「『原子力村』が野田総理を味方につけて、安全神話復活ののろしをあげた日だった」
6月8日、野田佳彦総理は、関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)の再稼働に関する記者会見を行い、「全電源が失われても、炉心損傷に至らない確認がとれている。再稼働は必要」との考えを示した。
これに対する与党・民主党の川内博史衆議院議員(写真)の感想が冒頭の言葉だ。6月9日、川内議員は鹿児島市内で私のインタビューに応じた(以下、敬称略)。
――まずは、野田総理の会見への率直なご感想を。
川内 原発安全神話の復活宣言です。野田総理は消費税増税のことで頭がいっぱいで、福島第1原発事故の教訓を自ら調べようとはされなかったのでしょう。本当に驚いたのは、会見の中で、「(大飯原発を再稼働しなければ)電力料金の高騰で中小企業や家庭に大きな影響を与える」と主張しているところ。消費税増税を進める姿勢と完全に矛盾します。どの場面においても、自己矛盾に気づかずに、それぞれの役所の官僚が作る筋書をそのまま読み上げて、あれだけ見事な演説をされる。
――「(再稼働のための『新基準』と呼ばれる)30項目の対策」や特別監視体制の構築など、事故後に新しく設けられた対策を挙げ、「実質的に安全は確保されている」と野田総理は述べられていますが。
川内 総理が言っているのは、「福島のような地震・津波が来ても、原子炉は安全だ」ということ。しかし、国民は、原子炉が安全だと言われても、安全と思えるはずがありません。万一、(原子炉が損傷する)事故が起きても、安全を確保する対策がとられているか否かが問題です。政府と国民の「安全」に対する認識のギャップを埋めなければ、再稼働はできないと考えるべきです。
――政府は、防災対策は再稼働の前提ではないとしているのですね。
川内 細野豪志原発担当相、齋藤勁(さいとう・つよし)官房副長官、牧野聖修(まきの・せいしゅう)経済産業副大臣が福井県の西川一誠(にしかわ・いっせい)知事と会談したときの会見概要に書いてあります。経済産業省の官僚が作成した文書なのですが、西川知事の防災対策に関する発言に、「(再稼働の前提ではないが)……」とあえてカッコ書きで挿入することまでしています。あちらの方々も必死なのです。
――大飯原発の再稼働の前提となる30項目の安全対策、いわゆる「新基準」や特別監視体制に関するお考えは?
川内 どちらも、まったく法的根拠がありません。「新基準」といいますが、法的根拠がなければ、「基準」という言葉は使えないはずです。安全を印象づける狙いでしょう。官僚の方々はとても頭がいいですから。
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