能になる。だが、和平交渉の障害になるとして、日本など今回は賛成した国の中にもICC加盟は控えるように求める声が多い。
◇オブザーバー国家
国際法上で承認された国家ではなく、あくまで国連での資格にとどまる。投票権はないが、国連やその機関の討議に参加できる。また国際刑事裁判所(ICC)など国際機関への加入が可能になり、国際社会での発言力が強くなるなどメリットは大きい。ほかにバチカンのみがこの資格を所持している。